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釣り

「ハッハッハ。いやーいい天気だ。釣り日和だね!」


 激闘を繰り広げた翌々日。回復と改造を終えた今村たちは前回の戦闘地点から数キロ北上した場所で釣りを行っていた。


 因みに釣りの為に作った桟橋は前日に回復するほど疲れることもしておらず、改造することもないクルルとルナールが教育上悪いものを見ないためにも今村が少し離れたところで作らせた。


「やめろ……やめてくれ……! お前には、人の心はないのか!?」

「ないよ。」


 そして餌は、キタミだ。両手足を斬り落として失血死されても困るので一応回復させたが少し長めに残した右足の毛細血管の一部はそのまま傷つけて体液を撒き、先端部は切り込みを入れて嗅ぎつけた肉食魚たちの餌としている。

 釣り針は大腿骨。きちんと返しまで作り上げ、今村が自画自賛したくなるほどの綺麗な仕上がりのものを肉を再生させることで餌の中に隠す。何度か失敗したので削り直しはしたが逸品が出来て釣りも捗りそうだ。


 そんな今村の釣り風景を隷属化させられたキタミのパーティは顔を背けることも許されず見せつけられて非難の声を上げているのだ。


「お前たちも、何か言ってやってくれ!」


 女騎士の悲痛な叫び声にアシュリーは顔を逸らし、クルルは無視して今村に楽しそうに釣りとはどうするのか尋ねつつ、ルナールは既に釣糸を垂らしている。


 そちらの餌は、斬り落としたキタミの手足で作り上げられたものだ。今村はキタミの元パーティの奴隷たちに無理矢理キタミの目の前でミンチを作らせて一緒に釣りをさせる予定だった。

 しかし現実として、教育上よろしくない光景を見せないように遠ざけていたクルルとルナールがすぐに桟橋を作り上げて興味津々で参加を希望してきたので仕方なく参加させている。


 アシュリーは仲間外れが嫌だったので恐々ながらもついて来た。


「ねぇ、今齧られてる? 釣り餌。」

「ぃ……ぁ……」


 今村はキタミにそう尋ねる。しかし、昨日の内に五月蠅くならないように拷問を受けたキタミはかすれた声でそう返すだけだ。

 因みにその拷問は結び目を付けた布を海水で無理矢理食道まで流し込み、それを無理矢理引き抜いて喉を破壊する水責めだった。


「あ、今でっけぇ何かいた……首長竜かな? あ、【鑑定】……ほうほう。ファンタジー産のやつか……」

「ぃだ……ぃ゛……や、べで……」

「お! 何か来たか? ……何だ小魚か……大物を狙いたいからいいや。んーで止めてほしいの?」


 基本的に澄んでいる海面を見つつ今村はそう言って水中にキタミの足を浸したままキタミを吊るしている重りであり浮きとして付けた玉を半回転させてこちらを向かせる。


 彼は泣きながら頼んでいた。


「おでがぃ……じば……ず……」


 消えそうな声で頼んでくるキタミに今村は少し考える素振りを見せた。


「そうだねー過去の王城で虐めをしてた時の自分を止められたら許してあげようかな。ほら、やってみろよ。多分、時を戻して頼んでも止めてくれないだろうけど。」

「ゅ……し、て……ぃぎぃっ!」


 小魚に肉を喰い千切られたらしくうるさくなったので顎付近まで海に浸してあげた。喋ると海水が口の中に入るのでキタミは黙って餌の役割を果たす。


「ご、ごしゅじんさまー……おっきいのが……」

「お、どれどれ?」


 キタミで釣りをしているとクルルが自分より大きな釣竿ごと海に引き摺り込まれそうになっていたのでキタミを吊るした釣竿をキタミの元パーティの奴隷に預け、クルルを後ろから支えつつ引き上げに掛かる。


 そして、水面に上がって来たのは2メートル級の硬そうな魚だった。


「これは……甲冑魚かな?」

「な、なのぉ……」


 頑張るクルル。ルナールも楽しそうなので釣竿を一時的にキタミの元パーティの奴隷に任せて寄ってくる。


「おぉー……ルナの方が食べられそう……」

「でもこんなのと対抗できるって凄いよなぁ……」


 そんなことを思いつつキタミから採取した腱で作った釣糸を見る。延々と回復することで生み出された一品だが、出自は子どもたちの精神によくないので伏せてある。


「あっ……噛み切られちゃったの……」

「やつら鋭い歯を持ってるからなぁ……流石にダメだったか。」

「クルルのはじめてのおさかな……」

「仕方ない。【金剛玉】」


 クルルが残念そうにしていたので今村はその魚を撲殺して水面に浮かせて玉を移動させて釣糸を引っ掻けるとクルルに釣り上げさせた。


「はい。クルルが初めて吊り上げた魚。」

「……何か違うくないかー?」

「つれたなのー!」


 釈然としないルナールだったが、クルルは喜んでいる様なのでいいことにして自分の釣りに移る。ルナールは自力で釣り上げたいようだ。


 クルルは一匹釣れたことでご満悦らしくそれを抱え上げてその下に入り込み、うんしょうんしょと引き摺りながら移動する。


「アシュリーちゃん。これ、やこうなの。」

「え、あ……うん……」


 手持無沙汰で今村の方を眺めていたアシュリーを誘ってクルルは焼き魚を作りに浜辺へ移動して行った。


「……さて、釣れないからもう殺すか……」


 そして今村の方は飽きたらしくキタミを引き上げて殺害宣言をする。それを見てキタミの女、その中でも王国の紋章を付けた女騎士が待ったをかける。


「待て! 貴様……もう、引き返せなくなるぞ……」

「どこにだよ……よし、じゃあゲームしようか。」


 今村の唐突な提案に釣りを頑張っているルナール以外がぽかんとする。


「俺を説得して納得させることができたら、キタミをいかす。相談はなし。さぁ始めようか。」


 歪んだ笑みで告げられた突然のゲーム。女騎士と魔法使いと判明した女性たちは乗るしかない。


「あ、あなたは……仮にも王国が召喚した勇者です。それに、キタミ様とは同郷の方ですよね。ですから……」

「ふっ……勇者1人の召喚のために同族で王国の民を1000人も殺す奴がよく言えるな? それとも貧民とか戦争で家を失ったやつは人非人か? まぁ、それについでに言うならこいつと俺は別世界だ。俺の元いた世界で魔術はない。俺の国は負けたし戦争の英雄とか言う奴らは東京裁判で重罪人として処刑されてる。」

「ちょ、え? あ、あるじ……今、ルナ割と聞き逃しちゃダメなのを聞いた気がするぞー?」


 釣りどころじゃないとルナールが話に参加し始める。それでついでに今村は思い出した。


「後、俺別に勇者じゃねぇし。勝手に呼んでおいて身勝手に殺された哀れな被害者だ。だから何してもいい。」

「そんなの身勝手です!」

「え、やっぱり異世界の人なのかー?」

「先に身勝手をしてきたのはお前らの方だけどな。後、ルナールの質問についてはそうだよ。」


 困惑しているルナールを落ち着かせるように今村は頭を撫でる。


「おールナすげー! 勇者のパーティーだー!」

「勇者じゃないけどな。」

「悪の王国を滅ぼすぞー!」

「そうだな。聖教国を滅ぼさないとな。」


 二人は頷く。潮風に乗った声は浜辺にいたアシュリー達にも聞こえ、今村の出自がバレたが、それに気付いても今村は何も言わない。


「で、お前らはネタ切れ?」

「き、キタミ様を治して王国に戻れば褒賞は間違いないだろう。お前の強さなら皆を見返すことが……」

「要らん。それに見返したいとか思わんなそれよりも皆殺しにしたい。お前ら話にもならんな……仕方ない。ゲームを変えよう。」


 海に吊るしていたキタミを桟橋の上に持ち上げ、今村はキタミの女二人に笑いかけてゲームを告げた。


「こいつを殺せ。苦しそうだろ? 助けてやれよ。因みに殺し損ねた方はこいつと同じ目に合わせようかなー」


 今村の発言に二人は短く声を上げ、息を吞んだ。しばしの逡巡に今村は悪魔の如き囁きを呟く。


「ほら……苦しそう。このまま、俺のストレスを発散させる道具として生きるよりも、お前らが楽にしてやった方が良いんじゃないか……? 俺は何をするか分からんからなぁ……見ろよ。泣いてるぞ……? 命を弄ばれて……お前らは、こんな状態でも自分のエゴに従って無理矢理生かさせる気なのか……?」


 このような現状に陥らせた張本人が笑いながらそう告げる。勿論、その囁きは【悪魔の御業】による弱い催眠付きの声だ。


「それに、お前らは優秀なんだろ……? この場では、逃げられない……生きるために、合理的な判断を下さないとな……王国、祖国の為に……」


 キタミの呻き声は聞こえないように今村が【黙玉】をかけておく。キタミの女たちは揺れていた。その揺れを見逃さずに今村はどちら側にも告げる。


「ほら、隣を見ろ……どちらかが、殺せば……どちらにせよこれは死ぬ……その上自分までこんな状態に……先に行動しないと……」


 女騎士と魔法使いの目が合う。そして何かを通じ合わせた後、女騎士は大きく息を吐いて今村に斬りかかった。


「そのような甘言に、屈する我らと……」


 凛々しく言い返す女騎士に対して魔法使いは走り出してキタミの上に馬乗りになると首にナイフを突き立てていた。


 女騎士は呆然自失という表情でそれを見る。


「何故……」


 魔法使いは力なく笑って女騎士を見上げた。


「…………無理よ……だって、前を見てみなさい…………?」

「……なっ…………!」


 斬りかかった剣が今村にぶつかって、折れていた。そして今村は無表情で女騎士を見下ろしている。


「……私も、攻撃できたわよ……でも、それで気付いたの。隷属させられているのに攻撃を許可している理由……」

「あぁ…………」

「私たちに、選択肢なんて…………なかったのよ……」


 泣き笑いをする魔法使い。それに対して今村は嗤っていた。


「さて、そこで質問です。」


 女騎士の腕を無造作に握り潰し、骨を拉げさせつつ今村は魔法使いに尋ねる。


「俺は怪我をしたくないので君とこいつの両方を弱く設定しておきました。そこで、剣の使い手である女騎士でさえ俺に傷一つつけることすらできなくなっています。では剣の使い手でもないあなたが、色々して弱っているとはいえ先程まで俺と同等の戦闘を出来ていたキタミくんに傷をつけられるでしょうか?」

「……あぁ…………」

「【黙玉】解除。」

「…………チ、ヨ……」

「あぁあぁぁああぁぁぁぁあぁっ!」

「答えはバカめ! 俺が敵を許すとかそんな温いことをすると思っていたのか! 釣りでしたー! でした。はい。両方とも殺し損ねたので罰ゲームね。」


 そう言い終えて今村は絶望した表情のキタミを見た後、満足してキタミの首を刎ねて殺した。




イマムラ ヒトシ (17) 魔人 男


 命力:3612(前回+400)

 魔力:5624(前回+300)

 攻撃力:6078(前回+400)

 防御力:3991(前回+300)

 素早さ:4122(前回+400)

 魔法技術:5443(前回+300)


 ≪技能一覧≫

 【特級技能】…【玉】

 【上級技能】…【言語翻訳】【大魔導術】【総合戦闘術】【王氣術】

 【中級技能】…【気配察知】【悪魔の御業】【鑑定】

 【初級技能】…【奇術】【水棲】【総耐性】


 ≪称号一覧≫

 【大魔導師】【真玉遣い】【悪食】【美食家】【異界の者】【闇夜の虐殺者】【超理者】【魔物統者】【破壊の奇行師】【魔闘氣武王】【英雄殺し】


 現在所持金…1340万G


【魔闘気武王】…武芸に関することへ補整極大 【玉】へ一部干渉可能。

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