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待ち人来たらず

作者: 馬河童

 元旦の早朝、まだ薄暗い時間ではあるが、年の初めのおみくじを引いた。

「今年もか……」

 大吉にもかかわらず、「待ち人来たらず」の記載……。何度引いてもこの結果で、実際、待ち人とは縁がない。こんな状態をもう何年も繰り返している。決しておみくじのせいだとは思わないが、現実に待ち人は来たらず、意地になって毎年試してしまう。

 本来、大吉や凶などの結果は、一喜一憂するものではなく、中身をよく噛み締めて、自分のプラスに捉えるのが有益なのだろう。凶は逆にこれから上向きになる事を意味するとも言うし、大吉は今が最も運勢が良く、今後下がっていく意味合いもあるようで、考え方次第なのは間違いない。

 ただ、私に関しては、大吉だろうと大凶だろうと「待ち人来たらず」なので、根幹の部分が良い方に傾いていない。いや、「これから待ち人が来る」と考える事も出来るのかも知れないが、ここまで「来たらず」が続くと、さすがにそんな風に考える心境にはなれない。

 ちなみに「待ち人」とは「運命を良い方向へ導く人」であり、決して「好きな人」を言うのではない。私の待ち人も決して恋人などではなく、「運命の人」である。

 色々と不平不満を並び立てたが、私と彼の人はニアミスがない訳でもない。世の中を照らさんばかりに眩く輝く彼の人を、時折、私ははるか遠くでおぼろげな白い顔でただ見とれている事などもある。私は夜の世界でしか輝けないが、それも彼の人の放つ光が暗闇でも照らしてくれるお蔭なのだ。

 数年前にも彼の人の正面に立つ機会を得た事がある。しかし、私が緊張しながら見つめて声を掛けようとした瞬間、彼の人は暗闇に包まれて姿を消してしまったのだ。これはショックだった。

 こんな風に事ある毎に機会を逃している私だけれど、いつか彼の人と正月に初日の出を拝みながら語らいたいという夢がある。彼の人のような輝かしい日々を歩んで来た者と、人生や世界、宇宙について語り合えたらどんなに素晴らしい事だろう。私はそれをずっと夢見ておみくじを引いて来た。けれど、天文学的な異変でも起こらない限り、叶わぬ夢なのは自分でもわかる。神様もそう容易く私に「待ち人来る」とは啓示してくれないだろう。

 だが、諦めの悪い私は、令和三年こそ望みを叶えんと、深夜から彼の人が現れるのを待った。ここ数年の元日の天気は悪かったが、今年は久々に初日の出を拝むチャンスであった。私は夜間でも元気一杯、満面の笑みを輝かせて朝を待つ。ストーカーのようで不謹慎ではあるが、はやる気持ちを抑えられない。

 彼の人を待つ間、空が明るくなる前におみくじを引いたのだが、結果は冒頭の通り。だが、私はくじけない。

 朝を迎え、はたして待ち人は姿を現した。地平線からオレンジ色の光が輝き始め、程なく初日の出が拝める状態になった。私は意を決して彼の人に語り掛けんと近寄る。しかし、

「明けまして……」

 と言い掛けた途端、その声が届かず、掻き消されるのを感じた。私は不本意にも隠れるように己の姿が見えなくなってしまったのだ。

 先程引いたおみくじの通り、やはり月と太陽は「待ち人来たらず」の関係からは逃れられないのだ……



ちょっと力不足なのは自ら感じる一作で、箸にも棒にも掛かりませんでした。

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