帝都近郊でのお話
心を壊した魔法使いと女騎士に自分が調べたことの裏を取りつつそれなりの待遇をして今村たちは帝都の近くを流れる川まで来ていた。
「おぉ、これも食えるのか……【鑑定】便利だなー」
「た、たべないほうがいいとおもうなの……」
「あ、これは薬草か……うんうん。薬物も生成しないと……」
「あるじー……それ、毒草だぞー? 多分分かって言ってるんだろうけど……」
今村は川付近の林で楽しげに採取している。【鑑定】を手に入れてからという物の、ずっとこの調子で荷物を持つのは奴隷たちだ。
その中でも、アシュリーは新しく入った他2名にその立場を奪われないように一生懸命頑張っている。
「むぅ、サソリは腹にミソがあるのか……ウミサソリの時【玉】に食わせたが食ってみればよかった……」
「ご主人様……一応、報告しますが……それ猛毒を持つ川サソリです……」
「美味しい? いや、情報的には蝦蛄に近いらしいんだけど……」
「……普通は逃げるので……わかりません……」
そんな今村は今、1メートル近いサソリを食べようとしていた。
「おー……森でこいつに遭ったら、ルナたち誰か喰われてたけど……今度はお前が食われるんだぞー」
「クルルほかのちっさいのたおしてくるのー」
自分たちより強いらしい捕食者を喰う今村。最近、魔人になった影響か、クルルと同じように消化液が凄いことになっているらしくなんでも食べれる上、何にも食べずとも大丈夫でどれだけ食べても大丈夫になっていた。
「あの……ご主人様「イマムラな。」……イマムラ様……」
「何だ?」
「イマムラ様が、元々いた世界と言うのは……その……イマムラ様と、同じようにしている方々が……多かったのですか……?」
そして、今村が色んなことを見つつ食べたり作ったりすることにハマっているのに対してクルルやルナール、アシュリーは今村の世界の話を聞くことにハマっていた。
「うーん……まぁ、大体は同じもんかな。」
アシュリーの言葉に今村は頷きつつサソリを殺してその大きな身からある程度食べてみる分だけ獲って後は【玉】に吸わせた。
「その……食事などは……」
「こことは比べ物にならない位美味いぞ。もう、天と地……いや、地核と大気圏外くらいの差があるな。」
食べている物が食べている物だからではないか……女騎士などはそう思ったが口には出さない。
「俺のいた国は美味しい物への欲求が半端ないからな。元いた世界でも稀に見るくらい。」
「そうですよね。」
納得された。今村はサソリを茹でながら頷いて説明する。
「お前ら俺に時々引いてるが……俺なんか目じゃない位凄いぞ? 俺は流石に虫は喰えないからなぁ……今サソリ食ったけど。これは見た目が蟹っぽいし。」
「え!?」
美味しいという情報が出たら水晶(本当は岩塩)すら喰らう今村よりも食欲に溢れる人々が多くいる国。アシュリーは想像して恐ろしくなった。
「大昔からなぁ……ウチの国は凄かった。他の国が世界の形や物質の本質ついて考えたり、戦争の方法について編纂したり、普遍的な善について考えてる中でウチの国は毒のある物でも硬くて食べられない物でもどうにかして食べられないか試行錯誤を繰り広げてたからな。」
「え、そ……そ、その世界って大丈夫ですか……?」
アシュリーの想像では今村と同じ人々が集まる国というのはその地その地を喰い散らかし、草木一本たりとも残さず土地を喰らいながら移動する遊牧国家のイメージなので、太古から国があるとなるとその世界は滅亡するのではないだろうか。と他人事ながら心配した。
それに対して今村は世界全体の状態について考える。
「ん? ……まぁ、微妙かな……人口が増えすぎてるし……主要国の保有する技術が軽く人類を滅ぼせるくらいだし……まぁ、何とかなると思うけど。」
「人口が増え……」
「俺の国は減ってるんだけどなぁ……」
アシュリーはそうだろうと思った。でなければ、世界が滅びてしまうとまで考えた。
「この前初めて減少して1億人「1億ですか!?」……お、おぉ……何だそんなに元気出して……実際にはもう少しいるぞ……?」
「世界は……世界は大丈夫なんですか……?」
「いや、流石に知らんけど……」
取り敢えず茹で上がったサソリの殻から身を外し、こそぎ落す。ミソも取り出して舐めると海老ミソとカニミソに苦みを足した変な味がした。
「……んーまぁ、いけるかな……味薄い気もするが……身は、蝦蛄より味薄い。正直微妙だな……」
「1、10、100、1000、10000……それより多いんですよね……? それで、イマムラ様より、食欲が凄いんですよね……?」
「少なくとも俺は食えないものでも、食べる人たちいるし……」
「はうわっ! ……も、もしかして……共食いするんですか……?」
今村はどんな目で見られているのだろうか……と思った。
「まぁ、昔は時々食ってたけど……今は食べないよ?」
「い、イマムラ様も、食べてました……?」
「食ってねぇだろうが……」
取り敢えず安堵するアシュリー。飢饉のときの話をしても仕方がないと今村は話題を変えた。
「昔の人たちは凄かったからなぁ……普通、渋くて食えた物じゃなかったら諦めるところをどうにかして食べようと灰汁を取り除くという技法を生み出し、寄生虫と言う概念がなかったころにも手早く喰いたいと言う理由からか、焼かずに刺身という細かく切る技法を編み出す……」
アシュリーは人間の話から外れていると思っていないので悪を取り除かれたら食べてたとか、変な考えをしている。
(そうか……ご主人様は、私に悪いことさせて食べたくないと思うようにさせてたのですね……)
そして勘違いが発生した。それにより食べられたくないアシュリーは悪いことも頑張ると胸を張って決める。
「普通に考えて【鑑定】もないのにアメフラシとかウニとかイソギンチャクとか喰おうと思わないだろ……それをやってのけるんだからなぁ……」
その間、今村は全然関係のないことを考えていた。
「なにしてたなのー?」
「あるじーお土産ー鹿ー」
「私が、息の根を止めます……」
「アシュリーどうした急に……」
何か頑張り始めたアシュリーを放置してルナールはお土産を渡したから代わりに質問というノリを装いつつ、割と真剣に意を決して今村の世界のことについて尋ねてくる。
「あるじの世界って、獣人とか、亜人とかと……基人は付き合うって、いうこともあるのは……本当です、か……?」
上目遣いで今村の方を見ながら言葉に痞えつつルナールがそう尋ねると殺害の手を止めてアシュリーも聞き耳を立て、クルルも真剣な顔になって今村を見た。
結婚制度については、既に知った。
肌を重ねた相手、その中でも子を成した相手とは基本的に一生を添い遂げるというルナールたちからすれば奇妙な制度だ。しかし、これをクリアできれば捨てられない。今村もそう言っている。そのため重要課題として訊いたのだ。
対する今村はいつものノリで喋っていると思っているので近くを通った蛇を見ながらペットにしたいが……食べようか……どうしようか……と思いつつ答える。
「まず、そういうのがいないからなぁ……」
「え……」
驚き、何も言えなくなるルナール。そんなことなどに気付かずに今村は蛇を見逃して代わりにそれを追いかけていた自分より巨大な不透明ながら反射光を放つ綺麗な甲羅を持つ亀を捕えた。
「で、だ……いないけど……どうだろ? 俺の知ってる範囲じゃ、かなりの奴らが食いつくが……うん。結婚しそうな奴多いな……」
その言葉に喜びの色を見せる3人。それに対して今村は首を引っ込めて防御態勢に入った亀をひっくり返して首を出すまでじっと見つつ続ける。
「でも、一般的にはどうだろうな……疑似獣姦とかいう異常性癖として……見做されるかもなっと!」
亀の顔が出て来た瞬間、一刀のもとに斬り落として素早くそれでも動き続ける亀の腹甲と背甲の間を切り裂いて腹甲を外して捨てる。
「あ、でもウチの国基本的に変態国家だし……行く奴多いんじゃないかな。」
結局どっちか分からないのでルナールは直球で訊いた。
「あるじは、どうなの?」
「さぁ? 相手次第じゃね?」
頭を落とされても動く亀に【血玉】で血抜きをしながら慎重に刀を通し、臭いので膀胱は絶対に傷つけないようにしながら臭くて美味しくない他の全ての内臓を放り出す。
「おぉ……まだ動くか、こん畜生が……」
「る、ルナは、どう?」
「あぁ、手伝ってくれるなら助かる。」
「そうじゃなくて……いや、手伝うけど…………あぁ、もう、いい……」
ルナールは今日の所は諦める。この後解体された亀は玉壁を半円状にした鍋でスープにされた。
甲羅は軽くて綺麗だったのでちょっと改造して皿にし、出来上がった料理を注いだ際、ルナールの皿の肉には変なのが入っていたが、基本的には出汁がよく出て美味しかった。
イマムラ ヒトシ (17) 魔人 男
命力:3612
魔力:5630(前回+6)
攻撃力:6080(前回+2)
防御力:3996(前回+5)
素早さ:4122
魔法技術:5445(前回+2)
≪技能一覧≫
【特級技能】…【玉】
【上級技能】…【言語翻訳】【大魔導術】【総合戦闘術】【王氣術】
【中級技能】…【気配察知】【悪魔の御業】【鑑定】
【初級技能】…【奇術】【水棲】【総耐性】【調合】
≪称号一覧≫
【大魔導師】【真玉遣い】【美食の悪食王】【異界の者】【闇夜の虐殺者】【超理者】【魔物統者】【破壊の奇行師】【魔闘氣武王】【英雄殺し】【薬師】
現在所持金…1340万G
【調合】…薬品などの生成に小補整
【美食の悪食王】…自身の味覚を操作可能。経口毒を無効化。消化液の強化及び消化器官の強化。飢餓・満腹への耐性大
【薬師】…調合に小補整




