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合同訓練

「じゃあまず……武器は何が良い? オススメはスタッフスリング。個人的に似合いそうだなと思うのは薙刀。」

「で、では薙刀で……」

「……じゃあそれと簡単な体捌きね。」


 今村とアシュリーは帝都付近の林の中に来ていた。


「はい。じゃあまずは筋トレと座学。何をするにしても最低限の筋力は必要だし効率的に攻撃するには弱点とかを知る必要があるからね。」


 じゃあ何で林に来たのだろうか……と思ったアシュリーだが、口には出さずに今村の言う通りにしてみる。


「と言っても、まぁ基礎筋力は長旅で付いてるし、アシュリーは体も柔らかいから基礎はもう終わってるんだよね。で、今からはその使い方を教える。まずはこの木を突いて?」

「あの……薙刀は……」

「……あぁ、突くってのは殴るってことね。こんな感じで。」


 順手突き、ただの正拳突きで木に拳型のきれいな穴を開けた今村はアシュリーにさぁやって見てという目を向ける。


 アシュリーは目の前の光景に自分は出来ないだろうが、主人は怒らないだろうかなどの恐怖を覚えるが息を吸い込んで思いっきり打ち込む!


「やぁぁあぁぁぁっ!」

「ダメ。」


 その寸前に今村がその手を摑まえた。アシュリーは急に動けなくなったことに驚き、それを止めたのが今村だと言うことに気付いてまた驚いた。


「な……ど……申し訳ありません!」

「いや、そんな謝ることじゃないんだけどな……まぁ、基礎ぐらいしか人に教えられない程度の俺が言うのも何だが、一応……力を込め過ぎ。形が悪い。型から教えるか。」


 アシュリーの後ろに回って今村は右手でアシュリーの右腕を、左手で同じくアシュリーの左腕を持って動かす。


「尻尾が……」

「……が、頑張ります……」


 何かドキドキして来たアシュリー。今村は股間の下を通って巻き付いて来たアシュリーの尻尾が急に動いたらどうしようかな……と思いつつ腕を動かす。


「はい、右を出すときは左を引く。肩を出し過ぎない。腰から上の全ての力を連動させる。……これ口で言いながら指導すればいいか。あ、後初めて突きをする頃は掛け声と一緒にした方が良いよ。」


 今村のアドバイスに頷いてアシュリーはまずはその場で突きを開始する。


「にゃっ! にゃっ!」

「……いや、まぁ……人によって力の出る掛け声は違うだろうから……いいんだけどさ……何か……」

「へ、変ですか……?」

「いや、いいよ……ある意味ではな……」


 猫パンチを髣髴とさせるな……と思いつつそう言えば猫パンチはそれなりの威力があることを思い出して変な納得をした今村は取り敢えずアシュリーが疲れるまで放置して自分の体でいつものトレーニングとして魔力の循環をし、自在に操れるよう高速で巡らせる。


「……割ともつな……いや、もう限界か……?」

「はぁ……にゃっ! にゃっ! う……にゃっ!」


 アシュリーは手が動かなくなるまで頑張る。手が動かなくなっても無理矢理回復して頑張る。


「にゃふっ……にゃ……うぅ……」

「……泣きそうになってるが……放置してもいいのだろうか……つーか何か体が改造され始まってるような……」


 一先ずアシュリーの突きの練習を止めた今村はそう言えばこの練習の意味を教えていなかったことを思い出して告げておく。


「薙刀は……中距離の武器だから懐に入られた時にすぐに刀とか近距離用の戦闘が出来ないとマズイ……」


 自分で言っておいてじゃあ近距離用の武器にすればよかったかな……と思い始める今村。薙刀はその名が表す通り薙ぐことを主とする武器なので鍛えるべきは突きではないのだ。


「……んー……まぁいっか。刀にしよう。」

「す、すみません……才能が、なくて……」

「いやー? あると思うよー? 刀はこの場にないから突きから始めただけで、さて……どうしようかな……その辺の木で振り回させるか? ……もし真剣を買うとしたら……数打ちのが1本3万Gってところだったかな?」

「か、買えます! あ、でも……薙刀……」

「メインウェポンには金掛けた方が良いからなぁ……」


 基本的に全て自前の今村は武具に対する相場を知らないので取り敢えず買うかどうかは市場に行ってから考えることにした。


「じゃあ、一先ずその辺の木を拾って。」

「はい。これで大丈夫ですか……?」

「武器として認識した状態だと持てないから分からないが……持った感じで重いかどうか。」

「……もっと重いのを探してきた方が良いですか?」


 身の丈近い木の棒を持つアシュリーに今村は乾燥しているのだろうかと思いつつ降らせてみる。


「えーと、右利きでいいんだよな?」

「はい。」

「じゃあこう持って……で、正中線をなぞるように……」

「スミマセン……正中線って何ですか?」


 体の真ん中を通る線だと告げて今村は続ける。


「切っ先は円運動で……」

「……申し訳ありません……円運動は……」

「……説明するより動いてもらうか。」


 今村はそう言って剣道的な動きを教えるが、薙刀に対するサブということなので小太刀の動かし方も追加する。


「えーと……こっちは暗器として覚えさせられたから俺の記憶が微妙なんだよな……確か、体を半身にしてナイフ……じゃなくて小太刀の一直線上に体を隠してこんな感じ。」

「あ、はい……」


 構えをさせた後は打ち込みを始めさせる。


「あー……何つーか……これ、基本的に反動を利用する感じなんだが……後当てて行く感じだから……何だろ? 一回一回をそんなに力入れるもんじゃない……」

「えぇと……」

「……あーまどろっこしいな。じゃあセクハラじゃないぞ? 密着したり触れたりするが、いいな?」

「はい!」


 一応【音玉】で証言を確保しておいて抱え込むようにして動かす。今村が習った試合用ではない物での打撃部位への打ち込みと回し打ちなどの基本を全て何度か教えた後、今村はアシュリーから離れた。


「まぁこれはこんな感じ。覚えることとしては……割とあるのか? まぁそれの組み合わせで色々やる。」

「は、はい……魔力が尽きるまで動いて覚えたいと思います……」

「無茶はすんなよ? 見ておくけど……」


 アシュリーが鍛える間、今村もずっと鍛え始める。それを見て今村は他人事ながら引いた。


(……ずっと休みなく鍛えてるな……こりゃ凄い……)


 基本的に当人も毎日同じようなことをしているが、現に目の前で根性を入れて頑張っているアシュリーを見ると指導にも力を入れる気になった。


「ひぃぅ……にゃっ……にゃっ……」

「回し面打ち30本、用意始めぇ!」

「にゃっ!?」

「あぁ、何かつい。」


 太鼓を打つ感じで木を倒してしまった今村に驚いたアシュリーはすぐに気を取り直して木へ打ち込みを始める。


「ぁい、止めぇ! 逆! 用意始めぇ!」

「にゃっ! にゃっ!」


 何か場の雰囲気が楽しくなってきたので今村も若干テンションが上がって来始めた。


「……んー【金剛玉】。俺もやるかね。」


 四肢に重りを付けて今村は動き始める。


「まずは、久し振りに発勁して……抛兜拳黒虎掏心! 恚脚勢金鵁独り「あ、いたなのぉ! ごしゅじんさまぁぁあぁー!」あっ……」


 もの凄い勢いで走って来たクルルに今村の全身の勁力を用いた打ち上げが入り後ろに飛んで行く。


「……急に来たら危ないだろ……大丈夫か?」

「……顎が割れてます。すぐに治療しますね?」

「な、なの……すっごく、いたかったなの……」

「だろうな。」


 アシュリーはクルルの傷をすぐに治して再び打ち込みに戻る。今村は現れたクルルに何事か尋ねるために普通の状態に戻った。


「……久々にやると内筋がアレだな。まぁいいけど。で、何か用?」

「や、やどやさんにいったら、にもつがなくて……おいてかれたかとおもってしんぱいになっていっぱいはしってみつけたなの……」

「ふーん。そう。内功がなー……鍛え直しておくか。正直こんなもん使わなくても生きていけると思ってたから手を抜き過ぎた……」


 そう。で片付けられたクルルは余裕がなく【傾城の美幼女】のスキルを止めないまま今村にしがみついた。


「びっくりしたなのぉ……」

「……卑怯な……仕方ない。1分だけ構ってやる。ルナールと行動してたと思ってたからとはいえ、子どもを放置したことについては保護者的な責任が無きにしも非ずだからな。」


 クルルの柔らかい髪を撫でたりして少しの間宥めた後は夕暮れ時まで全員で訓練して帝都に戻った。


 そしてそこでは一人で待っていたルナールがいじけていた。




イマムラ ヒトシ (17) 魔人 男


 命力:3631(前回+2)

 魔力:5657(前回+1)

 攻撃力:6092(前回+4)

 防御力:4023(前回+3)

 素早さ:4137(前回+2)

 魔法技術:5459(前回+3)


 ≪技能一覧≫


  【特級技能】…【玉】

 【上級技能】…【言語翻訳】【大魔導術】【総合戦闘術】【王氣術】

 【中級技能】…【気配察知】【悪魔の御業】【複魔眼】

 【初級技能】…【奇術】【水棲】【総耐性】【調合】


 ≪称号一覧≫

 【大魔導師】【真玉遣い】【美食の悪食王】【異界の者】【闇夜の虐殺者】【超理者】【魔物統者】【破壊の奇行師】【魔闘氣武王】【英雄殺し】【薬師】


 現在所持金…1810万G

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