表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/40

3.国王陛下のカゲによる報告

 メーベラ様はユーティスの付き添いのもと、地下に捕らえていた護衛と話をした。

 私を襲った理由はメーベラ様が推察した通りだった。

 あとは法に任せる。そう言ってユーティスはその件からは手を引いた。


 ただ風の噂で、ユーティスがその護衛と二人で話をしたと聞いた。

 ユーティスが去った後、護衛はひどく青ざめ、しばらくはご飯に手をつけなかったらしい。

 一体何を言ったのかはわからないが、それ以来毎日正座で何かを書き綴っているらしい。


 毒前菜事件の首謀者も捕らえられた。

 元々第二王子派の重臣で、ユーティスが賢王の顔をあらわしたため、邪魔になって消そうとしたらしい。

 まったくユーティスが危惧していた通りだった。


 それからアイリーンの毒クッキー事件は、ワーズ伯爵の次女キャロラインと名乗った女が見つかった。

 彼女はワーズ伯爵ではなくトレイロン伯爵の次女サマンサだった。妾腹で下町で育ったが、アイリーンを貶める手駒として密かに教育されていたらしい。

 そこに私が王宮にやってくることになり、アイリーンもろとも消し去るため今回のことを仕組んだ。

 うまくやればサマンサを王妃候補として舞踏会に連れて行くと約束していたものらしいが、おそらくトレイロン伯爵の本命は長女の方だったのだろう。カゲの話では、逃げるサマンサを追う者が他にもいたらしいから。サマンサを捕らえるのがもう少し遅ければ、口封じされていたかもしれなかった。

 サマンサはなかなか口を割らなかったそうだが、諜報を担っているカゲが集めてきた情報を突きつけられ、それから自ら赴いたユーティスに何事かを言われ、号泣しながら許しを請い、全てを話したらしい。

 重ね重ね、ユーティスが何を言ったのか聞くのが怖い。


 これを話してくれたのは、カゲ。忍んで護衛していたあの黒づくめのカゲだ。

 ユーティスからは、『そのうち話す』と言われていたのだが、なかなか話してくれなかった。

 で、たぶんそこにいるんだろうな、と思って部屋に一人でいるときに「カゲ!」と呼んだら黒づくめのカゲが出てきた。

 それでさっきの話を聞いたのだ。

 ユーティス自ら話してくれるつもりではあったようだが、『話しているうちにまたリリアが怯える』と言って話すのを躊躇っていたらしい。

 ……だって本当にユーティス怖いんだもん。めちゃくちゃ怒ってたのがわかる。迂闊な私が悪いんだけどさ。


「教えてくれてありがと。ずっと気になってたから。今ユーティスの護衛には他の人がついてるの?」


 仕事中だとしたら、足止めしてしまって申し訳ない。

 けどカゲは軽く頷いた。


「今は会議中だからな。オモテのカゲがいる」

「ねえ。もしかして、ずっと見ててくれてた?」


 なんとなく、この王宮に来てからずっと人の気配を感じていた。

 だから、ラス以外にも誰かつけてくれているんだろうなとは思っていた。


「エイラスがいるから日中ずっと張り付いてるわけじゃないが。時々見回りにきているだけだ」

「ユーティス、そんなことまで命令してたの? 業務過多じゃない」

「いや。非番の時間は何をして過ごそうと我らの自由だからな。陛下も勿論知ってはいるが」

「休憩中なの?! ごめん、なんか心苦しいんだけど」


 そう言えば、カゲがふっと笑う気配があった。


「あんたに死なれると困るからな。陛下の最後の砦だから」


 そう言われるとプレッシャーだけど、おかげで助かったのだからカゲにも報いないとね。


「ありがとう」

「別に。こっちの事情で勝手にしてることだからな」

「そういえば。ユーティスにもまた今度、って濁されたけど。あれって、聞いてもいい話?」


 前にカゲのことを聞いたときのことだ。あの時のユーティスの何とも言えないような顔がひっかかっていた。

 カゲは黒づくめの中から出ている目でじっと私を見て「まあ、陛下のためにも聞いておいてもらうかな」とちょっと小首を傾げる仕草をした。


「俺は、元は第三王子の護衛だったんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ