突然ですが憂鬱な学校のお時間です
日間ランキング70位でした!!
皆様ありがとうございます!!
俺の家は、少し特殊だ。
親の仕事は赴任が多かったが、俺がこの町に残りたいと駄々をこねたせいで、父母、祖父母には迷惑を掛けている。
この家も両親が俺がこの街で暮らす為に買ったと言っても過言では無い。
「どうせ毎回帰ってくるんだから」
と購入を決意したそうだが、今では俺しか使う者が居ないのだ。
税金関係やライフラインに掛かる金は全て祖父母が、両親の遺産から払ってくれている。
と言っても、俺の小遣いは自分達の貯金から出してくれている様だが。
何が言いたいかと言うと、一戸建てで、美少女と二人きり。年頃の男子としては、(結婚したらこんな感じかな)と思ってしまうのも詮無いこと。どうしてもニヤニヤが止まらないのである。
柄じゃないのに......
まあ、何はともあれ明日の学校が大切だ。クラス替えで少しはマトモになると良いのだが......
(ふあぁぁああ。眩しい......)
いつも通り、五時少し前に起きる。
寝返りを打つと、美少女の寝顔が見えてドキリ、とする。
(可愛い......人間の姿をしていても、猫っぽさが全然抜けてないな......)
自然と、その小ぶりな頭に手が伸びる。
こうして撫でてやると、自分から頭を擦り付けて来て更に可愛い事を発見した朝であった。
小猫さんを起こさないように、そっとベッドを抜け出す。
そういえば、猫は夜行性のはずなのに、夜はしっかり寝ていたな......そこも、神様調整なのだろうか。
朝食、兼、弁当を作り始める。
弁当は二個作らないと意味がない。いつもあいつらに一つは食い尽くされるから。
カバンの中は二重底になっていて、大切なものはここに入れる事にしている。
そうでもしないと、全て勝手に借りられてしまうのだ。
(六時か。いい時間だな)
テレビを点け、天気予報を聞き流す。
『____関東地方のお天気です。北関東は曇り時々晴れ間も見え____』
朝食を食べ終わった後は軽く柔軟運動をする。
体を二つに折り曲げ、太ももと腹をベッタリ着ける。
そのまま足を百八十度に開き____
いつものルーティーンを終えた俺は、制服に着替えた。
着替えるのはいつも最後に回す派の人間だ。異論は認める。
六時四十分。
小猫さんの寝ている枕元に、『行ってきます』と書き置きを残し、家を後にする。
クラスは____A組か。
といっても、アルファベットで分けられているだけなので、点数やら成績やらは関係がない。
クラスの面子は......あの三人は居ない様だが......あれとは違う三人が居るのが気に食わない。
高飛車女......増田貴羅々だ。
信じられるか? あれ本名だぜ?
キラキラネームも度が過ぎるだろ......
いつも人を見下した態度をとり、無駄に俺に絡んでくるので、メンタルがガリガリ削られる。
そして、ちょっと良い奴キャラを出そうと日々奮闘している白ギャル、御城 清楽。
腹の中では、自分に惚れた奴を玉砕するのが愉しいと思っている奴だ。
実際、奴が親しい友人に話しているのを偶然聞いてしまったので分かる。
あいつは屑だ。
更に____あり得ない事に、めんどくさい奴はまだ居るのだ____計算高いアホの子、中木 胡々葉
正直なところ、こいつが一番面倒くさいと思う。
自分に好感を抱いていないと分かるや、過度なボディタッチやらパーソナルスペースの縮小やらでオトそうとしてくる。
そうやって、男子の大半を味方に付けた中木は、中々厄介な奴だ。
今年の要注意人物を頭の中にメモし、教室へ向かう。
ちなみに男子の方は、流されやすいのが集まってしまったので、三人の機嫌を取り損ねるとひどい目に会う。
注意力マシマシで行かないとな。
全く......どうしてこうなるんだ......
「ちょっとあんた! 貴羅々の話聞いてんの!?」
「はい」
「じゃあ、貴羅々が何て言ってたのか一言一句間違えずに復唱出来るわね?」
「『筆箱を忘れてきたから貸しなさい! 断ったら社会的に殺すわよ? 貴羅々の役に立てるんだから本望よね?』」
「うっ......い、イントネーションがぜんっぜん違うわ!? ていうか、一言一句覚えてるとかキモっ! どんだけ貴羅々のこと好きなのよ! この貴羅々オタク!」
断じてそんなことは無いので安心してほしい。ただ単に鍛えられただけだ。
朝からこんな騒動を起こさないで欲しい。
それに、お前の取り巻きが筆箱を差し出してるじゃないか。
「貴羅々さま! 是非お納めください!」
「うっさいわね! 今はこいつと話してんの!」
チッ......
後ろ手でメモを書いて近くの野次馬にコッソリ渡す。
[あいつの筆箱を俺のだと偽って渡す。俺の机に置いといてくれ。]
よし。準備は整った様だ。
「わかりました。筆箱を取ってきます」
「分かれば良いの! さっさと行ってきなさい!」
うん。間違いなくさっきの奴が捧げてた筆箱だ。
クソソ......おっと、名前とルビが逆だ。貴羅々とやらは、一瞥もせずに一蹴していたから分からない筈だ。
「きょ、今日はこのくらいで許してあげるわ」
一生来んな。
しかし、災禍は連続して襲いかかるのだった。
お読み頂きありがとうございます。
ヒロイン成分が......足りない......