意外な敵
本当に申し訳ありません!
寝坊してしまいました。今起きたばかりで......申し訳ありません......
「関根。お前、さっきまで大倉と話してたよな? なら分かるだろ? 大倉が居なくなった瞬間が」
「お、俺かよ!? ......あれ? そういえばいつの間にか居なくなってたな......」
「じゃあ、田嶋はどうだ?」
「俺も分かんねぇ......」「確かにあいつ、知らない内に居なくなってたよな......」
「そ、それは、用を足しに行こうとしただけだっ!!」
嘘だ。
コイツらは、いつも同じグループで行動している。その仲の良さは自他共に認める所。
つまり、用を足すくらいで離れたりしない。
その証拠に......
「え、俺らいっつも一緒に行ってたよな?」「なんで今回に限って?」
「そういう気分だったんだよ! 気分!」
ほらな?
俺の見立て通り、いつも一緒に行っていた様だ。
本人達からの証言を得た。
「____じゃあ、トイレには入ったんだな?」
「当たり前だ!!」
そして、まんまと俺の仕掛けた罠に引っ掛かった。
語るに落ちるとはこの事だな......
大倉。お前はもう、詰みだ。なぜかと言えば......
「お前は修理の関係者なのか?」
「は?」
「男子トイレは今、水道管の修理中なんだよっ!! それともお前は!! 女子トイレにでも入ったと言うのか!? 答えろッッッ!! 大倉ッッッ!!」
最後の最後で、激情に任せて怒鳴ってしまった。
壁に声が吸い込まれ、鉄筋に反射してキーンと響く。
いつの間にか、階段前は異様な静かさに包まれていた。
周囲の野次馬が発する無言の圧力に____遂に大倉は膝を付いた。
「俺が......押した。俺が中木さんを押したんだよッ! これで満足か!? 土下座でもすれば良いのか!?」
大倉は......汚い唾を、涙をを振り撒いて、半狂乱になって叫ぶ。
「中木さんッ!! 満足しましたかあ!? 自分の手で小猫を突き落としたんですよお!! 憎き小猫をねえ!!」
「ちょっと!!」
「中木さん、いつも言ってましたよねえ!! 『小猫なんか転入してこなければ良かったのに』『あの尼、ウチの翔クンに色目使いやがって』って!! 毎朝、机に悪口書いてたのは誰ですかあ!? 画鋲で指を傷付けようとしたのは誰ですかあ!? タイミングを見て金属バットを落としたのは誰ですかあ!? ドアに指を挟もうとしたのは誰ですかあ!?」
「う、うるさいっスよ!! それに、画鋲とドアは、あっしじゃ無いっス!!」
中木は、言ってから自分の失言に気が付いた様で、血の気が失せた顔をしている。ほとんど仲間を売った様なものだぞ.....
さて、もう一人は誰だろう。
辺りを見回し一番焦った表情をしている人を探すと......御城さん。
お前か......
「御城......お前なのか」
「は? あ、雨川くん冗談キツいよ......」
「真っ先に手伝ってくれたのは、自分を容疑者から外す為か?」
「だから、ウチじゃ無いって! 今日ウチ小猫さんの机の近くに行って無いから! 筆箱に画鋲を入れる時間なんて無いでしょ!?」
どいつもこいつも、お手本のように口を滑らせるものだ。
だれも『筆箱に』なんて言っていないだろうに。
「............もう、いい。俺と鈴に近付かなければ、俺は許してやるよ。後は鈴の判断に任せる」
「待ってよ......やって、無いってば......ウソだよね......悪夢だよね......雨川くん......嫌だよっ......」
俺は、鈴の元に............あれ?
鈴が、居ないッ!!
「お前らッ!! 鈴をどこにやった!! 答えろッ!!」
「ま、待ってくれ、それは本当に知らない!」「あっしも、知らないっス......」「ごめん。雨川くん......ウチも知らない......」
どいつもこいつも寄ってたかって!!
巫山戯るなよ......
鈴......どこに行ったんだ......
その日、鈴は見つからなかった。
生徒が校舎内で行方不明になったということで、流石に教師も捜索をしたが、どこにも居ない。
家になら居るかもしれないと思い、走って帰宅したが小猫が帰ってきた様子は無かった。
動物は、死期が近付くと飼い主の前から姿を消すと言うが............縁起でもない。止めよう。ちょっと道に迷っているだけだ。猫なら帰巣本能で帰って来られる筈だ。
そう思いながらも、『帰ってきたら電話しろ』と置き手紙を残して街に探しに行ってしまう。
「(鈴......どこに居るんだ......教えてくれ......)」
片っ端から店を覗いて探した。路地裏も探した。橋の下も公園も駅も、居なかった。
もう、街中探した筈だ。小道一本見逃してはいない。
不意に空が明るくなった。
夜が明けた様だ。
一晩中探して、それでも居なかった。
____この街に、居るのだろうか......
電話も、一件たりともかかってきていない。
......一回、帰るか。
もしかしたら、すれ違っていたかもしれない。
誰も居ない家は、静かだった。
ほんの数日? 数週間?
たったそれだけで、自分の中の鈴の存在が大きくなっていた事に気が付く。
本当に、なにやってんだ、俺。
____あのとき鈴を降ろさなければ良かった。
____あのとき鈴から離れなければ良かった。
____あのときしっかり鈴と向き合っていれば良かった。
後悔ばかりが頭のなかを巡る。
俺がいる限り、鈴は傷付けさせないって、覚悟したのに......不甲斐ない。
「ク......ソ......」
いつの間にか、玄関に倒れて眠っていた。
お読み頂きありがとうございます。
※この物語はハッピーエンドです。




