2話
「こんにちは」
「!? お前は……ってえぇ!?」
俺の嫁(大嘘)もとい例の美少女がそこにいた! ナゼだ!?
「じゃあ、今から30分間の面会を認めます」
「え、ちょっと待って」
口を開いた瞬間にピッ、と小粋な音を立てたタイマーが俺の言葉をさえぎった。
「私は、そこの出入り口の扉で見張っておりますので」
警察のおっちゃんが扉のそばに行くと、ガラス張りの仕切りにある無数の穴(通話穴というらしい)から美少女が話しかけてきた。
「ごきげんよう。今日は、お話があって来ちゃいました」
「あ、はい」
状況を説明しよう。まず俺こと、山下大輝容疑者(26)は、盗撮やら何やら知らないが、ただ今警察に捕まっている。
本当のところ、執行猶予なる素晴らしい機能でひきこもり生活をENJOYできるはずだったんだ……。しかし、被害者の強い要望なる悪魔のいたずらで、めでたく執行猶予が削除されブタ箱生活を送ることを余儀なくされているらしい。人生終わってる。
「まず自己紹介をします……。私の名前は清水優です。あなたに伝えたいことがあるので来ました」
清水優……。嫁入りしたら山下優か。俺の嫁にぴったりだ。
「あ、僕は山下大輝と申します。ところで、いくら払えば結婚させてもらえますか?」
俺は、自己紹介と1番の疑問を問いかけてみる。
「きもっ……いや、良い名前ですね?」
今、きもいって言わなかったか?
「で、話ってなんですか」
「実はあなた、ここにいなくても良くなったんです」
いなくても良くなった……てことは!
「マジですか!? もしかして、俺、留置場出れるんですか!?」
「いや、えっと、出れるというか何というか……」
どういうことだ。これ以上刑が重くなることは無いはずだし、執行猶予が復活すると思ったんだが……。
「あなたには使命ができました」
「しめい?]
俺がそうつぶやくと、彼女は鞄からフリップのようなものを取り出した。
「ひとつ聞きます。あなたは美少女のお願いなら、例え異世界に行けといわれても従う自信、ありますか?」
「異世界?」
「クフっ……」
なんだ、なんだ。異世界とか厨二っぽいこと言うから、警察のおっちゃん爆笑してんじゃねぇか。
「ありますか?」
「はい?」
ちょっと何を言っているのか分からない。まあ、かわいいから許すんだけどね。
「はい、ですか……。それは肯定の判断と受け取って、よろしいんですね?」
「え、ちょっとまって」
もしかして、新手の詐欺? とか思ってると美少女がガタッと立ち上がった。
「じゃーん! 異世界片道切符、一名様ご案内でーす!」
「ひょ?」
美少女が飛び跳ねたかと思ったら、目の前が光り出し、そしてブラックアウトした。なにそれ怖い。
「ちょ、なんですかこれ!?」
最後に聞こえたのは、警察のおっちゃんの悲鳴だった。
「行きますよ! 私たちの町、私たちの世界へ!」
おかしいな……。さっきまで留置場にいたはずなんだが。
「ここ、どこ?」
とりあえず、俺が全裸のところから説明してもらおうか……。