表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/64

ローナ

「私は間違いなく王都周辺であなた方に拾われた死喰い烏です。」


 開口一番、目の前の美女はそう言った。それを尻目に今村たちは作戦会議をする。


「信じる人ー」

「はい。え、あれ……?」


 アシュリーが手を挙げてクルルとルナールは手を挙げない。難しそうな顔をして首を傾けているのでアシュリーも手を引っ込めた。


「アシュリーは何でこいつを死喰い烏だと?」

「気配が……似ていたので……でも、勘違いかも知れません……」

「合ってます! アシュリー様! 合ってますからもう少し強めに発言してください! そうじゃないと大旦那様に殺されます!」


 意見が弱いアシュリーを応援する自称死喰い烏を見て今村は呟く。


「パスは繋がってるらしいしな……んー……俺的には大きくなって背中に乗って空を飛んでほしかったんだが……」

「アシュリーちゃんがその辺で捕まえて来たのかもしれないぞー?」

「その線も考えられるんだよなぁ……俺を殺して自由になろうと……でも、それなら動機はここにいる全員にある……」


 推理を始めるような雰囲気になって来たが、この時点で冗談ではないとばかりに今村に3人が詰め寄る。


「ないなの! クルルがなんでごしゅじんさまを……」

「あり得ません! 私は、この生活が終わるなんて……考えたくも……」


 ルナールは興奮し過ぎて何て言っているのか分からない。それらを冷静に見据えつつ今村は顎に手を当てて考えるが、今回は置いておくことにして死喰い烏を見下ろす。


「さて、それでお前は何故、ここに人型で現れた?」

「……あの、幽霊さんたちが能力の限界を突破させたので、人型に……」

「何で人型?」

「え……それは……」

「何で、人型? 烏の大型になって俺を乗せて飛べれば俺は簡単に魔族領に行けたのに。」


 烏は考えた。人型になった理由は主であるアシュリーの心の拠り所として求められていたからだが、それを素直に行って主の主(今村)の不興を買ってはマズい。


 そして、考えた答えは……


 烏は唾を嚥下した。


「あ、アシュリー様と……ずっと、同じベッドで語り合いたかったので……」

「……成程。そうか……」

「え……」


 今村は変なことを考えた。アシュリーも変なことを考えた。ルナールも変なことを考えた。

 クルルは文字通り死喰い烏の状態では宿に入れないため、夜な夜な色んなことで悩んでいるらしいアシュリーの助けにはなれなかったことを何とかするためにこの姿になったと捉えた。


 烏は結果待ちでドキドキしている。


「そうか……アシュリー、そうだって……」

「え、あの……私……普通に男の方が……」

「死喰い烏が雄だったらよかったな……まぁ、アレだ。俺は困らないからいいか。アシュリーどうする? お前のペットだけど……」

「えっと……同じベッドは、ちょっと……」

「わかりました。では、取り敢えず戒めを解いてください。」


 今村はアシュリーの顔を見て頷かれたので解放する。すると、すぐさま彼女はアシュリーの背後に回った。


「ひぃぅっ! あ、あの……急に後ろに回るのは……」

「……何か?」

「……そこが定位置だったもんなー……そっかー……そういうつもりで……」


 怯えられて心外だと言う顔の烏。そんな彼女にアシュリーは困る。


「ピーちゃん……あの、ピーちゃんと呼ぶのは何か抵抗が……」

「そうですね……確かに、雛ではなくなって久しいのでもう少し格好いい名前が欲しかったところです。」

「タチ、か……」


 今村の呟きに烏は首を振る。


「もう少し女っぽい名前でお願いします。」

「……面倒臭いな。もう烏だしローナ。」


 ロシア語、ворона(ヴァローナ)から取った名前を適当に告げる今村。烏はそれを聞いて満足気に頷いた。


「ローナ……いいですね。候補にさせていただきます。」


 烏は頷いてアシュリーの方を見る。


「アシュリー様は何か……」

「ぽむぽわ……とか……」

「……い、一応……考えさせていただきます……」


 話題逸らしに烏はクルルにも尋ねてみる。結果は「ひじょーしょく」という大変不名誉な名前で、ルナールからは「カラス」と答えられた。


「大旦那様はやはり素晴らしいですね。ローナで、お願いします。」

「ポムポワ・ローナとかどう……?」


 微妙にぽむぽわと言う響きが気に入ったらしいアシュリーがそう提案するが、ローナは笑顔で返す。


「……ローナでお願いしますね!」


 ローナはすぐにそう言って話を終えた。名前を決めた後にローナのステータスを見る限りでは今村とアシュリーには危害を加えられないことを確認し、一行は外に出る。


 そこには多くの魔族たちがいた。


 魔族避けの結界が張られた町はすぐ近くにあり、ここに来るまで一切の魔族に出会わなかった今村たちはここまで魔族避けの結界があるものだと思っていたのだが、どうやら違ったようだ。


「おーおー……あの幽霊が結界張ってたのか?」


 そう呟いて今村は獰猛な笑みを浮かべ、先程貰ったばかりの丸薬を口に……


「なのー!」

「ご、ご主人様が、出る間もないですよ。そのお薬は、まだ……」

「急いで殲滅するぞー!」


 入れる前にクルル達が猛然と敵を殲滅しに飛び込んで行く。それを見てまだ力の制御が出来ない今村はそれを退かそうとして呟く。


「……いや、邪魔……」


 ローナを除く面々が戦闘に飛び込み全力で相手を排除していく姿を見つつ今村は手に持った丸薬を所在なさ気に弄んだ。


 その様子を見つつローナも今村に一言言って今村に近付く魔族を蹴散らしつつ振り返って告げる。


「……大旦那様のお力は必要ありません。後ろで待機していてください。」


 そしてローナは今村がいるすぐ近くに戻り、討ち漏らしを追いかけてきたクルルとルナールは今村の周囲の敵を全て滅ぼしてから大きな声で伝える。


「なのなの! ゆっくりしててほしいなの!」

「そーだぞー」


 クルルとルナールはそう言ってすぐに何かに責め立てられるように必死になって敵を殲滅しに戻る。そんな女性たちを見つつ今村は困った。


「んー……的がないと困るんだが……」

「もっと、使うべきところがあるはずです……そこまで、使わない方が……」

「そうかねぇ……つーか強くなったなお前ら……」


 ものの数分も経たずに100近かった魔族たちを全滅させて戻って来た面々を見て今村はそう呟く。


「ちがうなの。あいてがよわかったなの。」

「そーそー、だから、あるじは何もしなくていいぞー」

「ゴミ掃除に竜巻は要りませんから。」


 頑張って疲れて言葉を発す余裕のないアシュリー以外の言葉に今村は不満気だが、頑張っていたことは見て分かるので何も言えず一行は元の町へと戻って行った。




イマムラ ヒトシ (17) 魔人 男


 命力:4053

 魔力:6177

 攻撃力:6725

 防御力:4439

 素早さ:4761

 魔法技術:5985


 ≪技能一覧≫


  【特級技能】…【玉石】

 【上級技能】…【言語翻訳】【大魔導術】【総合戦闘術】【王氣術】

 【中級技能】…【気配察知】【悪魔の御業】【複魔眼】

 【初級技能】…【奇術】【水棲】【総耐性】【調合】


 ≪称号一覧≫

 【大魔導師】【真玉遣い】【美食の悪食王】【異界の者】【常闇の虐殺王】【超理者】【魔物統者】【破壊の奇行師】【魔闘氣武王】【英雄殺し】【薬師】


 現在所持金…1710万G



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ