羅野姉妹のバイト
「あの動物ちゃんたちと一緒の空間で働けるなんて幸せすぎるわ……!店員さんもテキパキかっこよくて優しそうやったし」
しぐれがアニマルカフェでの幸せなひとときと、そこがバイト先に決まったと言う事実を噛み締めていた。
「よかったね」
そんなしぐれにのぞみが微笑む。
「他の三人はどうするの?」
「スカウト待つ?」
かなめの質問に、同じくバイトのスカウトの実績を持つ、つくもも聞くが、
「ってのはさすがに無理やから、ちゃんと探すわ。うちもこのショッピングモールの中の店にしようかなー!」
とちづるが答える。
「あたしも!」
「わたしも!」
ちづるの言葉ににいおりとしぐれもそう答えた。
「ふふ、仲良しだねえ」
そんな様子を見てのぞみはまた微笑む。
「ここの本屋さんの横に併設されてるCDショップ、楽器も取り扱ってるっぽくて気になってて。アルバイト募集の紙もあったし。応募してみようかな」
「うちは、うーん……。あ!ここの地下にあるフィットネスクラブにしようかな!運動すきやし。いおりは?」
「いお姉、ここホームセンターあるで!」
しぐれが言うと
「ほんまに?ならそこでレジとか始められるかな」
といおりが少し意気込んだ。
「いおりちゃんホームセンターすきなの?」
「うん、ちづるとまひろじゃないけど、一日中おれるくらいすき。工具とか木材とか見るの楽しいから」
「へえ!DIYってやつ!?」
「そうやな、暇になったらわりとなんか作ったりしてるかも」
「へえ……多才だなあ。いおりちゃんがモノづくり、ちづちゃんが運動、まひろちゃんが音楽、に、動物愛され異次元世界を生きてるしぐちゃんだもんね」
「なんかしぐだけ長いな!?」
「さっきしぐの特技は見れたからまた今度、三人の特技も見して」
あゆむの言葉にまひろが答える。
「う、うん!」
「けどそうは言っても真野家も多才な気がするけどな」
「あ、確かに。つっきゅん絵うまかったもんね」
「そうだね、確かに。多才だね」
のぞみが頷きながら言った。
「自分で言うスタイルいいな!」
そんなのぞみにちづるがけらけらと笑う。
「だってまずは今言ってたけどつくもくんは絵がめちゃくちゃ上手いでしょ?センスもあるしデザインもできるし味覚もいいからほんと多才だよね。あゆむくんは家事全般得意で特に料理がほんとに美味しいし、その上スイーツだって作れちゃうんだからすごいよね。しかもぼくとかなめくんが好きそうなお菓子を調べてくれるんだよ。優しいよね。かなめくんはカメラが趣味なこともあって写真がほんとに上手で。構図とか天才?ってなるし風景も人物も動物だって最高の一枚を撮れちゃうのがすごいなって思うよ。盛り上げ上手だし一緒にお菓子を食べに行くのもすごく楽しい」
「えっと……のぞみがとりあえずブラコンの才能はあるってことは分かったな」
「兄弟のことになるとよく喋る……」
「のんのん、褒めすぎ。さすがに照れちゃうよ」
「ばかのぞみ」
「ばかのぞみ」
照れた様子のあゆむとつくもが声を揃えて、同じく珍しく照れた様子のかなめに続いた。
「だってほんとのことだよ」
それでも至って真剣な表情で三人の顔を見回すのぞみに、さすがのかなめでさえも
「ばかのんのんめ……!」
と顔を背けてしまった。
「そういうのぞみは自分のここ、すごいなって思うことないん?」
「自分か……あれ、途端に思いつかないな」
「さっきまであんなに喋って止まらんかったのに?」
先程の勢いとは打って変わって黙り込むのぞみにいおりが呆れた様子で言う。
「……あるだろ」
「……あるでしょ」
しかし、そんなのぞみの様子を見て弟たち三人が声を揃えた。
「え?」
とのぞみが本当に驚いた顔をして聞き返した。
「日記。昔からずっと書いてるだろ。それもあってかこいつ文才めちゃくちゃある」
「本もたくさん読んでるしね!とにかく文字読むのがすきだから新聞とかでもよく読んでるし!」
「のぞみ、博識」
「み、みんな……!」
感動しきった様子でのぞみが言う。
「よかったな」
ちづるも笑顔で言う。
「うん!最高の弟を三人も持てて幸せだよ」
「ほんと大げさ」
つくもがため息をつく。
「じゃあ私ら八人ともそれぞれ多才ってことやな。つまりはそれぞれの才能を活かせる最高のグループってことよ」
「どんなまとめ方やねん。あんたも大げさ」
謎のまとめ方をしたちづるにいおりもため息をつく。
「恥ずいな」
「ははははは!」
そんなやりとりと、照れた様子のあゆむにまひろが楽しそうに笑う。
「そろそろ帰りますかー!」
「なんか一日経つの早いね」
「楽しいからじゃん?」
「あゆあゆがデレた!」
かなめがうれしそうに言う。
「うっせ!」
「んじゃまた連絡するわ!」
「予定合ったら遊ぼうね!」
「うん!」
羅野姉妹は駅までのシャトルバスに乗り、真野兄弟もそれを見送り、手を振った。
三日後グループ連絡にて
ちづる:バイト四人全員決まった!!
かなめ:おー!おめでとう!!!!
あゆむ:前言ってたとこか?
しぐれ:うん!全員次の日面接受けてさっき結果聞いたところ!
あゆむ:そうか、よかったな。
ちづる:ほんまに!うちだけ落ちたらどうしようかとヒヤヒヤしたわ。
つくも:確かに、ちづるならありえる。
ちづる:おいつくも覚えとけよ
つくも:zzz
ちづる:寝るな!
かなめ:じゃあ今後もあのショッピングモールに遊びに行くことが増えそうだなー!みんなの働いてるとこみたい!!
いおり:かなめくん、恥ずいからやめて
かなめ:えー!
あゆむ:でも、全員バイトするなら予定合うことも少なくなるかもな。
ちづる:あ
まひろ:あ
のぞみ:あ
しぐれ:ああ
つくも:あああ
しぐれ:ああああ
ちづる:ああああああああ
あゆむ:おい途中から遊びだしただろ。
ちづる:ばれた?けど確かに予定は合いにくくなるなあ…
かなめ:えーーさびしいよ!!
のぞみ:じゃあさ、毎月一日は遊ぶって日を決めるのはどう?ラマ鉢の結成日が八月八日だったでしょ、だから毎月八日はできるだけみんな予定入れないで遊ぶ日にするとか。
しぐれ:めっちゃいいやんそれ!
まひろ:うんうん!のぞみくん天才!
あゆむ:なんか記念日みてえ。
かなめ:らま鉢記念日だね!来月の八日は…あー金曜日かー!
しぐれ:あ、でも確か振替休日じゃなかった?創立記念日の!
かなめ:そうだったかも!三連休じゃん!最高!
のぞみ:あ、ご飯の時間みたいだからまた後で連絡するね
ちづる:おっけー!また何するか決めようー!
のぞみ:うん、またね
かなめがスタンプを送信しました
「ふふ、かなめくんのスタンプ面白いな」
まひろがかなめの返信を見て笑いながらそう言うと
「何なんかな、このキャラクター。しぐ、初めてみた」
としぐれも感想を述べた。
「そういえばこういうスタンプって確か作れるんやんな。今度つくもに頼んでらま鉢のスタンプ作ってもらえへんかな?」
ちづるが少し目を輝かせて言うが、
「うーん、めちゃくちゃいいアイディアではあるけどつっきゅんやってくれるかな?」
「めんどくさがられそう」
しぐれといおりが答えると
「……やっぱりそうよな」
とちづるが諦めた表情をしながら言った。
「あははは、確かに」
そう言ってまひろが笑った。
「いただきます」
真野兄弟、四人がご飯を前に声を揃えて言う。
「はーい。そういえば羅野姉妹ちゃんたちはいつうちに来てくれるの?」
四人に返事をした後、真野母が質問する。
「母さん唐突だね」
「だって〜早く会ってみたいんだもん」
「じゃあ来月の八日は?」
「あ、いいね、金曜だけど休みだし」
「あれ、あなたたち、休みだっけ?」
「そう創立記念日の振替休日」
「あーお母さん夜までは仕事だから結局会えないじゃない……。いや前日にあの案件さて済ませてしまえば休み取れそうね。それで夜にうちで仕事することにしようかしら。なら昼ごはん食べに来てもらえるわね。うんそうしなさい!」
「めちゃくちゃ積極的じゃん」
「んじゃ後で聞いてみるよ!」
「お願いね。お父さんも午後だけならお休み取れると思うから」
「だからなんでそんなに積極的なわけ?」
つくもが聞くが
「あ、ご飯食べたら順番にお風呂入っていってね」
と促され
「はーい」
と声を揃えてご飯を食べた。
かなめ:母さんが来月の八日、うちに来てもらったらって言ってるんだけど来れる?
いおり:え、お邪魔して大丈夫?
つくも:むしろめちゃくちゃ張り切ってる。なぜか。
のぞみ:そうなんだよね。だから来てくれると助かる
しぐれ:えーもちろん行きたーい!全員で行かせてもらうな
かなめ:よかった!
かなめがスタンプを送信しました
「だからなんのキャラなんこれ」
しぐれがそう言うと
「ほんまに」
とまひろが笑った。




