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見えるもの 見えないもの
久しぶりに山の上からの景色を見た
僕の横で君は『綺麗だね』と景色を見て言う
だが僕の見ている景色は霧がかかった様に不鮮明だ
君の同じ景色を見る為にここにいるはずなのに
今の僕には同じものを見る権利すらないのか?
それとも僕の瞳が曇っているのだろうか?
僕は景色を見ることを止めた
見ることが出来ないものを見ることを諦めた
『こっちを向いて』
君が言う
僕は情けなく顔を上げる
そこには君の顔があった
『大丈夫。君には私の顔が、私には君の顔がちゃんと見えてるから』
君が笑顔を見せる
僕は思う
『全てが霧の中に消えても、君の笑顔を目印に僕は進んで行ける』と