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6/13

美少女がイケメン

「何の用ですか?」

「おいおい、そんな言い方して良いのかよ? とにかく、こっち来いよ」


 とりあえず着いていこう。それが一番穏便に済む方法だ。


 教室から連れ出され、階段の踊り場まで来た。

 人目に付かない場所だが、誰かが通り掛からないとも限らない場所。

 これは......()()の要件じゃ無いな。


「翔クンのクラスに美少女の転校生が来たってウワサなんだけどさぁ?」

「それ~! なんで俺らのクラスじゃ無いんだよ! いっぱい可愛がってあげるのに」

「で、本題ね?」

「そうそう。本題。突然だけど、ウワサの転校生に告ってこいよ!」


 ......意図が読めないな。


「勇気が出せないヘタレの翔クンに、大義名分をあげてるんだからさ? かましてこいって~」

「そうそう! 振られても、()()()()()()()()からさ?」

「じゃ、明日の放課後に決行な? しっかり見ててやるよ! ギャハハ!」


 ............そういうことか。

 小猫(おのねこ)さんに告白して振られた場面を動画で撮り、知人にトークアプリで送りつける。で、翌日登校すると『美少女転校生に初日から告白して振られたやつがいる』とウワサが流れ、俺の居場所が無くなると。

 屑だ。


 一緒に住んでいるので、割と洒落にならないレベルでやめてほしいのだが、そんな事情は言えないし、言ったとしても面白がられるだけだ。

 家に帰ったら小猫(おのねこ)さんと相談するか。





「____ということがあったんだ。だから、小猫(おのねこ)さんには不快な思いをさせると思う。ごめ____」

「翔くん」


 そう、俺に呼び掛けた小猫(おのねこ)さんは、目に涙を溜めていた。


「なんで......嫌だって言わないんですか? なんで誰かに助けを求めないんですか? なんで......翔くんはこんなに優しいのに、酷い目に遭わなくちゃいけないんですか......? そんなの不公平ですよ......」

小猫(おのねこ)さん......」


 小猫(おのねこ)さんは、大粒の涙を遂に溢しながらも、また言葉を紡いだ。


「あの夜だってそうです。翔くんは何もしていないのに、ずっと蹴られてました。翔くんはそれで満足なんですか? ......私は、辛いです......」


 なんで本人より悲しんでるんだよ......


 俺は、ずっと他人の顔色ばかり気にしていたのかもしれない。

 自分の事なんか二の次で......

 だって、それが一番波が立たない方法だったんだ。......違うな。本当は面倒くさくて、逃げてた。

 他人と争うのが、面倒くさい。

 一々議論を交わすのが、面倒くさい。

 流れに逆らうのが、面倒くさい。

 だから、逃げてた。向き合って無かった。


 でも、まるで自分の事の様に悲しんでいる()が居る。なら、もう少し頑張ってみるのも良いんじゃないか?


小猫(おのねこ)......いや、(れい)

「翔......くん......」

「ありがとう。俺は、闘うよ。自分より悲しんでくれる、(れい)の為に」


 もう、虐げられない。


 幸せは、自分で掴みに行くものだ!!





「じゃ、頑張ってこいよ~! 期待しないで待っててやるからな!」

「ぷっ マジでやるんだ~! 不登校になったりすんなよ? 割とマジで」

「そうそう。()クンが俺らに迷惑()()()とか許されないから」


 くっそつまんない駄洒落を言ってんじゃねぇよ。

 まあいい。

 数分後にはあいつらがギャフンと言っている場面を見られるだろうから。


小猫(おのねこ)さん。すみません。遅れました」

「うんん。大丈夫。それより、話って何かな?」


 関係ないけど、(れい)が可愛い。

 後ろで手を組んで少し上目遣いにこちらを見てくるそのポーズは、童貞でなくても殺せるだろう。


「え~~~っと......その......」

「話さないなら、私から話しても良い?」

「あ、はい」


 ここから俺の逆襲劇は始まる。


「雨川 翔くん。私と付き合って下さい!」

「......っ!? 喜んで!」


 そう。これが今回の作戦。

 俗に言う、逆告白ってやつだな。

 ......いやあ、演技とは分かっていても、こう......なんと言うか、クるものがある。

 それは、(れい)がメチャクチャ可愛いっていうのもあるが、一番はその迫真の演技だろう。

 どうやったら演技で頬を染めたり、そんなに緊張した顔をしたり出来るのかが分からない。

 ____今度演技指導を受けようと心に誓った。


 これで今回の作戦は潰れたと見て構わないだろう。

 あいつらがどう動くのか、明日が楽しみだな。




「____でさ? 昨日のアニメでさ____」「あー、それ分かるわ____」「でもさ、やっぱり____」


 翌朝、俺が扉を開けた瞬間、一瞬にして教室が無音になった。

 これは......なにがあったんだ?

 流石に予想が付かない。


 なんというか、自分がこの空気を壊したみたいで居心地が____

 ____そうか! それが狙いか!

 罪悪感は、精神を追い詰める。

 時に、恐怖よりも執拗に。残虐に。

 だからこそ、クラスぐるみでこんな事をしているのだろう。


 成る程。読めた。

 今回の主犯と、共犯者が。

お読み頂きありがとうございます。

ここが分岐点ですかね......っと、約半分が過ぎた計算になります。

改めて、ここまで読んでくださった皆様。評価やブックマーク、感想を下さったお二方、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 気づけ!それは演技じゃない!!
[一言] 止めてくれ小猫さん その涙はオレに効く 止めてくれ      byアーデルハイト ヤバい……一々議論を交わすのが面倒くさい_の所が自分に通ずる何かがあってヤバい…… 今回の話は、いつも…
[気になる点] 3話の時の子猫さんの名前のルビがおのねこで今回おねこになってますがどちらが正しいのでしょうか? [一言] 子猫さんが同居してるから嘘告失敗するなんて相手はそもそも想定していなかったでし…
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