お前ら…調子に乗るなよ…?
毒で苦しんでいる執事を毛布の中で縛ったままで俺はベッドの下で寝た。(意外と綺麗だったので快適と言えば快適)。
その夜。俺の部屋の扉が開く気配がして俺は目を覚ます。
何故そんなことができるかというと、
元々、男は強くないといけないとか訳の分からない理由で色んなところで鍛えられていたのだが、家の近所の公園で家に帰りたくなかった俺が色んな武術をしていたおっさんをぼけっと見て、色々あって何か合気に通じるらしいその意味不明な武術を簡単になら出来るようになった。
それを覚えてから虐待父親に勝てるようになると、父親が俺の寝こみを襲うようになってたから自然とできるようになったスキルだ。
……言ってて何か俺の人生ってなぁ……と思ったがまぁそれは置いといて、誰が入って来たのかを【玉】の能力で確認。
何か、酒の匂いを周囲にばら撒きながら近付いて来るそいつは服装からしてこの世界の人ではない、召喚された人物のようだ。
そいつは俺が寝ていると思ってか、ベッドの中にいる俺にこの世界の常識を教えてくれる先生をいきなり蹴りつけた。あってよかった身代わり人形。やっぱり身代わりって大事だよね?
「ゴハッ!」
「い~身分だよなぁテメェ……俺たちが戦争に行くってのに自分はのうのうと寝てあんな可愛い子とイチャイチャしてるだけでいいってよぉ…」
「なっ……何だ? 貴様! 何をする!」
「あぁ?」
縛ってあるから中身は見えないようにしてるが……開けられたら面倒だし、【偽玉】使っとくか。
「何をするって? ゴミの有効活用だよ! 戦闘で大変な俺らのストレス解消と言う名前のな!」
そう言ってそいつは極細の糸のようなものを出してすでに縛り上げられている執事君を毛布の上から更に縛り付けた。
「ビビって毛布に包まってるなら一生隠れてろ! この臆病者が!」
哀れな執事君はもう何も言うことが出来ないくらいに締め上げられて大変そうだ。流石に同情して来た。色々訊いたら教えてくれてるし……
……まぁ、こいつも俺を嵌めようとした奴だから正直心の底からの同情はしないが……一応。若干は同情中だ。
「トミオカ様。この様なゴミの部屋に何用ですか?」
っと、何故か王女襲来。びっくりした。……ん? こいつ……魔力めっちゃ少なくねぇか……?
あ、何か意識することで自覚したけど魔力的な何かが分かるようになった。
王女一人くらいならぶっ殺して逃げれそうじゃね? ……あ、でも俺の魔力探知の範囲狭いな……まだ、駄目だ。
少なくとも異世界から人間を大勢召還するってことはそれ相応の魔術師が居るってことだろうし……
「いいですか? 勇者様はこの様なゴミの下にわざわざ出向く必要はないのです。この下賤の輩は訓練場で明日から勇者様の実験台になるのですから。」
あ、こいつマジ殺す。何があってもだ。でも楽には殺さん。
「それがこのゴミの様なものが生きさせてもらえる唯一の価値です。ここで壊してしまえば……勿体ないでしょう?」
「ん……あぁ……」
何納得してやがる。
「それでは行きましょう? この様なものに与えられた部屋です。空気も汚いでしょう。すぐに出て、湯浴みいたしませんとね。」
王女、勇者は消えて行った。俺は【偽玉】を解いて放置された執事君の毛布の上からかけられた紐をほどいてやる。
「貴様ぁ……勇者様のご専用の肉人形にされる予定だったがもう許さん……直接的な攻撃は許されてないが……俺直々に殺してやる! ありがごぶっ!」
「寝てろタコ。」
まぁ、ムカつくな。こいつ。……ってかそんな取決めされてたんだな。え? マジでこの城滅していい?
ってかいいよね? 暗に城全体で肉体的以外の攻撃を加えて来るって言ってんだから。
あ、それで肉体的ダメージを与えようとしたこの執事は監視を切ってたのか。成程。じゃあ王女が来た時に隠れといて正解だったな。執事の顔で顔合わせると面倒なことになりそうだったし。
それはそれとして、寝ますか。
さぁお休みなさい。……勿論居心地とは別に寝心地が悪く、俺は夜が明ける前に目が覚めた。が、そこでとてもいいものを見た。
何か、ちっこいメイドさんがこっそり俺の部屋に侵入して形は悪いし、焦げてるけどしっかりとしたパンを置いてすぐに消えて行ったのだ。
ほっこりした。王女は殺そうと思ったけど、皆殺しはやめておきましょ。
そんなことを思いながらベッドの下から抜け出してパンを頂く。そう言えば昨日からネズミの肉しか食ってなかったし、お腹空いてたなぁ……執事くんにもネズミ肉あげたけど、そんなもの食えるかって叫んで睨まれたから黙って寝かせた。
それはそれとしてしばらく戻って来ないか警戒した後、ベッドの下から這い出てパンの下へ行く。
「うん。まぁちょっと苦いけど美味いといえば美味い。」
元の世界で食べたパンより味は劣るが、パーティ未参加のすきっ腹には問題なくいただけた。ちっこいメイドさんありがとう。
「食う?」
「死ね! そんな下賤な輩の食べる物! 死んでも食べぬわ!」
「じゃあ死ぬまで食うな。死んだら口の中に突っ込むから。」
執事とそんな会話をしているとぎゃあぎゃあ騒ぎ始めたのでまた物理的に寝かしつけてあげた。
っと……誰か来るな。
絨毯が敷いてある廊下を歩く音を聞き取れるとか……最早俺は何者と化してるんだよ。と自分に突っ込みを入れそうになったが、まぁ異世界補正という事で納得させ、ベッドの下に潜り込む。
そして【玉】の力で…………
――――――――――今度はこの世界に来てから今までで一番胸糞悪くなる映像を見ることになった。
それを見て俺はどうかしているとしか思えない歪んだ笑みを浮かべる。ある程度感情が行き過ぎると殺意と笑みで塗り替えられてしまうのだ。
衝動的な行動を抑えている内に感情は次第に憐れみと悲しみへと変わる。
下卑た笑みを浮かべた侍女と思われる女は俺の部屋に入って来るとベッドを確認して、寝息を確認。俺が強制的に寝かせておいたので規則的な寝息を立てている執事のことを確認すると、パンの皿の上に新しく持って来た皿を置いた。
先程の少女が、驚愕と怯えの混じったような顔で、胴体と永遠に泣き別れさせられているその残り部分を乗せた。その皿を。
そしてベッドの上の男を見て醜悪な笑みを浮かべるとこの部屋から去った。
「……この城……うん。とりあえずもう少し確認しておかないとな……犠牲者が出るくらいだ……心優しい人がまだ居るかもしれない…」
あぁ……うん。何があっても、復讐は、成し遂げよう。殺す。
今すぐの行動を促す感情を押し殺して俺は彼女の瞼を降ろすと【炎玉】を使って頭部だけとなった彼女を火葬した。
翌朝、【偽玉】を掛けられた執事は俺の代わりに訓練場に連れていかれ、そして兵士たちによってお手本と称す魔法によって燃やされたり折られたり、強制的な回復を掛けられたり、壮絶なことをされた。
だが、奴は俺を怨嗟の声で罵倒しながら(【黙玉】で黙らせているので聞こえないが、俺には聞こうと思えばどうやら聞こえるらしい。)勇者共の攻撃は元々の運動能力で避けたりしていた。
それが彼らの反感を買い、更に追い詰められる要因となるし、またそこにいた女性陣は俺が八つ当たりにあのメイドを殺したという嘘を聞いて容赦なく攻撃している。
……まぁ、「死ね! 役立たず!」とか「人でなしのゴミが!」とか「キモいんだよ!」とか「少なくとも千回は死ね!」とか言われながら何も言えないやつに対して攻撃している姿を見ると……
あいつ等も殺していいな。あそこにいるのは俺なんだし。
イマムラ ヒトシ (17) 人間 男
命力:50
魔力:40
攻撃力:32
防御力:55
素早さ:33
魔法技術:68
≪技能一覧≫
【特級技能】…【玉】
【上級技能】…【言語翻訳】
【中級技能】…【近接戦】【杖術】【槍術】【刀術】
【初級技能】…【剣術】
≪称号一覧≫
【異界の人】