帝都入り
「ご主人様「イマムラな。」……イマムラ様。着きました。」
「うん。久々にベッドだな……」
「なのー」
今村たちは帝都に着いた。
「城塞都市と聞いていたが……まぁ、普通こんなもんか。」
5メートル程の高さの石造りの城壁を見て今村は微妙にがっかりする。しかしその長さは誇る物があるだろう。幾つかの関所を見つつ今村は冗談でクルルに告げる。
「面倒だし人気のない所から城壁飛び越えて入る?」
「クルル……そんなに飛べないなの……」
「冗談だ。中に人がいたら面倒だしな。処理が。」
比較的空いている場所で最後尾の人に話しかけつつ今村は情報を得て冒険者としての関所へ移動する。男が多い場所で今村たちは目立った。
「……み、見られてます、ね……」
「うん。……100人までは殺害可能だからな……チッ……」
帝都に来る途中に【目玉】から送られてきた情報を思い出して今村は舌打ちする。
勇者の一人が、死んだのだ。ハニートラップに掛かって、今代の【紙】の勇者は死んだ。
(硬質化した紙で作った鈍器……切れ味を付与した紙……あいつには髪を主とした拷問にかけてズタズタにしたかったんだけどな……)
死なれてしまっては仕方がないので、後でその亡骸を引き摺り出して死喰い烏がいた霊魂の森でアンデッド化させ、殺し直すことにしつつ今村は前に進んで来ていた。
「ってぇな。何ぶつかって来てんだよ……」
「え、今のルナが悪いのかー? お前らが急に下がってきてルナにぶつかったのに……」
勇者の死を思い出しつつイライラしている今村はルナの呑気な声と前に並んでいた男たちの苛ついた声で思考をこの場に戻した。
男たちはルナを見て笑っている。
「なぁ。」
「おぉ……見ろよ嬢ちゃん。傷が入っちまってる。どうしてくれるんだ?」
「えー……これ、元々なんじゃ……なーあるじーどう思うー?」
「……元々のだな。」
【鑑定】を使用して確認する今村。だが、男たちは今村の方を睨む。
「何適当なこと言ってんだ?」
「大体、お前には関係ないだろ。」
今村はイラッと来たので【金玉】を彼らの体の内部に減り込ませた後、離散させた。
「うわっ! びっくりしたなぁ……おっさんたちどうしたー?」
「ぁぎゃあああぁぁぁぁああぁぁぁっ!」
パニックに陥る男とショックで気絶した男。騒ぎを聞いて門番たちが真偽と情報を暴く水晶玉を持って走ってやって来た。
「どうしたんですか!?」
「何か、話しながら下がってウチのルナールにぶつかって、鎧に傷をつけたとか言いがかりをつけて来た人たちが股間を抑えて急に騒ぎ始めました。」
今村は事実を一部伏せて証言する。
「何ですかね? ウチのルナールが可愛過ぎてそこのロリコンは暴発でもしたんですか?」
「いや……それならズボンから漏れて来るのは透明な液体か白でしょ。血塗れじゃないですか……」
不謹慎ながら面白かったらしいので門兵は笑いを堪えつつ今村にそう返すが別の門兵の言葉に表情を改める。
「死、死んでます……」
「……君、心当たりは?」
「ないです。」
【玉】の力で水晶玉を改竄し、堂々と嘘をつく今村。水晶に何の反応もないので門兵はそれを事実と受け止めた。
「……何か鎧に傷もありましたし何かの討伐帰りで、魔獣にやられてた傷が屹立したせいで広がったとか?」
「いや、股間だけ傷つけられたと考えるのは……」
「獣姦してたのかもしれませんね……それで死に切っていなかった魔獣にやられたと考えるのが自然か……」
「……自然ですか?」
「じゃあどう考えるんですか? 前の人がいきなり誰にも気付かれないほどの速さで本人たちが気付かない程テクニカルに素早く服の中に手を滑り込ませて股間に触れて優しく愛撫した後にそれを抉ったと?」
「俺は無実だ! 大体、何で愛撫する必要がある!?」
前の人は否定した。今村は痛みのあまり何も言えない被害者たちを好き勝手に言うが、門兵たちは前の人の発言に一応水晶玉を確認するが、反応がないので説明できずに獣姦説に同意することにした。
「……まぁ、冒険者ですし……溜まってたのかもしれませんね……」
「多分、穴だったら何にでも突っ込んじゃうタイプだったんでしょうね……それで別説が出ました。木の穴に入れて行為に及んでいたら……」
「まぁ、もう結構です。その線で取り調べを進めたいと思います。ご協力ありがとうございました。」
「はい。……虫が迫って来てたのかもしれませんね。あの林には噛み切りムカデとか居ますし。」
「もう結構です。」
ルナールやクルルたちの視線を感じて今村の話が気恥ずかしくなってきた門兵はそう言って今村の下から離れ、周囲の人たちにも聞き込みをして何も得られないと分かると遺体とショックで気絶した男を連れて去って行った。
「……ルナールは大丈夫だったか?」
「うん。」
ちょっと楽しかったので今村は笑顔で帝都に入った。
帝都の中はそれなりの人がいた。
「うわー……人がいっぱいなのー」
「アシュリー。宿を。」
「はい。」
そこで今村は別件の用事を思い出した。
「あ、それと、奴隷商を。この二人を売りとばさねば……」
「…………は、い……」
帝都に入る前にはルナールの幻術により事実認識を曖昧にさせ、回復役の女に出し抜かれてキタミにいきなり行商中の奴隷商人に売り飛ばされたと思い込んだまま行動している二人を今村は売り飛ばすことにしている。
「どっちが近い?」
「…………奴隷商、です……」
不安になるので近付きたくないと思いつつアシュリーは今村を奴隷商へと案内する。古びてはいるが比較的大きな館に付くと獣人族の男が今村に声をかけて来る。
「いらっしゃいませ。本日はどのような……」
「この二人を売る。」
「……生来の奴隷ですか? それとも借金奴隷ですか? 犯罪奴隷ですか?」
「犯罪奴隷だ。殺人未遂及び殺人とその幇助に教唆、並びに器物損壊、俺からの借金も背負ってる。」
「なるほど……契約書は既にありますか?」
【悪魔の御業】で作り上げた契約書を奴隷商に見せると奴隷商は頷いた。
「成程……スキル持ちで、称号も……片方は処女ではないですが、見目も良い……では買い取り方法ですが、一括の現金で借金と実際の値段を合わせた500万Gか、分割で支払う700万Gどちらに……」
「一括だ。」
「畏まりました……」
商談が成立すると女騎士と魔法使いは未練がましい目で今村の方を見る。今村はそれに目もくれずに周囲を見ていた。
「……竜人か……アシュリー、荷物重く「だ、大丈夫です!」そうか。」
「ではこちら500万Gです。……他にもお売りいただける奴隷などございませんか?例えば、そちらの……」
奴隷商はアシュリーの方を見ながら言った。その視線を辿った今村と目が合うとアシュリーはそれだけで悲惨な末路を思い浮かべて涙目になりながら今村に懇願する。
「お願いします……! う、売らないでください……何でもします……! もっと頑張りますから……お願いします……!」
「……そうだねぇ……まぁ、本人がそう言うなら売りはしないでおくか……」
「ありがとうございます!」
アシュリーは心の底から安堵するとともに奴隷商から隠れるようにしてクルルとルナールの後ろへ移動した。
「な、なの……どうしちゃったなの?」
「売られたくない……嫌だ……もう、嫌……」
「おー泣くなー泣くなーだいじょーぶだぞー?」
「痛いのも、苦しいのも、嫌……」
アシュリーの言葉に奴隷商が笑顔で答える。
「大丈夫ですよ、お嬢さま。キルトシュベルト様の御子女に私共が酷いマネをするわけがありません。」
「えっ……? あ、いや。違います! わ、私は、ご主人様から離れようとなど微塵も思ってません! お願いです! 商人さん、止めてください!」
「……王国じゃないから大丈夫だぞ……? 後、色々つくから離れてほしいんだけどな……」
「いやぁ……」
泣いて話が出来ない状態になるアシュリー。仕方がないので【眠玉】で眠らせて商人に話を聞く。
「で、どうなの? 高いの?」
「……いや、それは勿論ですが……」
「そっかぁ……」
譫言で涙ながらに売られたくないと呟くアシュリーを見ると奴隷商は何とも言えない顔で今村に告げる。
「ですが……大恩ある、キルトシュベルト様の御令嬢がこれほどまでに望まれていないのに無理に、とは……私にはできないのですが……」
クルルとルナールは何も言わない。とばっちりで標的にされたら堪ったものではないからだ。
「じゃあ……取り敢えず、今日は止めとこう。【眠玉】解除。」
「う、う……」
「今のところは売らないから安心しろ。」
「はぁ……っ……も、もう、ここには用はないですか?」
「そうだなー……」
大きく息をついて早々にこの場から去りたいアシュリーと緊張して今村の言葉を待つクルルとルナール。
「うん。まぁ今日はもういいか。」
「では、宿へ行きましょう!」
クルルとルナールも息をついて今村を除く一行は足早に館から去った。
イマムラ ヒトシ (17) 魔人 男
命力:3616(前回+4)
魔力:5633(前回+3)
攻撃力:6082(前回+2)
防御力:3999(前回+3)
素早さ:4124(前回+2)
魔法技術:5446(前回+1)
≪技能一覧≫
【特級技能】…【玉】
【上級技能】…【言語翻訳】【大魔導術】【総合戦闘術】【王氣術】
【中級技能】…【気配察知】【悪魔の御業】【鑑定】
【初級技能】…【奇術】【水棲】【総耐性】【調合】
≪称号一覧≫
【大魔導師】【真玉遣い】【美食の悪食王】【異界の者】【闇夜の虐殺者】【超理者】【魔物統者】【破壊の奇行師】【魔闘氣武王】【英雄殺し】【薬師】
現在所持金…1836万G




