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誰もいなくなった世界

作者: 翔という者
掲載日:2020/02/16

 見渡す限りの荒廃した大地。

 その中にたたずむ、寂れた大都市。

 かつては何千万人もの人間を抱えていたこの街も、人がいなくなって久しい。



 多くの人々が行き交っていた駅も。

 若者が集まっていた電気街も。

 親子連れが遊びに来ていた遊園地も。

 どこにも。誰も。影も形も見当たらない。



 それは、この街だけではない。

 この星から、全ての人間が消えてしまった。

 私は、ただ一人の生き残り……だと思う。

 もう何年も他の人間に会っていないので、たぶん私が最後だと思う。



 全ての人間が消えた、と言っても、ある日突然パッと消えたワケではない。

 少しずつ、少しずつ、時間をかけて消えていったのだ。



 消えてしまった、と言っても、その消え方は様々だ。

 一概に「消えた」と言っても、「死んでしまった」ことも当てはまる。



 神隠しのように突然消えてしまった者もいる。

 何の前触れもなく、失踪してしまった者もいる。

 昨日まで元気だった者が、いきなり病に倒れて亡くなったこともある。

 不意に自殺を思い立って、本当に死んでしまった者もいる。

 原因不明の交通事故で消えた者も数多い。



 次々と消えていく人々を見て、私は思った。

 これは、何者かの手によるものではないか、と。

 つまり「消えた」のではなく、「消された」ということだ。



 調査と研究を重ねて、私は遂に真実を掴んだ。

 この世界には、我々の運命を操ることができる、高次の存在がいる。

 それも複数。

『彼ら』は恐ろしいことに、どう少なく見積もっても100万以上は存在する。

 だが、それを発表する学会も、今はもう無い。

『彼ら』の都合で、我々は消されてしまった。



『彼ら』の魔の手からは、誰であろうと逃れられなかった。

 エリート街道まっしぐらのサラリーマンであろうと。

 法の番人たる警察だろうと。

 国のトップたる大統領だろうと。

 時には動物さえターゲットにされる。

 女子供にだって容赦は無い。

 特に目を付けられたのは、若い少年と中年男性だ。

 何の恨みがあるのか知らないが、そういった者たちは真っ先に消された。



 一人、また一人と人間が消えていった。

 それに伴い、世界の労働力も減少していき、経済が麻痺した。

 やがてあらゆる国家が立ちいかなくなった。

『彼ら』に手を下されずとも、その生を終える者も現れ始めた。



 それでも『彼ら』は、人間を消し続けた。

 自分たちの都合のために。



 私の知り合いも大勢消えた。

 友人も、仕事仲間も、家族も消えた。

 今の私は、まさしく孤独だ。

 かつての顔見知りたちを模したAIを生成し、話し相手になってもらっている。

 要は、孤独を誤魔化しているワケだ。

 だがそれでも、私の精神は果たしていつまで保てるのだろう。



 私が消されなかった理由。

 どうやらこの世には、消されやすい人間と消されにくい人間が存在するらしい。

 生まれ、経歴、人種、年齢、職種、貴賤、人間関係……。

 それに当てはめると、どうやら私は、消されにくい人間に属するようだ。

 私が消されなかった理由は、恐らくそれだと思う。推測だが。



 この星から人間が消えて、それでもなお、私は『彼ら』について研究を続けた。

 そして、ある一つの事実を知った。

『彼ら』に消された人間の、その後の行方についてだ。

 ……だが、私は到底、信じることができない。

『彼ら』という、超常の存在を知って、それでもなお、だ。



 無人の大通りを、私は歩く。

 その途中で、気になるものを見つけた。

 道路のど真ん中で止まったトラックと、その下敷きになった、朽ちた死体だ。

 これはおそらく、『彼ら』に消された跡だ。

『彼ら』が人々を消し始めた初期は、こういう手口がとても多かった。



 この星にはもう、誰もいない。

 みんな、みーんな、異世界とやらに連れていかれてしまった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 割烹から来ました~。 最後まで引っ張ってからのオチ。 最高でした! みんな異世界いっちゃったら、この世界が非日常に なっちゃいますよね~。
[良い点] これは苦手な怖い話だな……、と思っていたら、最後の1行でやられました (ノ∀`) お上手です☆彡 お見事!
[良い点] ラストにニヤリ、です。 [気になる点] 「私」「俺」が混じっているのですが、意図しているのでしょうか?
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