花子の魔力事情
「何、おじさんたち。
幼い花子に、意味わからない事言わないで?
私はトイレの花子さん。
呼び出しを受けたから、来ただけよ?
あなた達、言ったでしょ?
〈花子さん、遊びましょ〉って。
だから遊びに来たのよ、花子は。
なのに、
女神の使徒とか、意味がわからないことゆーとんなら、頭カチ割って脳味噌床にぶち撒けっぞゴラァ。」
あら、いけない。
少女らしくない言葉を出してしまったわ。
ゴラァって、花子が使う言葉じゃないわ。
花子、いけない子だわ。
おじさんたちは、なんかプルプルしてるし。
トイレを我慢してるのかしら?
トイレなら目の前に有るのに。
使ったら最後、生きては出れないトイレだけどね。
「すまんが、膨大な魔力を鎮めてくれんか。
兵達がそなたの魔力で気絶しかけておる!」
偉そうだったおじさんが、青白い顔で足をプルプルさせながら、急に叫んで来た。
「あら、漏れそうなの?トイレつかう?」
私が気を使って言っても、誰も動かない。
ただただ、プルプルしながらこっちを見るだけ。
しかも、花子に膨大な魔力なんて存在しない。
あれは気、神力、色々言われているが身体が無いと発生しないエネルギー。存在という概念そのもの。
だから、肉体があるからこそ存在という力が発生する仕組みだ。故に花子には膨大な魔力なんて存在しない。私には体がないし。そもそも、魔力という概念は、生まれた時の私には付加されてないから。あったとしても、限りなく少ない量のはず。
そう。後から付加されない限りは。
「ねー、聞くけど私って、おじさん達に呼ばれてるのよね?」
「儂等は、確かにそなたを呼んだ。女神の使徒であるものを」
「………」
あっれー?おかしい。何かが、おかしい。
いや、おかしい事だらけだわ。
花子という<存在>は、<女子トイレ>にて<呪文>を唱えたら顕現できる存在だったはず。
確かに聞いたわ。<呪文>が唱えられたのを。
『花子さん、遊びましょ』って、言ったから此処への扉が繋がったんだもの。
でも、此処って<女子トイレ>なのかしら。
奥から3番目という制約があるから、最低でも3つの扉が必要なのに、見渡す限りあるのは1つだけ。
そして、<女子トイレ>っぽく無い。
カーペット敷きのトイレとか、掃除のおばちゃんに喧嘩売ってるもの。
「ということは、制約が干渉された可能性があるわね。」
花子という概念を上書き出来るとしたら、私より上位の存在のはず。
そして、先程から聞こえてた女神の使徒という単語。
女神といえば、アマテラス様とか、トイレの女神様とかの可能性が高いけど、日本神特有のお役所気質を考えれば、いくら上位の存在でも好き勝手はできないはず。面倒な手続きが沢山あるもの。
なら、外国の女神か?イシュタル様とかあり得そう。
あそこなら、好き勝手のやりほーだいが、許されるし。
いや、でも世界四大宗教の席捲で力を削がれてるから、私みたいな存在で遊ぶ暇は無いはずだし……
全くわかんない。
どの女神なのよ!
迷惑をかえりみずに、<存在>の定義を上書きしたのは!
「ねー。花子はおじさん達に、聞きたいの。
あなた達の女神の名はなんていうの?」
まじ、フルボッコにしてやるわ。