喧嘩部
よくわからない作品になってしまいました。でも、書いていて楽しかったです。そのときは。読み返してみると微妙な気持ちになります。コメディとアクションっぽいものを目指していたようなそうでもなかったような。ジャンル「学園」っていっても、そこら辺にあるようなものじゃないんで。
信司は、暇であった。信司の学校は部活動を必ずやらなければならない学校だ。しかし、信司はスポーツは万能であるものの、練習が面倒くさかったので、自分が好きなときに運動するような部が欲しかった。そして、桜塚地区も、全国的な平均から言えば、かなり不良と喧嘩が多い地区であった。退治しても退治してもいなくならない、まるでゴキブリのような生命力を持った不良たちは、よく自分たちの学校区を越えて、別地区の学生達に睨みを効かせ、自由に行動させなかった。そんな状況を打開するためだと理由をつけて申請した「桜塚市立高校学校地区学生安全生活防衛部」(通称「喧嘩部」)が、追い詰められていた校長によって、通ってしまった。そして、かくして桜塚高校に、立花信司を部長とする、喧嘩部が出来た。それが去年の話だ。
いまや二年の信司を筆頭に、同じく練習をしたくない生徒が集まり、いまや喧嘩部は運動部が強い桜塚高校の中でも相当な運動力を持った部と化していた。しかし、その運動能力はほとんど発揮されることなく、信司の二年目も過ぎていこうとしていた。
ハゲの校長が、手を校長室の机にたたきつけた。
「そろそろ何かやってくださいよ、防衛部! 設立から丸一年、特に立花君! 何も業績を上げてないじゃないですか! そろそろもともとの目的を果たしてくださいよ! これじゃあ来年からは部費は出ませんよ!」
信司は、驚いたような顔で言った。
「それは困る。菓子の買い置きができなくなるじゃないか」
校長は呆れて言った。
「だったら何かしてくださいよ、毎日菓子を食べて麻雀をやってるぐらいなら!」
信司は後輩に向けて言った。
「まあ、お前らもこの半年間、麻雀はうまくなったよなあ」
部員が一人、信司に提案した。
「部長! いっそのこと、麻雀部にしちゃってもいいんじゃないですか?」
信司は言った。
「バーカ、それだと練習しなきゃなんないだろう」
校長は、ため息をついた。
信司は校長に言った。
「じゃあ、手始めに商店街をうろついているヤンキーみたいな時代遅れの不良たちをまとめ上げてきますよ」
そういって、喧嘩部はぞろぞろとやる気の無い感じで校長室を出て行った。
そして、一行は部活動の時間帯であるということで、商店街の人々にはランニングだと偽って不良たちをまとめ上げた。まとめ上げた不良たちは、商店街裏の原っぱに連れ出した。
不良たちの中でのリーダー格の大男が、喧嘩部に向かって睨んできた。
「おまえらよぉ、俺たちを誰だと思ってこんなことをしてるんだぁ?」
信司は、冷静に答えた。
「いやいやいや、アナタたちが商店街にいるから、はっきり言って迷惑してるんですよ。だから、なるべく早く出てってくださいね〜」
「なめんなぁ!」
その大男は、信司に向けて大きな拳を振り上げた。しかし、信司はその殴りを見切り、ちょっと立ち居地を変えただけで拳をかわした。
「何だ、結構弱いんですね〜」
「何だと、てめぇ!」
大男はいよいよ切れて、烈火の如く殴りかかってきたが、信司は頭一つ分ぐらい背の差がある男の攻撃を大した移動もせずに避け続けた。
そして、大男の手が休まると、隙を見逃さずに、迫り来る拳を手で払い、大男の腹に渾身の蹴りを入れた。
「ぐっ・・・・・・」
大男は腹を抑えながら倒れた。
倒れた男に、信司は言った。
「この町は、俺達桜塚高校の喧嘩部が守っている間は勝手な顔、させねーぜ!」
残った格下の奴らは、逃げようとしたが、信司の合図で喧嘩部の一年生軍団がやっつけた。練習はしてないものの、そもそも天才であったが故に何もかもがこなせて練習が嫌になった連中であったので、勿論こんな三下を仕留めるのにも大した時間はかからなかった。
喧嘩部の不良の「掃除」が終わると、何故か木の後ろから商店街のコーヒーショップのマスターが出てきた。
信司は驚いた。
「マ、マスター! いつからいたんだ!?」
マスターは、その立派な髭をなでながら言った。
「いやいや、最初っからだよ。すごいねー、君達。実を言うとあの不良たちにはかなり困っていたんだよ。ありがとう、退治してくれて。早速商店街のみんなに報告しなければ!」
と、言い終わると、マスターは信司とその後輩の止めようとする努力もものともせずに、風のように走り去った。
「ちっ、いつも何かやるたび色々言われるのは嫌いなんだがな・・・・・・」
後日、信司が後輩たちと麻雀で遊んでいると、部室に商店街の人たちがやってきた。そして、その先頭にはハゲの校長がいた。
「君達! 君達! なんでも、商店街の周りをうろついていた不良たちを追い払ってくれたそうだね! ありがとう、ありがとう! これで私も顔が立つよ! それで、これはいっちゃなんだがお礼だ」
ハゲの校長がそういうと、商店街の人たちがゲームや食べ物、お菓子を部室に、沢山、とても抱えきれ無いほどの物を運んできた。
「うおおおおおおおおおおおお!」
と、信司は喜んだ。「これ、もらっていいんですかね!?」
「ああ、いいとも。あの不良たちの所為で、全然売り上げが伸びていなかったんだよ。でも、それもこれでよくなる。本当にありがとう」
と、商店街の人は言い、帰っていった。
「これからもこの調子で活躍を頼むよ」
と言い、ハゲの校長も部室から出て行った。
「おお! みろよ、こんなにおいしそうな食べ物が沢山! 全部食べていいんだよな!」
と、信司が喜んだ。
しかし、沢崎が止めに入った。一年の沢崎は、体力はそれほど他の部員ほどではなかったが、部員随一の頭脳派だった。それでも空手の有段者であり、綺麗に切り揃えたお河童ヘアーと、どんなに激しい喧嘩でも決してずれないメガネが特徴だった。
「部長! これは毒酒です。いいものと見せかけて、ここで言うとおりになってしまったら、また不良たちが更に多い数で繰り出してきたときは、こんな七人の部じゃかないませんよ! それでも駆り出されるでしょう。この「お礼」を受け取ってしまったら」
「おお、なるほど、沢崎、お前の言うこともよくわかる。しかし、俺はこの菓子が食べたいんだ!」
と、信司は菓子に食いついた。他の部員たちも食べ始めた。
沢崎はため息をついた。しかし、他の部員たちが食べているのをみて、自分も食べ始めた。
沢崎の推測は的中していた。数日後、みんなが給食の時間に食べ物を食い尽くすと同時に、まるで見計らったかのようにハゲの校長が部室にやってきた。
「えー、商店街の少し先の大広場に、どうもまた不良が出たらしい。速やかに撃退してもらいたい」
信司は、反対した。
「いやだぜ、何で俺たちがそんなことをしなければいけないんだ」
ハゲの校長は、顔をしかめて言った。
「あの食べ物、食べたでしょう」
「ああ、食べたぜ。美味だった」
「では、働いてもらわなきゃいけませんねえ」
「なんでだよ」
「あの報酬は、一年分の前払いです」
「何っ! そんなこと聞いてねぇぞハゲ校長!」
「ハッ、ハゲとは何ですか! とにかく、ちゃんと働いて貰わなきゃ借金となり、部費から引いたり、個人的に払ってもらったりしますよ!」
「何っ! かなり困るぞ、それは! 俺はもう今月の小遣いでさえ四十九円しか残って無いんだ!」
「では、やってもらいますよ」
と、言い残し、ハゲの校長は部屋を出て行った。
「・・・・・・!」
沢崎は「ほらね」とでも言いたげな顔だったが、自分も食べたので言えなかった。
信司は、少し考えて、
「まあ、食っちまったものはしょうがねぇ。仕方ないから、働きに行くか!」
部員の誰もが「切り替え早っ!」とつっこんだ。
そして、商店街の先の大広場まで、またランニングと偽って、喧嘩部は出動した。大広場には、もうみたら目が嫌になるほどの、派手にオレンジ色の制服の男子が集まっていた。全員、喧嘩は強そうであった。数はおびただしく、見た所四、五十人はいた。
「あの派手で趣味が悪い制服は・・・海南高校! とうとうこの地域まで手を伸ばしてきたか・・・・・・」
信司が突っ込んで行こうとすると、沢崎が止めた。
「何だ、沢崎!」
「部長、ちょっと待ってください。ここで突っ込んでいくのは無謀です。確かに部長の戦闘力は一騎当千ですけど、八方から囲まれたら勝ち目はありません。この大広場は、中心の時計台があって、その周りに広い道路が回っています。そして、その沿道からは小さな道が四つ伸びています。一つは向こうの高校が来た道、一つは今いる道、そして二つは横道」
「そんなこと、俺だって子供の頃からここに住んでいるんだ。わかるさ」
「この人数相手だったら、少なくとも三つに勢力を分けて、奇襲攻撃をした方が楽で勝てるんじゃないかと・・・・・・」
「まあ、確かにそうだな。普通の喧嘩だったら考えずに突っ込めるんだけど、この人数じゃな。今日は二人休みだから五人か・・・一人辺り十人は倒さなきゃな。くそ、こんなことになるんだったら日者にでも日を占ってもらえばよかった。この部の奴らは運動神経は良いが努力嫌いという点で端物で、丸物ではないからな。五十人相手に太刀打ちできるかどうか・・・・・・」
「では、奇襲攻撃で行きましょう。まずは僕と高嶺が正面から雑魚を相手にします。それで、風間と神田が横道その一から中部を攻めます。それで、立花部長は一番最後に一番奥の、リーダー格の人たちを狙って突進していってください。リーダーたちの統率がなければ、もう不良たちはまともに戦えません」
「よし、じゃ、それで行くか」
そして、各自、自分の場所にて待機した。
まずは沢崎と峰が正面から大声を上げて突っ込んでいったが、リーダーたちはたったの二人だとみて、手下たちに相手をさせた。それは、沢崎も峰も別に大柄の生徒でもなかったことからだろう。しかし、空手有段者の沢崎と柔道二段の峰の前には雑魚たちはどんどん倒されていった。そして、リーダー格の奴等がちょっと突破されることを心配し始める頃に、風間と神田が突っ込んでいった。喧嘩慣れしていた二人には、この不良たちは弱く、どんどんなぎ払っていった。しかし、不良たちの反発もものすごく、喧嘩部の四人はおされ気味であった。
「今か? 今か?」
と、広場のそばの建物の一つの中で沢崎の合図を待つ信司は、とてもうずうずしていた。
「ああ、もうじれってぇ!」
信司は合図を待たずに建物を急いで出た信司は、そのままリーダー格の奴等に向かっていった。
沢崎は走る信司を見て呆れた。
「あの人、あんなに合図を待ってくれと言ったのに・・・・・・まあ、立花部長に待てと言う方が無理だろうけど」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
信司は、リーダー格の奴らに向かってものすごい速さで走っていった。
その中の一人が前に出て、止めようとした。
「おい・・・・・・」
その発言を終える前に、その不良は信司の全速力飛び蹴りを顔に喰らい、そのまま飛んで行って時計台に当たった。
そして、信司はそのまま暴れ、暴れ、そして暴れまくった。最初の奇襲の時に一人が仲間を呼んだのか、ぞろぞろと本校から援軍が到着していた。
「まずいですよ! 部長! 引き上げますか!」
と、沢崎は叫んだが、信司は逃げないと答えた。
五人は必死に戦い、闘い、そして動き続けた。その騒動には警察も気づいたが、現場に到着しても、その喧嘩部の五人の気迫の前には黙り込むしかなかった。そして、昼の太陽がすっかり夕暮れになるころ、大量の不良の倒れた体の中に、五人だけ、かろうじて立っている喧嘩部の部員たちがいた。
息も切れ切れの信司は、最後に倒した番長に言った。
「俺たちが・・・・・いる間は・・・・・・この桜塚は好きにさせねぇぜ・・・・・・」
最後まで読んでもらってありがとうございます!
ちなみに、キーワードは「毒酒」「日者」「丸物」のみっつでした。広辞苑はやっぱり変な単語が多いです。