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キズついた歯車

流れ落ちる血潮


それは先程まで僕の中にあったもの


痛みと共に大切なものまで流れていくようで僕はそれをペロリと舐めた


しかし大切なものは何処に消えたのか僕に戻ってくることはなかった


僕は全て無かったことにする為に絆創膏でキズを覆った


絆創膏に血が滲む


まるで「忘れるな」と言うように


きっと、このキズが消える頃には大切なものがあったことも忘れるだろう


絆創膏の下でキズが疼く


「それでいいのか?」と問い掛けるように


僕はそれを無視して絆創膏の上に絆創膏を重ねた


「もう見えないように」「もう痛まないように」と願って


そして僕は世界の歯車の一つへと戻っていく


以前より少しだけ歪な歯車へと


周りと噛み合わない歯車を一生懸命に回して


決して弾き飛ばされないようにと


けれど歪な僕は火花を散らし周りの歯車との軋轢により新たなキズを作る


キズから血が流れる


何かに急き立てられるように、今はキズも消え絆創膏だけになった場所を見た


そして思い出す


僕には以前、大切なものがあったことを


気がつけば涙が流れていた


それは何に対しての涙なのかは今の僕にはわからない


ただ一つだけ願う


僕の大切にしていたものが誰かの大切なものになっていてくれることを





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