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第16話

お待たせしました!

ちょっとご都合主義? 的な展開ですが…取り敢えずどぞ。




「悪いけど、遠慮させていただく」


 一切の躊躇なくヒスイが断りを入れる。

 スッとクライドの目が細められた。


「へぇ、どうして?」

「むしろ何であんたの興味に付き合わないといけないんだ? こっちは長旅で疲れてるんだ。わざわざ厄介ごとに関わるつもりはない」


 ヒスイの物言いにクライドの騎士たちが腰の剣に手を伸ばす。

 それをクライドが手で制しながら口を開く。


「厄介ごととは随分なものいいですね」

「俺たち平民からしたら貴族は厄介ごとをまき散らすだけの税金ぐらいに等しいからな。もちろん、例外はいるが」

「僕たちはその例外ではないと?」

「さてね。残念ながらあんたらのことは聞いたことがないから、その辺の判断はできないね。できないからこそ、あんまり関わりたくないんだけど」

「ふむ。しかし君たちを助けたのだから、少しぐらいならいいんじゃないかい?」

「何でそうまでして俺たちに関わろうとしてくるかね。逆に怪しくなってきたな。それに助けた? あんた何かしてたか?」


 ピクッとクライドの眉が動く。


「騎士の3人を押さえておいてあげただろう?」

「は? それはあんたらが勝手にやったことだ。別に頼んでない。俺たちが一度でも助けてって言ったか?」

「おかしなことを言うね。なら君はあれかい? あの貴族を押さえつけながら、あの騎士3人に対応できたとでも?」

「余裕だな。寧ろあのレベルなら10人いても大丈夫だ」

「随分な自信家だね」

「あんたは恩着せがましいな」


 しばし無言で睨み合う2人。

 クライドはヒスイが強いということは先ほどの動きで分かっていたが、さすがに10人は見栄を張ったと考えていた。しかし実際ヒスイにとってあのレベルなら10人相手でも余裕で、寧ろもっと多くても全員を皆殺しにすることは可能だった。


「ふむ。どうしてそこまで拒否するんだい?」

「あんたこそ、どうしてそんなにしつこいんだ? さっきレーナに嫌がられたのに気が付かなかったのか? 今あんたがしていることは、勝手に問題に介入して恩着せてそれをたてに関係を無理やり迫る、さっきの貴族とさして変わらない…いや、こちらが断りにくい分よけいに性質が悪い。さっきの貴族の横暴と、何ら変わらないんだぞ?」

「酷い言われようだね」

「事実俺はそう感じているからな。あんたしつこすぎる。裏があるとしか思えない」


 再び睨み合う二人。

 後ろの騎士たちが剣の柄に手を置いた。今度はクライドも止めはしなかった。

 それを見てヒスイが先に口を開く。


「それに、あんたの騎士もすぐに剣に手を伸ばす。権力を笠に好き勝手する貴族の騎士みたいに、言うことを聞かない奴は暴力で言うことを聞かせようとする。さっきの貴族たちとあんたら、何が違う?」

「彼らを僕を守ろうとしているだけだよ。彼らを悪く言うことはこの僕が許さない」

「どうぞ。許してくれなんて言ってないからな。許す許さない好きにしな。というか、今までの会話であんたを守ろうとする必要がある場面があったか? なかったよな? あったとしても、少なくとも剣に手を伸ばすほどのものではないはずだ。だというのに、あんたの騎士は二度も剣に手を置いた」

「……彼らが守ろうとしたのは僕の身ではなく、貴族としての僕だ。君が何の敬意も示さないから、彼らはそれが許せなかったんだろう」


 クライドが苦し紛れにそんなことを言い出した。

 それをヒスイは鼻で笑う。


「はっ! だとしたらその騎士共はバカだな。ここで剣を抜く方が主にとってよろしくないことぐらいわからないのか? 主が興味を持って話がしたいと誘った相手に、たかだか話し方一つで剣まで抜こうとするとは。本来なら主に一声かけるか、剣に手を伸ばす前に俺に注意を促すものだ」

「……僕が口を挟まないように指示を出したんだ」

「そしてこう言うつもりだったんだろう? 『すまない。僕の騎士たちは血の気が多い者たちが多くてね……。次は僕でも止められるか分からないよ?』みたいなことを。それで有無を言わせず馬車に連れ込んで……さてさて、一体その後はどうするつもりだったんでしょうね?」


 ヒスイたちの会話を周りで聞いていた人たちが、ヒスイの言葉に息をのむ。

 初めのうちは「別に話ぐらい良いだろうが、実際に手を貸してくれたんだから」「あの男ちっせぇなぁ。『助けて何て言ってない』とか、ガキかよ」「考えすぎだろ」などとクライドを擁護する発言が多くみられたが、今ではもうだれ一人口を開かず、事の成り行きをただ見守っていた。


 周りも気が付いたのだ。ヒスイの言うことにも一理ある…と。寧ろそう言う形で連れていかれる女性の方が多いということを。実際トニョのような貴族は、後から来た衛兵や騎士たちが捕らえて助かるケースが多い。しかし、今のクライドのようなパターンだと、衛兵も騎士も手を出しにくい。周りで話を聞いていた庶民はみな、こう思った。


 ――もしかしなくても、あの貴族について行っては不味いのでは? …と。




 その空気を敏感に感じ取ったからか、ヒスイと睨み合っていたクライドが小さく溜息を吐く。


「はぁ。本当にただ純粋にあなた方に興味があっただけなんですが…いいでしょう。そこまで言われた後に無理に連れていくような真似をしてしまうと、それこそあなたの思う壺になってしまいますからね」


 遠まわしにヒスイたちが悪いことをしたかのように言葉を紡ぐ。


「では、ここで私は自分の列に戻るとしましょう。しかし、覚えておいてくださいね。この僕に恥を掻かせたんですから」

「三下が吐くようなセリフを、よくもまぁ堂々と言えるな。尊敬するよ」


 クライドは目をさらに細め、ヒスイを睨む。その目には確かな殺気が含まれていた。


「…この僕に逆らったこと、きっと後悔しますよ」


 ヒスイにしか聞こえない音量で、クライドが呟く。


「しないさ。あんたが貴族の権力を使うなら、俺は武力を使う。あんたが貴族の力で武力を振るうなら、俺はその武力を徹底的に叩き潰すからな」

「本当にそうなるといいですね。過度な自身はあなたどころか、彼女の身をも滅ぼしますよ」

「心配ご無用。俺達のこと何も知らない奴に、とやかく言われる筋合いはない」

「それあなたも同じことでしょう。…それでは。夜道には気を付けて」


 それだけ言うと、クライドは自身の騎士を連れ元の並んでいた場所まで帰って行った。


(「夜道には気を付けて」……ねぇ。それを【夜】と呼ばれる俺に言いますか。あと、残念ながら、俺はあんたのことは知っているよ。………エルフォンス伯爵家四男、クライズ・エルフォンス)



 クライド・エルウィズ。またの名をクライズ・エルフォンス。エルフォンス伯爵家の四男にして、エルウィズ子爵家当主(・・)

 ここではクライドと呼ぶが、彼はエルフォンス伯爵家の四男だった。しかし四男なだけあって伯爵家を継ぐことはほぼ不可能。よくてそれなりの力のある貴族の令嬢と政略結婚で、悪ければ女性当主の有力貴族の愛人になる。クライドはそれを受け入れることができなかった。

 クライドは非常に優秀で、上の兄二人何と比べてもその優秀さは抜きんでていた。そして彼は自分の力を過信し、自分はその程度の男ではない。どうしてこの僕がそんな惨めな人生を送らなくてはいけないのか。伯爵家程度では、この僕にふさわしくない。そう考え、彼はその胸に強すぎる野心を持ち、盗賊や暗殺者と手を組み一から子爵家までのし上がってきた。

 邪魔なものは殺す。欲しい者は必ず手に入れる。そうして、子爵家までのし上がってきた男。

 ぶっちゃけ、トニョなんかとは比べ物にならないぐらい性質が悪い。あれはただ単に頭がパーなだけの貴族。放っておけば勝手に潰れて消えていくような男だ。

 だが、クライドはそうもいかない。こういうタイプは証拠を見せず残さず、徹底的に痕跡を消してすべてを闇と共に葬り去るタイプ。そして、自分に逆らう者は殺し、欲しいものは必ず手に入れる。


(……久しぶりに、本当の暗殺をすることになるかもしれないな)




「ヒスイ?」


 突然無表情になったヒスイを、セレナが不安そうに見上げてくる。


(……兎に角、セレナがいる現状では無理か。俺がセレナから離れる訳にはいかないし…仲間でもいれば、クライドを暗殺しに行けるんだが……)


 そんなことを考えながら、それでもヒスイはその顔に笑みを浮かべ、セレナの頭を撫でる。


「大丈夫だよレーナ。怖い思いを挿せて悪かったな」

「ううん。ヒスイがいてくれたから平気」


 可愛いことを言ってくれるじゃないか。


「でもさっきのクライドとか言う人……あの人からは嫌な感じがする。あの人の目、あれは殿下やお兄様たちと似ていたわ」

「似ていた?」

「ええ。一見優しそうに見えなくもないけど、その奥では何を考えているかまるで分らない。まるで私を凶弾したときの殿下たちのような冷たい目だったわ」

「うん。正直あいつはかなり性質が悪い貴族でね。よく気づいたよレーナは」

「ヒスイ、さっきの人達のこと知ってるの?」

「そりゃあ知ってるさ。その筋ではかなり有名な人物だよ」

「その筋?」

「暗殺」


 ヒスイの言葉に、セレナは顔を青くする。


「それって……」

「うん。俺の対象者になる貴族だよ」


 それだけで、セレナは全てを悟った。


「大丈夫なの? そんな人に目をつけられて。それに私たち、結構目立っちゃったし」

「あ~そこはごめん。確かに必要以上に目立ったかも。セレナを連れて行こうとするもんだから、つい……」


 そう言うヒスイに、セレナが慌てて両手を振って違うという。


「べ、別にヒスイを責めてるわけじゃないのよ!? た、ただちょっと不安になっただけで…その……嬉しかったし……」


 頬をほんのり赤くしてそんなことを言うセレナに、ヒスイは悶えそうになるのを必死に我慢するのだった。




ありがとうございました!

なお、本日も上手く書けなかった模様…。

今回の話は構成自体はしっかりとできていたのですが、私では文章にするのが難しくて思うように書けませんでした。

楽しんでいただけたなら幸いです。

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