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絵画にならう

作者: 咲華リラ

分かりたくなかったこと

中学の美術の教科書で見た、フラゴナールの『ぶらんこ』

先生の話なんてろくに聞いた覚えもなかったのにその絵画の話だけは数年経った今でもはっきりと記憶に残っている。

美しく、儚い色彩の中に綺麗なピンク色のドレスを身にまとっている一人の女性が、森の中にあるぶらんこを漕いでいるそんな絵画。


「綺麗な絵」それが私の最初の感想だった。

でも、そんな綺麗な絵には綺麗じゃないことが詰め込まれていると聞いたのもその授業の日。

目の前のスクリーンに大きく映し出されるこの絵画を先生は指さしながら説明する。


――ぶらんこに乗っている女性にはぶらんこを押してくれる夫がいるけれど、ぶらんこの前で横たわっている男性とも関係を持っていたんだよ。



この絵画は、いわゆる不倫関係の男女を描いたものであったんだ。







それを知った日には共感出来なかった不倫相手になること、不倫してしまうことも今なら分かってしまう。これが、無駄に年を取るということか。

つまらないのに離れることは出来ず今日も揺らぎの中生きている。







わたしとお付き合いしている人はどこまでも自由で笑顔が絶えない人。自由すぎて困ることもあるけれど、それ以上にそこに惹かれてしまっている。


そんな彼にはわたし以外に彼女がいる。

そして、わたしは浮気相手の方。


その事実に気が付いたのはつい最近のこと。

自分のことなのに、不思議とどこか客観的に捉えているわたしがいて、そのとき同時にあの美しさの中にある不徳を描いた絵画を思い出してしまった。






ぶらんこが揺れるように行き来する彼の心。

そのぶらんこがこちら側に来たときに繋がれているその綱を切ってしまえたら、なんて、そんなことを考える日々。





彼がわたしの部屋に置いていった薔薇の香りのするアロマディフューザーがお前は浮気相手だと言っているようで、気持ちが悪いのに彼が置いていったものだからって捨てることすらできない。

なんて皮肉なんだろう。きっとわたしの目の前にいるのであろうキューピットもその唇の前に人差し指を立てているんだろうな。


公に出来ない恋、いつまでも来ることを待つ恋、それに翻弄されるわたし。



次に来たときは絵画の中の不倫相手のようではなくて、その綱を切って、戻れないようにしてあげるから。

それまで、私は部屋に靡く薔薇の香りに身をひそめているから、好きなだけ揺れて漕いでいればいいよ。

ぜひ、ジャン・オル・フラゴナール『ぶらんこ』について調べてみてください。

面白いので、美しい絵画に色んなことが詰まっているのですね。

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