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転校生

(見慣れない天井だな…)


早川幸希(はやかわこうき)は、いつもより体感で一時間程はやくに起きた。


最初に目に映ったのは全く見慣れない部屋の中だった。

真っ白な壁に包まれた約5畳半の部屋の中に少し小さめの窓が二方向から朝の爽やかな日差しを迎え入れている。


部屋の内側に目を移すと、真っ白な丸いローテーブル、その下には黄緑色をし、柔らかそうな丸いカーペットが敷かれていた。


慣れない部屋の中、眠気眼(ねむけまなこ)を擦って、少し重く感じる身体を伸ばす。全身に血液が巡っていくのを感じた。


 半覚醒の意識の中、目頭を押さえていると、彼の右側からガチャッと、ドアが開く音がした。


「おはようございます。よく眠れましたか?」


「あ、おはよう」


幸希の部屋に入ってきた彼は、真面目そうな髪型に、細い黒縁のメガネ、それを支える高い鼻。柔らかそうな目をしている、見川伊吹(みかわいぶき)という人物だった。


彼は白いTシャツに黒のジーパンを履いて、何となくまだ眠そうだった。


「わざわざ起こしてくれてありがとう」


「いえいえ、お礼を言われるほどのことでは。それよりも、朝食を食べに行きましょう」


幸希の言葉にそう返した伊吹は、そのまま優しくドアを閉め、どこかに行ってしまった。


幸希があの地獄のような世界から意識を戻したときには見知らぬ病院に運ばれていた。

そこで異常がないか1週間様子を診てもらい、異常が無かったようで無事退院。

年齢上まだ高校二年生だった幸希は近くの高校に転校生として今日からその学校に編入することになった。


まだいくつか考えたいことや知りたいことがあるのだが、幸希の体からはエネルギーの要求が凄まじい。


食に対して朝から貪欲さを見せる自分の体に一人、苦笑を浮かべながら身なりを整えて部屋を出るのであった。


部屋を出て、廊下を真っ直ぐに歩き、突き当たり左にあるドアを開ける。


その部屋の中では、ベランダに通じる大きな窓から送られる陽の光を受けながら約三人掛けのソファに座って正面のテレビで何かのニュースを観ている伊吹の姿があった。


「さて、食堂の方に行きましょうか。」


幸希の入室に気づいた彼は、テレビの電源を切りながら言った。


「食堂?ここってマンションじゃないのか?」


「いえ、ここはマンションではなく寮ですよ、学生寮。」


「・・・は?」


一瞬、伊吹の言っていることが嘘のように聞こえた。正確に言うと、現在進行形で嘘に聞こえる。


彼の視界の端の方には、机の中央の花瓶に数輪の花を生けてあるダイニングテーブル、冷蔵庫や電子レンジなどが設置してあるキッチンスペースが見える。


設備も充実していて普通に見ても結構いいマンションの1室に見えるここが…寮?


ただただ状況を把握し損ねている彼に、クエスチョンマークを量産しながらこちらを見てくる伊吹。


「とりあえず、食堂で朝食にしましょう。色々と混乱しているみたいですけど、そんな時はご飯を食べて、ゆっくり落ち着きましょう」


いくつかの沈黙が降っていた中、部屋の奥のドアを開けて、恐らく玄関に向かっているであろう伊吹を、その場に突っ立ってただただ眺めるしかなかった幸希であった。


食堂は大型ショッピングモールのフードコートのようで、大量の椅子とテーブルが置かれていた。


だが、人の入りは少なく、決して賑わっているとは言えなかった。


「この食堂っていつもこんなに空いているものなのか?」


椅子やテーブルの数から察するに二百人分のスペースはあるのに、五十人程しか席についていない事に少し違和感を感じ、伊吹に尋ねてみた。


「そ、そうですね・・・いつもはもう少し多いんですけど・・・」


どこかソワソワして忙しなく周りを見ている伊吹の様子にも、少し違和感を覚える。


「大丈夫か?」


「あ、はい・・・なんでもありません」


やはり落ち着かない様子で答えた伊吹だが、彼も人が少ないことをおかしく思っているのだろう。


そう解釈し何も問うことなく、自分の頼んだ『朝からガッツリ!とんかつ定食』を頂くことにした。


二人は朝食を食べた後、食堂のある一階から、二人の部屋がある五階へエレベーターで戻り、やはり寮には見えない室内で学校へ行く支度をした。


そこから三十分の余裕を持ちつつバスで移動、その後伊吹は自分のホームルームへ、幸希は事前に教えられていた職員室へ向かった。


そこで彼の編入するクラスを受け持っている約三十代前後の教師と軽く挨拶をし、一緒にホームルームへと向かった。


余談だが、幸希は今いる学校について、学校名すら知らない。

というのも、彼は事の流れるままに転がっただけで、編入についての手続きなどは親が全てしてくれたらしい。

その親については、未だ幸希自身も居場所を知らない。

その事をあまり考えすぎても現状が変わることはない、と頭で理解しているが、やはり心のどこかで常に探している。


両親についてあの時何かあったかどうか思い出していると、幸希のすぐ前から、ふと肌を刺すような感覚を覚えた。


(この感覚・・・魔力か?)


魔力とは、人それぞれ貯蓄量や、消費する量に違いはあるが、少なくとも特定の生物が生まれ持ってする力の1つである。


そして、魔力が使われる時は主に戦闘に移行する時、幸希は目の前にいる教師にできる限りの警戒をしていると、


「・・・え?」


彼はそのまま何事も無いように目の前の、自分が受け持っているクラスのドアを開けた。


そして、教室の中の、教卓の前に立ち、「皆、おはよう」と言っていた。


まだ話の展開についていけていない幸希はそのまま廊下の中で脳内の情報整理をしていたのだが、その最中に彼が、「いきなりだがこのクラスに転入することになった人がいるんだ。」

と言ってこちらに向かって手招きしてきた。


まだ状況がよく分からないまま教師の元に向かうと、彼は「じゃあ、自己紹介してくれ」とだけ言った。


最初の挨拶の時や歩き方から薄々勘づいていたが、この教師はとても大雑把な性格らしい。


何の打ち合わせもせずにいきなり無茶振りをさせてきた人物に嫌気がさしながらも即興で考えた自己紹介文を口でリピートする。


「・・・早川幸希です。寮で生活しています。まだこの学校に入ったばかりで、不慣れなところが多いので、助けてくれたら有難いです。これからよろしくお願いします」


何とか近い内に投稿できて嬉しい限りです。

という訳で、今回は「転校生」というサブタイトルの下、主人公が、あのプロローグの後にどういう道を照らされたか、という内容でまとめてみました。転校生と言えば、主人公の通っている学校に誰かが転校するというイメージが強い気がしますが、敢えて主人公が転校生という状況にしてみました。そのため、違和感を覚えるかもしれませんが、あまり気にせずに読んで頂ければ嬉しいです。

あと、補足が一点程、主人公の幸希という名前ですが、読み方は「こうき」です。友人の何人かに読ませたところ、全ての人が「さちき」だったり、「ゴニョゴニョ」と、(絶対こいつ読み方わかってないな)と思わせる読み方だったので一応、ここに記しておきます。

では、またいつ来るか分からない次話でお会いしましょう。

アディオス‼

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