脱出
アシュリーのアシストで追っ手を撒いてクルルとルナールがいる宿屋に移動してからギルドに足を運んだ今村はギルドの前にも騎士団がいることを発見して舌打ちをする。
「チッ……面倒なことになった。図書館に行きたかったが……仕方あるまい。」
「どうするんだー?」
「もうここを出て人間族と魔族の国境……紛争地帯に行く。」
「わかったなのー」
面倒事になりそうな予感しかなかったので今村はさっさとこの国から出て行くことに決めた。
「……門兵に止められるかもしれないから飛び越えるか。」
「なの!」
「おー……アシュリーちゃんは飛べそうかー?」
「あぁ、俺が抱えるからいいよ。」
軽く打ち合わせを済ませた今村たちは入って来た門とは違う西の門目指して移動を開始した。
「……おーおー。ご苦労さまなことで。」
門の前は兵が大勢いた。一部の魔術師たちと思われる一団がこちらに気付いて全体へ周知させる間に今村はアシュリーを抱えて呟く。
「ま、無駄だけど……99は殺してもいいんだが……そこまで敵と言う訳じゃないからなぁ……」
「……そうですね。あまり殺さないであげてください……」
「あいよ。」
跳躍。
あまりの速さと無重力感に担がれたアシュリーですら気付かない間に今村は城壁に上がっていた。
帝国兵たちも見失う中で、唯一動いて城壁の上にいる今村の前に貴人と思われる若い美女が飛翔して来た。
「お、お待ちください!」
「ぁん? おー飛んでる。凄いね。」
「私はサリーシャ・フォウ・アエリウス。帝国の第2王女で先見の姫と呼ばれている者です!」
「そう。」
反応が薄い上、どこか別の場所を見ている今村に姫は完全に興味を失われる前に急いで説明を続ける。
「帝国に大きな危機が訪れるのです。空を駆ける魔獣が……」
「お、おくれてごめんなさいなの……」
「おー来たか。じゃ、行こうか。……で、姫さん。」
「はい。」
緊張して今村の言葉を待つ姫。それに対して今村はルナールが飛んでくるのを見ながら告げる。
「……帝国と王国の境にある山脈。その帝国側にある山麓にいる赤髪の少年と銀髪の少年が君らのことを救う。」
「……え?」
「俺からの予言だ。どうせなら自国の英雄の方が良いだろ? では俺はこれにて去らば。」
今村はそう言い残してこの場から瞬く間に消える。残された面々はしばらく呆けた後にすぐに指令を下された。
「……あの方であれば容易に国難から逃れられるという予知は……たった今、あの方の予言によって塗り替えられました。すぐに赤髪の少年、アレクと銀髪の少年、クリスの両名を帝都へ!」
「「「「「はっ!!!」」」」」
迅速な指令を見た今村は【闇玉】を止めてスピードを軽く緩めて、アシュリーを降ろした。
「……あるじー……あの子たちに丸投げかー?」
「……多分あいつらでも出来るからな。根拠はさっきの姫さんの先見とやらの風景を【目玉】でハックして【鑑定】して魔力の流れとか色々視て出来るかなってノリで色々やってみたら適応できそうな【目玉】があったから……やってみて俺の目にも写してみた。」
「おぉ……」
凄すぎて引いた。
「……まぁ、あの人の眼を中継にしないと遠くの将来は見えないみたいだけどな。精々1分が限界。」
「……ルナたちのおめめも、ハックできるのかー?」
「……厳しいかな。魔力に関する項目が4桁あったら無理そう。」
今村の虚偽の申告に一行は安心しつつ荒野を歩き始める。
「……魔獣がいないな……これは困る。」
しばらく歩いて今村はそう言った。【璞】、干しネズミ肉は大量にあるのだが食事に彩りがないとテンションが下がるのだ。
踵歩きで前脛骨筋を鍛えつつ歩いているアシュリーが今村に遅れ始めたので少し待って歩きながら会議を開いた。
「……毎回野営の前に狩りをしよう。四方に散って。食べられそうな物を持って来いよ?」
「……わかったなの。」
一番食べられなさそうな物を持って来る人に言われると何だか微妙な反応になるが、それでも一番おいしい物を作る人何で何も言えずに頷く。
「何でわざわざ言ったんだー?」
「いや……お前ら俺でも食べられなさそうなやつ持ってきそうだから……虫とか俺は食わんぞ?」
「……虫、ですか?」
「動物にしてくれ。」
「はい……」
この前メガロスアラフーニャという巨大な蜘蛛に出会った時、キモ過ぎだからと言う理由で燃やし尽くして殺した後、燃え残った足を「蟹の味……毛蟹と思えば行けるかな……?」と言って非常に躊躇いながらも周囲のドン引きの中で食べた人の台詞とは思えなかったが、一応頷いておく。
そんな話をした後、しばらくしてアシュリーが警戒を促す。
「ロックワームです。しばらく歩いた先の土中で待ち構えています。」
「あるじー……あれ、美味しいぞ? でも、虫……」
「………………ルナール、虫食うの……?」
「……あるじだって、この前食べてたのに……」
何故引かれたのか分からないルナールは今村の信じられない物を見る目で結構傷付いた。
「いやー……虫は何かさぁ……足がいっぱいあってキモい……」
「蜘蛛だって食ってたのにかー? 海老なんてもっと足あったぞー?」
「海の幸なら行けるんだよ。イソギンチャクでも。でもなー……何か虫はキモい気がする……後、この前の蜘蛛はノーカン。燃え残って赤くなってた部分は完全に蟹と一致してたから。蜘蛛がドロップアイテムで美味しい蟹を落としたと考えただけだし。」
「ロックワームは足ないからいいんじゃないかー?」
「ミミズ肉だろ……嫌じゃん。」
「蛇は食うのになー……」
訳の分からない好き嫌いをされてルナールも困った。
「土臭いのが嫌なのかー?」
「虫の肉ってのが嫌。どうしてもなら食えるが……まだ【璞】あるし。」
「じゃあルナたちはロックワーム食うぞー?」
今村はうわーないわー的な目を向けて頷いた。それを受けてルナールは残りの面々の同調を得て狩りに行こうとする。
「美味いもんなー? クルルちゃん行こーぜー」
「……なの。クルルはー、ごしゅじんさまといっしょのごはんがいいなのー」
視線を合わせずに今村の方に行ったクルルに対してルナールはジト目を向けて尋ねる。
「食べたことあるだろー? 少なくとも、人化する前は食べてただろー?」
「し、しらないなのーごしゅじんさまといっしょのものたべてたなのー」
食べたことがあるという話をしたことがあるのに逃げたクルルのことは諦めてアシュリーの方を見た。彼女には奴隷時代があったはずだ。その時に酷い食事をしたことがあるから大丈夫だろうという目を向けて……逸らされた。
「私も……遠慮しておきます……」
「むー……二人とも露骨な媚をー……」
「まぁ、ルナールは変わった奴だからなー……ミミズ、食べるならどうぞ?」
「食べない!」
今村にそう言った後、ロックワームが出て来たとほぼ同時に瞬殺して憂さ晴らししたルナールはその日の夜に今村が食べないのか。なら仕方ないと【玉】に食われて行くロックワームを見送りながら【璞】を食べることになった。
イマムラ ヒトシ (17) 魔人 男
命力:3636(前回+1)
魔力:5661(前回+1)
攻撃力:6098(前回+1)
防御力:4026
素早さ:4141(前回+2)
魔法技術:5464(前回+1)
≪技能一覧≫
【特級技能】…【玉】
【上級技能】…【言語翻訳】【大魔導術】【総合戦闘術】【王氣術】
【中級技能】…【気配察知】【悪魔の御業】【複魔眼】
【初級技能】…【奇術】【水棲】【総耐性】【調合】
≪称号一覧≫
【大魔導師】【真玉遣い】【美食の悪食王】【異界の者】【闇夜の虐殺者】【超理者】【魔物統者】【破壊の奇行師】【魔闘氣武王】【英雄殺し】【薬師】
現在所持金…1710万G




