表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花は患い、恋得らない  作者: 芝森 蛍
同感する愛と嘘
14/84

エピローグ

「あーちゃんっ」


 声に振り返れば、そこにいたのは(こころ)だった。どうやら今日は彼と一緒に下校をしないらしい。


「ちょ、ちょっと待ってぇ。息がぁ……」

「走ってこなくても連絡してくれれば待ったのに」

「あ、そっか…………えへへ……」


 そんな考えに至らないくらいに何かがあったらしい。その原因を考えれば、ここにはいない彼に苛立ちが募る。


「……よし。一緒に帰ろっ」

「えぇ」


 飾った微笑みに深く追究する事はやめて前を向く。すると隣に並んだ心が踏み込んできた。


(かける)君と何の話したの?」

「別に。話って言う話はしてないわよ」

「そう? なんか怒鳴るような声は聞こえたけど」

「七不思議か何かじゃない?」

「なにそれこわいっ」


 余り首を突っ込まれたくないと話題を逸らせば、天然か勝手にずれてくれた。

 そんな彼女と他愛ない話をしながら、その傍らで脳裏に焼きつく彼の顔を拭い去ろうと試みる。……が、どうにもそう簡単に消えてくれなくて、余計に苛立ちが募る。

 あいつは、無自覚に心を傷つける。良かれと思う事が、良いとは呼べない方向に転がる。それでいて何でもない風な顔をしている事が腹立たしいのだ。だからそれが暴発してしまった。それほど長くない気が爆発してしまった。

 けれどそれは、本心でもあるから。飾る事は嫌いだから、私はいつだって自分の為に……誰かの為に正しい事を追いかけている。だから、嫌なのだ。口先だけの道化。あんなのが心の幼馴染だなんて反吐が出る。

 ……でもそれは、私個人の嫌悪。心にとっては、彼の存在は大きな物だ。

 私はただ、心にそこにいて欲しいからそうしている。今回はこうする事が正しいと思ったからそうしたに過ぎない。全ては心の為だ。そして、私の為だ。

 心がいつも通りでいる為に、彼がいつも通りでなければならない。そのいつも通りを取り戻す為に、馬鹿をしただけ。勘違いが挟まる余地はどこにもない。……他はどうかは知らないけれど。


「んじゃあね、あーちゃん。また明日っ」

「また」


 気付けば戻ってきていた州浜(すはま)駅。少しだけ名残惜しさを感じながら心と別れて自分の家に向かう。片手間に、気乗りはしないがスマホを弄って約束を果たす。

 これは、償い。これは、いつか来るその日までの、私の罰だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ