別れてから
「……もう、大丈夫です……ごめんなさい……」
クルルが今村に追いついて捕縛された頃。アシュリー達はこれからの方針を決め、一致団結していた。
「おー。心配したぞー?」
「あまり無理はされないようにお願いしますね。」
「はい……それで……私は何をすればいいですか……?」
アシュリーはルナールにそう尋ねる。ルナールは告げた。
「お金は、それなりにあるけど……働くべきだなー……アシュリーちゃんはギルドでケガをした人を回復させるのを主な仕事にしたらいいんじゃないかー?」
「わかりました。そうします……」
すぐにアシュリーはその言葉に従ってギルドに移動した。ローナは慌ててそれを追う。
「ヤバいなー……ルナじゃ、この群治められない……」
一人残されたルナールはそう呟いて宿のテーブルに突っ伏した。
「回復魔術、1回5000Gになります。欠損箇所を修復する際には場合によって料金を変えさせて頂きます。蘇生は出来ません……」
「おうおう。見てくれんのか? じゃあこれを見てくれ。あんたを見てるとこんなに腫れちまった。5000たぁ言わねぇ。5万出す。治療してくれねぇか?」
「ギャハハハハ! そういうんだったら、俺も頼むぜ。」
その頃、アシュリーはギルドで絡まれていた。実力的には完勝、かすり傷一つつけさせることなく皆殺しにできるのだが、気組みで負けている彼女は首輪を握りしめて辺りを見渡すだけだ。
「んー? そういうプレイの方が良いのか?」
「あ、あの……私は、本当に治療をして欲しい人を……」
「あぁ!? 聞こえねーんだが!?」
「ですから……」
「迷惑です。散りなさい。」
毅然として間に入って来たのは少し遅れて宿を出たローナだ。アシュリーに絡んでいた男たちはローナの胸に視線を落とすと下卑た笑みを浮かべる。
「何だ? あんたが相手してくれんのか?」
「地獄に送って欲しいなら相手をしてさしあげますが?」
「はっ! こっちが天国に送ってやろうってのに、何て言い草だ。」
ローナと男たちが口論を始める。それを止めるのは誰もいない。
「えぇい……鬱陶しいですね。大旦那様がいらっしゃれば問答無用の殺気でこの下品な輩を黙らせて下さるのですが……」
その言葉にアシュリーの胸がじくじく痛む。助けを求めた視線が、無意識に彼を探していたことに気付かされたのだ。
「温厚な俺らでもキレるんだぞ? あぁん? 下品な胸しやがって……どんだけ揉まれてんだ?」
「触るな!」
胸を掴まれてローナは手を出した。強烈なビンタだ。男はそれを受けてよろめく。
「やりやがったなぁ!?」
「先に手を出したのはそっちじゃないかな?」
そんな折に割って入る男がいた。黒目黒髪、ただ両方とも赤味がかっている色で女性であればしばし見惚れてしまうほどの美男子だ。
「流石に手を出したら静観できないな。」
「何だテメェ……っ! その紋章は……」
ローナと口論していた男は美男子の腕の紋章を見て顔色を変える。
「異界の民かよ……!」
「魔王に警戒させないように目立たなくしてここまで来たんだけど……流石に目の前での凶行を止めないのは……ね。」
やるならやる。そう言う気構えで男たちを強く窘める目で見る美男子に男たちは気圧されて退いて行く。
「ありがとうございます。」
「いやいや。当然のことをしただけだよ。……さて、さっきの奴らが変なのを大勢で連れて来ると危ないから君たちを送らせてくれないかな?」
ローナはその申し出に対して難色を示す。そもそも、先程の男たち程度であればローナでもあしらえたのだが目の前の男ではそうは行かない。
だが、ローナの見立てではこの男を相手にしてもアシュリーとルナールが組めば勝てる。
(……それに、この世界にいる異界の民は基本的に大旦那様の敵ですし……いつか必ずこの男の前にも復讐に現れるはず……近くに居れば、もしかするとすぐに来るかもしれません……)
様々な打算の下でローナはその申し出を受け、アシュリーを連れて宿に戻ることにした。
「あぁ、申し遅れたね。俺はシラヌイ。魔王を倒すために旅をしてる。」
「……ローナと申します。」
「アシュリーです……」
宿に着いて、彼女たちは女性3人で部屋を借りているのをシラヌイに知られて同じ宿を取ることになったりしながらその日の会議で動くことを決めた。
「……! むー? うぅ!」
「……気が付いたか。状態は把握してるな?」
その頃の魔族領、かまくらの中で玉に手足を拘束されて猿轡を噛まされたクルルは今村を見上げて何度も頷く。それを見て今村は猿轡を外した。
「よー。体は大丈夫か?」
「なの! それで……なんでクルルはうごけないようにされてるなの?」
「暴れられたら迷惑だから。」
「うー……つめたいなの……」
簡易ベッドの上で寂しそうな顔になるクルルを見て今村は口を開く。
「で、帰れるのか?」
「なの? クルルのいばしょはごしゅじんさまのうしろなの。かえってきたばっかりなの。」
「……後ろから刺されるのは嫌なんだが……」
「だから、クルルがまもるなの!」
微妙に話がかみ合っていないので今村は直球で尋ねる。
「お前、俺を恨んで殺しに来たんじゃないの? 酷使しやがって絶対に殺してやるとかの執念でここに来たんだろ?」
「……おいていかれて、いやだったけど……そこまでおこってないなの。それより、かなしかったなの……」
「……? 隷属して束縛されたことへの怒りは?」
「……クルル、そんなのかんがえたことないなの……」
今村はクルルの顔をじっと見る。クルルはじっと見返し、そして照れる。
「なのぉ……」
「うわっ……また【傾城】の能力を……」
「ごしゅじんさまぁ……けーやく、もどしてなの……」
切なげに頼まれて今村は目を閉じ、首を傾げる。
「後悔すると思うけど?」
「しないとおもうなの。しても、そのときはそのときかんがえるなの。」
「んー……まぁ本人が望むなら別にいいんだけど……荷物持ちに戻ってくるとは変な奴だな……」
そう呟きつつ今村は【悪魔の御業】を用いてクルルを隷属化し、そして縛めを外す。その瞬間、クルルは今村目掛けて飛び込んできた。
「さびしかったなのぉぉおぉぉぉっ! うぇええぇぇぇん!」
「何だ、隷属化させても無効化するアイテムでもあってそれ持って殺しに来られたのかと思った。」
瞬時に生み出した【タスラム】と【癒玉】と【玉壁】を解除して今村は自分にしがみつくクルルの頭を撫でながらベッドに横になった。
そしてクルルを放り投げる。
「なのっ!?」
「疲れたから寝る。」
「……つめたいなの……」
扱いの雑さにしょんぼりしながらもクルルは追い出されなかったことに安堵してやることもないので見張りを始める。
「へくちっ……」
「……あぁ……? 何だ? 病気か?」
「……? クルルびょーきにはならないなの。」
「止めろよ……? 鳥インフルエンザとかだったら……魔人にも効くのか? いや、そもそも【癒玉】で治せるんじゃね……? 【毒玉】か……?」
考え始める今村だが狩りと実験明けに一昼夜クルルのことを見張っていた疲れからかしばらくすると浅い眠りに就き始めた。
イマムラ ヒトシ (17) 魔人 男
命力:4169(前回+1)
魔力:6287(前回+3)
攻撃力:6855(前回+2)
防御力:4214(前回+1)
素早さ:4974
魔法技術:6104(前回+2)
≪技能一覧≫
【特級技能】…【玉石】
【上級技能】…【言語翻訳】【大魔導術】【総合戦闘術】【王氣術】
【中級技能】…【気配察知】【悪魔の御業】【複魔眼】
【初級技能】…【奇術】【水棲】【総耐性】【調合】
≪称号一覧≫
【大魔導師】【真玉遣い】【美食の悪食王】【異界の者】【常闇の虐殺王】【超理者】【魔物統者】【破壊の奇行師】【魔闘氣武王】【英雄殺し】【薬師】
現在所持金…200万G




