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台風過ぎてまた台風みたいな話

「あらら~、災難だったね。雨川くん」


 くそっ!

 なんでこんな疲れている時に畳み掛ける様にっ!


「何だったら、ウチのシャーペン貸したげよっか?」

「結構だ。あの筆箱は俺のじゃない」


 そう言いながら、自分の筆箱を鞄から取り出す。


「え? じゃあ、さっきのは......?」

「あの筆箱捧げてた男子のだよ」

「うわ......」


 ドン引きしている様だ。

 これで絡まれなくなると良いのだが......


「それ、あの一瞬で考えたの? めっちゃ頭良いじゃん。IQ二百あるわ」


 駄目だったか......


「じゃ、またね? あ・め・か・わ・くん!」


 と思ったが、意外にも帰ってくれた。しかし、くっそウザイ!


「さようなら。()しろさん」

「あ"?」

「え?」


 何かやってしま......

 あっ!

 この人の名字は御城(みしろ)なのだが、

 おしろと言い間違えると異常に怒り狂うのを忘れていた......


「なあ。お前今何て言った?」

「さようなら! みしろさん!」

「チッ____

 ____覚えとけよ?」


 最後の一言は、耳に直接囁きかける様にして言って来たので、捕食されるかと思った。


「なにやってんスか? キスっスか? ラブラブっスか? ヒューヒュー!」

胡々葉(ここは)。少し黙ってなさい?」

「はへ? なんか怒らせちゃったっスか?」


 流石の御城でも、俺はアウトコースらしい。(やったぜ)

 中木はやっぱり距離が異様に近い。この距離感に騙された男子は数知れず。今も俺に寄りかかる様に立っている。


「清楽ちゃんが要らないならあっしがもらっちゃうっスよ?」


 そう言ってハグしようとしてくる中木を屈んでかわす。


「あれ? 翔が消えたっス!? どこ行ったっスか!?」


 そう。

 こいつはこういう奴なんだ。

 俺がこいつに好意を持っていない事を分かって、必死にオトそうとしているのだ。


「もう座れ。中木。御城」

「うぃーっス」「......」


 ふぅ。なんとか乗り切った。

 今年の担任が教室に入ってくる。


「皆おはよう! 今年度二年A組を担当するのは、浪川(なみかわ) (ながれ)だ! 一年間、宜しく頼む!」


 と、担任挨拶が終わったところで放送が入った。


『今年度より、始業式は放送で行います。

 始めに、開式の言葉を教頭先生、お願いします


 「これより____」』


 そして数十分後。

 本当にやる意味があるのか謎なイベント。自己紹介が始まった。

 俺は、雨川なので大抵の場合トップバッターだ。つまり、俺の役割は盛大に失敗し、次の人のハードルを下げる事になる。

 さあ、雨川、いくぞっ!


「俺は雨川 翔だ。ポチと呼んでくれ」

「「「・・・」」」


 タマ(小猫さん)のネタを使ってみたが、やはり俺と同じような反応だ。

 俺の反応は間違っていなかった。


 そしてその後は順調に進み......

 女子の番が来た。


「次、私かな? 私の名前は神崎____」

「あー、ちょっと待ってくれ。今年は転入生が居る。入ってくれ」


 神崎さんの自己紹介を遮った担任の衝撃的発言にクラスがざわめく。


 転入生?

 悪い奴じゃ無いと良いのだが......


 そして、引き戸を開けて入ってきた存在に皆一様に目を見開く。

 しかし、一番驚いているのは間違いなく俺だろう。と言っても、驚きの方向性からして違うのだがな。


「おの......ねこ......」

「翔くん。来ちゃった」


 来ちゃったじゃねぇ......萌え死ぬだろ......

 そして、男子の不躾な視線が刺さる。


「あー、なんだ。自己紹介してくれ」

「初めまして。小猫 鈴です。好きな飲み物はぬるめのホットミルクです」

「「「可愛い......」」」

「よし。小猫は女子の先頭だから、雨川の隣の席に座ってくれ」


 男子の殺気が痛い......


「翔くん。高校でも宜しくお願いします」

「おう。よろしくな? 小猫」

「それにしても......起こしてくれれば良かったじゃないですか。せっかくなら一緒に登校したかったな......」

「いや、俺も小猫が高校に来るなんて知らなかったし......って、今までの経歴とか戸籍とかどうしてるの?」

「あれ? 言いませんでしたっけ? 全部神様が手配してくれたから心配要りませんよ」


 そんなことまでできるなんて......神様って何者なんだ?

 姿も見たことが無いのに、信じないとは言わないが、気になる存在ではある。


「翔くんの隣になれて幸せ......いっぱいお話しましょうね?」

「それは良いんだけど......ここだけの話、勉強出来るのか?」

「もちろん! この私が半年間何をやって来たと思ってるんですか?」


 何をやって来たんだ?

 非常に気になる所だ。


「そもそも、この体で立てるようになるまでが大変だったんですよ?」


 そこから始まるのか......

 でも、考えてみればそうだよな。

 猫だったのに、いきなり人間の体を動かせる筈も無い。





「____そんなこんなで、神様に時間を引き伸ばしてもらって十八年分の人間体験をしてきた訳です」


 なるほどなぁ......

 神様は、時間の進みを自在に操れるらしい。

 ただし、過去にだけは戻れないのだそう。

 本当に何者なんだ? 比喩でも何でもなく、神なのかもしれない。


 おっと。そろそろ最後の奴が終わるな。


「____彼氏募集中の輪島(わじま)がお送りしました~」


 これだから陽キャって人種は......

 自己紹介も難なくこなしてしまう。一体俺たちと何が違うのだろうか。

 まあ、これからの学校生活は楽しくなりそ____


「おい、翔クン。暇だよな?」


 なんでこいつらがクラスまで着いてくるんだ......

 本当は、俺の事好きなんじゃないか? 俺にそっちの趣味は無いが。

お読み頂きありがとうございます。

※この小説は単独ヒロインです

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― 新着の感想 ―
[一言] 後々ポチの自己紹介からおいここ掘れワンワンって言えよとかイジメられそうな気がする(小並感 学校に子猫さんが来て主人公の癒しになると同時に波乱の予感で今後が楽しみですねぇ
[一言] 身体能力◎でIQ200か……やっぱりハイスペ(以下略)じゃないか。 やっぱりどの小説でも自己紹介は嫌われてるんだなぁ……ぼくもそうですけど。 それと…前回の誤指摘、マジすんませんでした…
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