7話
「おーい、ぼっちくーん! いいことを思いついてしまったー!」
「そうですか、それはよかったですね。でもその考えが実行されることはないと思います」
「え? なんで?」
「たった今、正式に疎開の知らせが届いてきました」
あぁ、また一段と世界はつまらなくなった、とシュウはつぶやいた。
「…………シュウ様。いいかげん機嫌直してください」
「うるさいなぁ、この万年一人ぼっちがッ……」
「ホントにやめてください」
シュウは少しばかり絶望した。確かにただの思いつきだったけど、自分が決めたことを実行できないというものはなかなか心に来るものがあるのである。
「で、結局考えってなんだったんですか?」
「うーん、…………やばい、たった今忘れた」
「……えぇー」
というかめんどくさくなった。だってどうせ実現されないなら考える意味ないし。それなら、もっと何かおもしろいものを探すだけさ――――シュウはなかなかのポジティブ人間であった。
「そういや、疎開ってどこ行くの? 引きこもってちゃダメ?」
「だめです……もうすぐ敵軍が乗り込んでくるのに、殺されますよ?」
「それはキツい」
じゃあ荷物でも準備するかな、と腰を上げた瞬間、新聞の見出しの隅っこにひかえめな感じで記されていた記事が目に入ってきた。
[国を出よう~他国への旅行記~]
「!」
「? どうしたんですか?」
「ぼっちくん! 国から逃走しよう!」
早く準備しろっ、とぼっちは盛大に突っ込んだ。