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第2話

第1話の誤字脱字、文章のおかしなところをざっと編集しました。

たぶんもうないと思うのですが、もしありましたら教えて頂けると嬉しいです。

因みに、第2話の分もありましたら教えて頂けると…。

拙く、読みづらい文章だとは思いますが、どうぞよろしくお願いします。


それでは、どぞ。


 セレナは会場を飛び出した後、とにかく帰りたいという思いでひたすら馬車に向かって走った。滂沱の涙を流し一心不乱に走るセレナを、道すがら出会う使用人や警備の騎士が驚きの表情で見送る。途中数人の使用人や騎士たちが声をかけてきたが、すべて無視して走る。とにかく、この場から今すぐ帰りたかった。


 扉を開け、外に出る。そのままの勢いで階段を駆け下り、正面に正門が見えた。正門を挟んで向こう側には、いくつもの馬車が鎮座しており、御者台にはそれぞれの家の使用人が見えた。

 正門までの道は、王宮の腕のいい庭師達が、精魂込めて作り上げた綺麗な花道となっており、夜でもその花を楽しめるよう、等間隔で明かりがともされている。しかしいまのセレナにはそんなものに気を取られている余裕もなく、その道を駆けだす。


 途中、ドレスに足を取られ盛大に転んだ。


「――っ! あぅぅ……」


 ドレスが破れ、膝に擦り傷が付く。手のひらには小石が皮膚を突き破っており、小さな痛みと共に少しばかりの血が滲み出る。

 慌てて後ろを振り向いたセレナは、自分のことを誰も追って来ていないと知るや、瞬間良かったと思うものの、次の瞬間には婚約者も親友も兄も、他の友人たちも、誰も自分を追いかけてきてくれていないという孤独感に苛まれた。


「う、うぅぅ……。どうして、こんなことに…」


 セレナはゆっくりと立ち上がり、ドレスが擦り剥いた膝の怪我に触れないようドレスを抓みながら、ゆっくりと歩いて馬車を目指す。


 少しづつ近づいていくと、自分たちに近づく人影に気づいたのか、使用人たちがざわつき始めた。

 そんな中、こちらに近づいてくるのがセレナだと気付いたエインズリーの使用人は、慌てて声をかける。


「お、お嬢様!? 一体どうなされたのですか?」

「アンナ……馬車を出して。今すぐ家に帰るわ」

「一体どうしたんですか、そんなに泣いて。綺麗なお顔が台無しですわよ。パーティーはどうなさったんですか?」


 そう、涙を流す主に優しく声をかけたセレナ専属侍女のアンナは、自身の困惑を一切顔に出さずに、セレナを宥める。しかしそんなアンナに対して、セレナは「早く馬車を出して!」とかなぎり声をあげた。

 驚いたのは使用人達。そもそもセレナが泣いているところを見たこともなければ、こうして声を荒げるのも見たことがないのだ。

 主の尋常でない様子に、すぐさまアンナは「かしこまりました」と返事をし、周囲の目を関係ないとばかりに無視し、馬車の扉を開け、セレナを馬車に乗せる。そして自身はすぐさま御者台に座り、馬車を出す。


 アンナは馬車越しに聞こえてくるセレナの嗚咽を背中で聞きながら、馬車を走らせる。あんなに取り乱したセレナも、かなぎり声をあげたのも初めて見た。アンナの知る自慢のお嬢様は、何時いかなる時も微笑みを絶やさず、いつも明るかった。それが今やその顔を真っ青にし、滂沱の涙を流しているのだから、これはただ事ではない。ルイス様と、何かあったのだろうか。


 ルイス・ラドフォード。この国、ラドフォード王国の第1皇子であり、お嬢様の婚約者。最近ではあまりいい噂は聞かないが、少し前までは成績優秀で剣も魔法も得意。金髪碧眼で整った顔立ちに堂々としたいで立ちは、幾人もの女性の憧れだった。それがここ最近、特待生で入学した平民の女にうつつを抜かし、セレナを蔑ろにしていると聞く。嫌な予感しかしない。もしかしなくても………。いや、やめておこう。所詮侍従である私には、どうすることもできない。今私ができることは、お嬢様を無事にお屋敷へ連れ帰ることだけだ。

 アンナはそう一旦思考をクリアにすると、セレナの様子から追手が掛かっているかもしれないと予想し、背後を警戒しながら馬車を走らせた。




     ◇




 青年は屋根伝いに移動しながら、セレナの乗った馬車を追いかけていた。否、追いかけているのではなく、警護をしていた。今セレナの乗っている馬車には、御者台にいるアンナのみで、警護する騎士がいない。本来いる騎士は、イヴァンの命令が下り動けずにいた。

 王都とはいえ、夜は危ない。騎士も巡回しているし、他の町に比べて比較的に治安はいいのだが、それでももしもということはある。

 そんなわけで青年はセレナの乗る馬車を陰ながら護衛することにしたのだ。本当は今にでも屋敷に戻り、会場でおこった一連の流れを彼の雇い主、セレナの父であるゴドルフ・エインズリーに報告をするべきなのだが、青年にとってセレナのことは何よりも優先されることなのだ。


 追ってもなく、セレナが無事に王都にあるエインズリー家の屋敷に着いた。馬車から降りてきたセレナは心ここに在らずと言った装いで、瞬く間に屋敷から駆け寄ってきた使用人とともに屋敷の中へと消えていった。

 青年はその様子を見届けると、怒りで握りしめている手に気づく。青年は小さく息を吐くと、少しずつ握り拳を解き、それからゴドルフのもとへ向かった。


 屋敷の屋根に上り、ゴドルフの気配を探る。青年は”裏”の人間であり、”表”の人間である使用人たちに姿を見せる訳にはいかない。

 ゴドルフの気配は、セレナの部屋にあった。恐らく、セレナが寝るまで傍にいるつもりなのだろう。俺も傍に行きたい…と思いながらも、そう言うわけにもいかず青年は屋根の上でしばらく待機することになる。


 セレナが眠り、ゴドルフが少しばかり使用人と話した後部屋に戻ってきた。ようやく話ができると、青年はゴドルフの前に音もなく姿を現す。

 ゴドルフにとってみれば、”気が付けばそこに人が突然現れた”という状況なのだが、ゴドルフはそれに少し驚くが相手が青年であると分かると、徐に溜息をつき話し始めた。


「それで? パーティ―で何があった」


 それに対して、青年がパーティー会場でおこった一連の流れを説明する。ゴドルフはそれを黙って聞いた後、先ほどよりも深いため息をついた。


「なるほど……。お前の言ったとおりだったな」

「はい」

「乙女ゲームだとか言っていたな。この後はどうなるのだ?」

「はい、この後はセレナ様がエインズリー公爵家を追放、さらに王都からも追放され、流れ着いた先の森で暗殺者に殺害されることになります」


 その答えに、ゴドルフは渋面を浮かべる。


「そうか……。しかし、どうしてこのようなことになった? 実際にはマナリア嬢に対して何もしていないのだろう?」

「はい。私が調べた限りだと、自作自演です。恐らく、筋書通りに事が進まず、焦ったのでしょう。今日は国王陛下が国外へ重鎮たちを連れて外出しております。その機を狙ったのでしょう」

「国王が国外へ訪問している今、実質この国の最高権力者はルイス殿下にある。近衛騎士団に大臣を含む有力貴族たちが一斉に国を開けている今、一気にケリをつけた…ということか」

「はい。国王陛下がおられましたら、まず間違いなく殿下をお止めしていたでしょうから」


 この国の国王、エドマンド・ラドフォードは賢王として知られている。この度国王が他国へ訪問するのは、最近魔物の動きが活発化し、どうやら魔人も活動していることを突き止めた。もしかしたら魔王が復活するかもしれない。国王はその呼びかけと、連合を組むために他国へ訪問しているのだ。書面にてもうその情報は伝わっており、今は他国の王族が集い会議を行っている。


「これから、殿下はどう動くと思う?」

「恐らく、筋書き通りに追放かと。ここでとらえたとしても、極刑にするには国王の許可がいります。そして間違いなく、国王は極刑などなさらないでしょう。ですので…」

「追放して、暗殺する…と」

「はい」

「……………」

「どうなさるので?」


 青年の問いに、しばし沈黙するゴドルフ。目を瞑り、熟考する。

 数分が過ぎる。ピリピリとした空気の中、不意にゴドルフが目を開けた。その目は何かを決心したような強い光をともしている。


「………セレナを、王都から逃がす」

「………と、いうと?」

「その乙女ゲームとやらと同じように、追放するのだ」


 その言葉に、青年の指がピクリと動く。それを見て慌てたゴドルフは、慌てて次の言葉を紡ぐ。


「ま、待て! 落ち着け! 取り敢えず私の話を聞け」

「………」


 その言葉に、青年はとりあえず話を聞くことにしたようで、黙って腕を組んだ。本来なら不敬に当たることだが、ゴドルフはそんなことは気にせず、助かったと安堵の息を吐く。


「ふぅ…心臓に悪いな。………さて、私の考えを話すが、今、殿下と敵対するような行動をとるのは不味い。これは分かるな?」


 青年は黙ってうなずく。ここで下手に殿下を刺激すると、殿下が何をするか分からないからだ。いや、正確にいうと、マナリアがどう行動するのか、予想ができなくなるからだ。彼女にとって、恐らくここは乙女ゲームの世界であり、現実だという認識はない。つまり、この国の法律を無視するような発言を殿下に進言するかもしれないかもしれず、殿下は彼女のためならと、それを実行しかねない…ということだ。最悪、セレナの極刑が行われるかもしれない。


「陛下はいつ戻られるか分からない。そんな中、殿下がセレナを牢にとらえて置く確率は、限りなく低い。そうなると追放し、暗殺者に殺させる…という乙女ゲームなるもののような行動をするだろう。マナリア嬢も、その乙女ゲームとやらと同じ展開になれば、恐らく何もしてこないはずだ」


 青年は黙ってうなずく。


「例えばここでセレナを匿えば、殿下に目をつけられる。他家の貴族は恐らくこの機に殿下に近づこうと行動するだろう。何せ、今の段階では次の国王はルイス殿下だからな。それに、目をつけられては真実を暴くのにも手こずってしまう。だから、イヴァン……あのバカ息子が帰ってくるなり話を聞く。それは恐らく酷く偏った意見で、セレナを追放するよう話してくるだろう。………ここまで言えば、私が何をしようとしているか、分かるだろう?」


 青年は少しだけ間をとって、頷く。

 青年にはゴドルフの考えが手に取るように分かった。そして、今からゴドルフが青年に頼もうとしている内容も。


「…そこで、お前に頼みがある。お前になら、セレナも心を許すだろうしな。それに何より、お前になら、娘を任せられる」


 断るわけがない。

 青年は首からかける綺麗なサファイアのペンダントを撫でながら、言った。


「任せろ。俺の忠誠は、セレナ様にしかないのだから」




もう少しだけ主人公(青年)の名前は待ってください。

決まっていないとかじゃなくて、作者の中で出すタイミングが決まっているのです。………本当ですよ?

今は基本的にセレナ……目線? まぁセレナを中心に書いていますが、これから青年目線というか、青年中心になってきますので、よろしくです。

説明の足りない所などは、今後のお話の中で書いていく予定ですが何かありましたらどうぞ。作者は忘れっぽく、書き忘れている可能性もありますので。


それでは、お読みいただきありがとうございました!

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