出かけるその前に
「じゃあ全員決まったなー!」
ちづるが全員の顔を見回して言う。
「と、そんなタイミングでお昼ごはんできたわよ」
そう言いながらえまが声をかける。
「うわあナイスタイミング!えまちゃんありがとう!」
「ありがとう〜!そしてめちゃくちゃ美味しそう!」
「ほんまに!」
「めちゃくちゃお腹空いてきた……!」
そう言いながら八人はえまからの指示を受けながら、机に料理を運んだ。
「いただきまーす!」
そして、準備が終わると一斉に食べ始めた。
「え、めっちゃ美味しいー!」
「よかった。いっぱい食べてね。まひろちゃん遠慮しないでいいからね」
えまがまひろに言うと、まひろは不思議そうに
「もしかしてよく食べるってことも知られてる……?」
と、やや静かめなトーンの声でそう言った。
「ぎくっ」
そんなまひろを見て真野兄弟四人が固まる。
「……ちょっと恥ずかしいけどうれしいです。」
「よかった……」
怒られるのではないかと咄嗟に思った四人はまひろの言葉に安堵した。
「でもえまちゃん、ほんまに料理上手やなあー!」
「ありがとう〜!でも何個かはあゆむくんに抜かされちゃってるわ」
「あゆりん、えまちゃんより上手なん!?こんなに美味しいのに!」
「母さんが大げさなだけ」
「謙遜しなくていいのよ。あゆむくんが毎日料理作ってくれるから助かってるもの。のぞみくんも洗い物してくれるし、かなめくんは仕事のお話いつも嫌な顔せず聞いてくれるし、つくもくんも、ついうたた寝しちゃった時にブランケットかけてくれるのよね」
「は!?」
「ちょっとちょっとちょっと!急にどうしたの!?」
「友だちの前なんだけど」
「その辺にしてもらえると助かるかな」
羅野姉妹がいるにも関わらず息子の良いところを言い出すえまに四人が顔を赤くして必死に止める。
「あら、ごめんなさい、母さんもつい楽しくなっちゃって」
「はははは、四人とも顔真っ赤!」
「あゆむも今度なんか作ってー!」
「わかったから!食べたんならさっさと準備して行かないとほんとに日が暮れちまうぞ!」
「はーい。ごちそうさまでした。えまちゃん!」
「お皿、シンクに持っていっていいですか?」
「あ、そのままでいいわよ」
「いや、そういうわけには」
「いおりちゃん、ぼくらがやるから大丈夫だよ。出かけるから荷物まとめておいでよ」
「そういえば、あなたたち買い物終わったらまた帰ってくる?」
「んーどうしよっかなあ。時間によるかも。なんで?」
「父さんも会いたがってたでしょう。午後はお休みにしたけど帰ってくるのは夕方頃になるみたいだから」
「めちゃくちゃ本気じゃん」
「あはは、それなら戻って来させていただいてもいいですか?」
「もちろん!むしろ気を遣わせちゃってごめんなさいね。じゃあ大きな荷物は置いてって大丈夫だから、気をつけて行ってらっしゃい」
「ありがとう!行ってきます!」
「それならなんか買ってこようか?夕飯。母さんゆっくりしたら?ひさびさの平日休みでしょ」
「ありがとう、のぞみくん。うーん、それなら……。あ、みんなピザはすき?よければ夕飯ピザとって一緒に食べない?」
「え!ピザすき!」
「じゃあ親に連絡してみます。そしてお金も払うので」
「いいわよ、明日お誕生日でしょう。私たちからのプレゼントってことで。ね?」
「う……じゃあお言葉に甘えて……!」
「ありがとう、えまちゃん!やったーピザ楽しみー!」
「あ、ちょっとあっちの部屋で母に電話して来ますね」
そう言っていおりが電話をしに部屋を出る。
「もしもし。うん、うん、そう。いやいいって言ってくれてはる。え、もちろん言ったで。でも明日誕生日やからお祝いってことでって。うん。わかった」
いおりが戻ってきて、えまにスマホを渡す。
「すみません、えまちゃん。母なのですが、お電話代わっていただいてもいいですか?」
状況を察したえまはスマホを受け取ると
「あ、はーい。もしもし、お電話変わりました真野と申します。いえいえこちらこそいつも息子たちがお世話になっております。」
えまが笑顔でいおりに目配せをする。
「はい、いや、いいんですよー。夫も娘さんたちに会いたがってるので、夕飯をできれば一緒にとこちらからお願いしたのでそれくらいはさせてください。明日がお誕生日とお聞きしましたし。」
羅野姉妹の母も、あまり引き下がろうとしない様子であったが、えまに説得され、お言葉に甘えてと、ようやく引き下がったようだ。
「いえいえこちらこそ。よろしければ私たちもお会いしたいですね。はい、なかなか四つ子の子どもを持つ方に出会えませんもの。はい、それではお預かりいたしますね。帰りもお送りしますので。今から八人でショッピングモールには出かけるみたいですが。はいそれでは。いおりちゃんにお電話代わりますね。はい、いおりちゃん。電話ありがとう」
そう言ってえまはいおりに電話を返す。
「もしもし。わかった。連絡する。うん、はいじゃあね」
いおりが電話を切る。
「お電話代わっていただいてありがとうございました。何か言っていましたか?」
「ううん、大丈夫よ。お母さんの気持ちもわかるし。でも途中からつい盛り上がっちゃった。今度お出かけする話になったからあとでお母さんの連絡先教えてくれる?許可は取ってあるから」
「え、えまちゃんお出かけすんの?うちの母と」
途中から話を聞いていたらしいしぐれが割って入ってくる。
「そうなのよ。なかなか同じ境遇の人に出会うことないからお話しできるの楽しみだわ。さ、ピザはこちらで注文しておくから行っておいで。お店まではバスで行くでしょう?その間にどのピザにするか決めて教えてくれたらいいから」
「わかった!ありがとうえまちゃん!さー!レッツゴー!」
ちづるがはしゃいで拳を突き上げた。




