5話
「じゃあ、話を付けてきます」
「うん、がんばって」
絶対無理だろ!? 16歳(見た目)のかわいい我が娘を、童貞のおっさん(26歳)と旅立たせるとか正気の思考回路じゃ無いわ! そんな世の中簡単じゃないことぐらい、26歳のおじさんでも知ってるんだからなっ! 勘違いスンナよっ!
というか、今俺がこの場で消えたほうが彼女のためになるだろうか。自宅に未練なんて無いはずだが、今ではゴキブ…………Gと共存していたあのアパートが懐かしい。
ついでにうじむしさんもいたな。台所に。
ま、そろそろ優も諦めて帰ってくるだろう。仕方ない。俺のかわいい未来の嫁だから、慰めてやろう。いや別にヘンな意味じゃなくてね?
「おーい! 山下さーん」
ほら、きっと今にも泣き出しそうな顔をして帰ってくるはずさ。そうして俺はこう言ってやるんだ。
「優。俺の胸は現在、君のえぐれた傷心ユアハートのためだけに準備万端だぜ?(キリッ)」
ひゅー、かっこいいー。
「もうすぐ許可取れそうなんで、こっち来てください」
「聞いてくれガール。俺の胸は現在、夏休みの外に出た回数ぐらい、ガラッガラだぜ?(キリッ?)」
「はあ? 何言ってるんですか。売れない新人芸人ぐらい寒くて気持ち悪いんですけど」
………………………………。
「何でいきなり無言になるんですか? ていうか早くいきますよ」
「待ってくれ」
「え……?」
そうだ。俺は何をやっている。10も年の離れた女の子に手を出そうとするなんて、人間失格だ。
「優。お前に言わなきゃいけないことができた」
「えっい、いきなりなんですか? 真面目な顔になって。あぁ、新しい一発芸でも思い付いたんですか(笑)」
コレは、言うならば自分への罰なんだ。たるんでいる心を引き締めるための儀式なんだッ……。
「見て欲しいモノがある」
「も、モノですか……? それってまさか……」
「あぁ! それはもちろんry、いやこれは俺への罰だ! この罰はきっと死刑よりも重く、死ぬわけでなくとも一生俺の体に害を及ぼすだろう!」
「えぇ!? 別にそんなのしなくていいですよ!」
「いや、絶対にやる! やるったらやる! 死んでもやってやるううううううう!」
「(ゴクリ)それは何なんですか!」
「もち、腹筋100000万回!」
「絶対無理です!」
「じゃあ、ネトゲ48時間耐久!」
「確かにきついですけど、それじゃ罰にならないですよ!」
「あ、そういえばさっきしなくてもいいって言ったよね?」
「男だったら、意見を曲げない心ぐらい持ち合わせていないんですか!」
「あいにくないね。うん、まったく」
「もう、いいです! 早く行きますよ! もう、ホント時間の無駄です!」
ですよね。






