全身全霊 全力全開
(ダメ、このままじゃ…)
桜は直感で准弥の動きを予想できたのだが、それは桜にとって絶望でしかなかった。
(こっちが滞空中に来られたら…回避できないよ!)
准弥は桜に向かって跳んで、桜は体勢の問題で准弥を迎え撃つことは難しい。それに、空中移動などという便利な技術は生憎桜にとって専門外だった。
「・・・お前の力はこんなものだったか…最盛期のお前はこの程度じゃなかっただろ…!」
准弥は桜の心情を読み取ったのか、失望した口調でそう言った。それはもちろん、桜にも聞こえており、
「…っ!応用魔術 “不可視衝撃”!!」
准弥の言葉に応じるように、不可視衝撃を枯れた木のような形にし、その枝にあたる部分を足場にした。
そうすることで、准弥の攻撃を避けられると踏んだのだ。
「…ここからは、全身全霊であなたを叩きます…准弥!」
「・・・いい度胸だ、かかってこい!」
互いに気合を入れ直し、そのまま対戦を再開した。
「・・・解放…!」
最初に行動したのは、またもや准弥だった。空中で桜への攻撃を躱されたが、身体を反転、武器の腹を身体の前に構えて何かの呪文のように呟いた。
すると、神災希にある刀身の中央の線が、まるで大口のように開いた。
中は暗闇で、光を一切通しておらず内部の構造は窺えない。
そこから突如として大量の魔力弾が桜に襲いかかった。
「い、いつの間に…!?」
神災希の特殊な点は、“相手の攻撃を吸収し、吸収した攻撃を1度だけ発動出来る”と、“攻撃はいくらでも吸収できるが、複数に分けての発動はできない”というものだった。
後者は欠点のように思えるかもしれないが、相手からしたら複数の魔術で同時に攻撃されるのと同じの為、むしろこの武器の長所とも言えるかもしれない。
つまり今の状況は、桜の極量弾幕を准弥が使っているのだ。
「くっ、こうなったら…」
何発かの魔力弾が頬を掠め、余裕も逃げる術も無くした桜は、おもむろにセレナの小型魔力貯蔵装置(魔力弾を効率よく撃つために必要な装置の一つ)を取り外し、迫ってくる魔力弾の一つに狙いを定めて、引き金を引いた。
「・・・なっ!」
するとまるで水面に1滴水を落としたように、魔力弾が周囲のものも巻き込んで爆発していった。
そして霧のような煙が上がり、お互いの事を視認できないほどにその煙が濃くなった。
「聖なる水よ、我が生の繋ぎ手として、その存在を此処に示したまえ…母精霊」
「・・・っ!」
突如霧の向こうから放たれた水の塊は、准弥へと勢いよく接近し、それに何とか反応できた准弥は神災希で薙ぎ払う。
「神なる樹木よ、我が軌跡に呼応し、全てを薙ぎ、我を未知の秘境へ誘わん…地木精霊」
「・・・またかっ!」
次は准弥の真下の地面から太い根っこのようなものが垂直に伸びていった。
これも准弥めがけて勢いよく伸びたのだが、それを神災希で引き裂くように一刀両断した。
やがて煙が晴れた向こうでは、両手に1本ずつのコンバットナイフが逆手持ちで握られていた。
右手にはアウイナイトのように美しい蒼の刀身。
左手にはマラカイトのように不思議な模様の入った刀身。
その二つのナイフを持った桜は、どこか寂しそうに、そして嬉しそうな顔をして、虚ろな目で准弥の姿を捉えていた。
「全力全開フルパワーでいきます!」
「・・・それを待っていた…!」
お久しぶりです、赤坂ラルラです!
いつの間にか1ヶ月…今思えば早いものですね(笑)
まあ、本当に……お待たせしてすいませんでした。
言い訳のつもりじゃないのですが、私事の方でガヤガヤしてまして、小説を書く暇が無かったというか…正直、現在は投稿するべきじゃないのですが、折角書けたのでこうやって投稿しました。
さて、前置きはそろそろ投げて、今回の話をです
今回は、主人公の名前すら出ないパターンの回でした。
いや、ね。戦闘しか描写してないのにどこで主人公の名前入れれば良いんだよ〜って感じだったので、いっその事入れない方が良いって思いまして…こうなりました(汗)
内容としては、准弥くんの新たな精神武器の能力紹介と桜さんの精神武器の登場回ですね。
まあ、でも…桜さんの精神武器の能力は、名前から分かりますよね(笑)
そんなこんなで本編17話!まだまだこれからなのにこんなに時間が掛かって大丈夫なのか(汗)
取り敢えず、次回もお相手して頂ければ幸いです。
それでは、また〜!