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海辺の決戦

「よくも、よくもぉっ!」


(俺は、平和ボケしていたようだ……大事な人を失うまで気付かないなんて、俺は救いようのない馬鹿だ……!)


「【断空斬り】!」

「おらぁっ!」


 斬撃を受け、斬り返した今村はそれを囮として更に踏み込み、両手添えから片手に持ち替えて空いた手でキタミの肩へ鉄槌打ちを行い、骨に皹を入れ、血を噴出させる。そんな事にも目をくれず、キタミは今村へ反撃を行った。


「【こがらし】!」

「……【水球弾】!」


 キタミが反撃をするが、後ろの水が球になって後頭部を襲うこと、またそのために水が引き寄せられるために力が乗らず、今村に避けられる。


(足場が悪い。この男はそれも計算に入れて戦っているのだろう。この世界で元の世界以上の力を手に入れていた俺は完全に油断していた……!)


「そのせいで……!」


 感情を高ぶらせる度に今村はキタミへ少しずつ攻撃を入れ、そろそろ細かい傷まみれになったキタミを見て三日月のように口の端を歪めた。


「はぁ……! ここからは、お前の下らん話に付き合いながら、戦えるぞ。お前には……っと、もうその余裕は与えんがなぁっ! 【玉体】!」


 今村はここで切札を切った。キタミが様子の変化に気付いて攻撃から防御に転じる間に今村は受けを見せていた構えから切っ先を入れ替えてその手首を深く斬りつける。


「【断絶】!」


 更に追撃として放たれた先程まで斬撃として使っていた今村の技。だが、今回はまさに海を割るかのような一撃でキタミの武器に傷が入る。

 その僅かな驚きの間に今村は逆の手の二の腕を深めに斬りつけ、攻撃力を更に奪うと帰ってきた波の中に二人とも、一時的に飲まれる。


 しかし、【水棲】の称号を得ている今村には何の支障もない。【玉体】による強力な補正で水底だった地面を蹴りつけると海水にやられて一瞬だけ目を閉じて生じたキタミの隙に乗じ、腰の辺りを斬りつけた。

 それでも避けられ、腰も浅くしか斬れない。その上、斬られたことから反撃の場所を見出したキタミが彼の刀を振り降ろす。


「ぐっ……! 舐めるな!」

「舐めてねぇよ。だから、全力で嵌めてんだろうが……」


 残心をしていなければ肩の辺りを斬られていたことは間違いないとばかりに今着ていた衣の肩の部分が切れるのを感じつつ、猛攻の手は緩めない。


(……何か奥の手隠し持ってやがるな。急いで決めねぇと……)


 猛攻に対して明らかに先程までの精密な返しを欠く防御で様々な場所に傷を負いつつ力の流れを変えるキタミ。


 今村は更に熾烈な攻撃を以て決めに掛かる。


「我が、【武】の権能を以て、其を司る神々の御業をこの身に宿し、我が敵を撃ち滅ぼす……【武威神】よ、その力を我が身に宿し給え……!」

「だらぁっ!」

「うぐぁっ! ぶ、【武王降臨】……!」


 左腕を斬り飛ばし、その力を【玉】へ吸わせることに成功した今村だが、相手には赤い氣、神々しい何かが宿り、先程の仕返しとばかりに今村に猛攻を与え始めた。


「ちっ……【玉体】解除。」

「逃げるか!?」


 一時的な何かしらの身体向上の術と判断し、効果が切れるまで沖に逃げることにした今村。だが、キタミはそれを逃さず恐ろしい速さで斬りつける。


「ぅぐっ……」


 【琨瑚】の刀が折れ、強烈な一撃の振動が骨身に沁みる。刀が折れたことにより生じた隙にキタミが打ち込み、左手でリバーブロウを放ちつつ右手で【玉壁】を展開しながら盾にするも一枚では貫かれ、腕の表面を斬られる。

 今村は斬られた代わりに右手に【瑫】を召喚してそのまま扇打ちの要領で切り返すが受けられた。その感触からするに【琨瑚】よりも脆い【瑫】ではあまり打ち合う事は出来なさそうだ。


 今村は仕方ないとばかりに決断した。


「【金剛玉】……」


 両手を【玉】の力を用いて金剛石の球体で覆うと相手の刀を左手で真っ向から殴りつけて止め、右手で横から殴り、逸らす。


「貴様ぁ……ここまで、強いのに、どうして……」

「あ゛ぁ?」


 今村が話も聞こうとしなかったのはテメェらだろうが……と言い返そうとするが今はそれどころではないと戦闘スタイルを格闘に変えてキタミが退くまでは超近距離戦を行うことにした。


 だが、キタミが退くより早く、しばらくの打ち合いの後に相手は急に氣を弱め始めた。


「な、何で……早過ぎる……!」


 その様子を見て今村は三日月のように嗤い、【金剛玉】解除、【瑫】【玉体】と呟くと足を取られる場所であるとは思えない飛び込みを見せてすれ違いざまにキタミの残された右腕も斬り飛ばし、すれ違った後にすぐさま反転して後ろから足のアキレス腱へ足を救うような斬撃を入れ、動けないようにする。


「ハッハ……お前、よそ見したり注意力散漫なバカだから助かったわー……」


 【瑫】からエネルギーが渡り、強化されるのを感じ取りつつ今村は笑顔でキタミの髪を掴み、引き摺りながら陸へと移動する。


「ただでさえ、氷とか体温が下がるようなマネして、動きを鈍くしたのに氷系の技を使いまくり……まぁ、海で炎系の技を使おうとは思えないだろうが……おっと、妙な真似はするな。」

「あぐっ!」


 魔力が動いていたキタミを見て詠唱しないように今村はキタミの口内に【瑫】を捻じ込んで舌を縦に斬り、無駄な抵抗が出来ないように大腿筋へも【瑫】を刺しておく。


「他にも、血が抜ければ、体温は下がるだろ……その上、【魔操氣術】で、どんどん力は抜いてやってたのに、なまじ抵抗力があるから気付きもしない……小さな傷でも、いっぱいあれば力を漏らすには十分だぞ?」


 嘲るように笑いつつ、今村はキタミを引き摺って陸へ運ぶとその場に投げ捨ていた。


「はぁ、疲れた……あぁ、そんな目で見るな。安心しろ……勿論、このままで済ませるわけがないだろ? 流石に、本気はちょっと疲れたから……後で、地獄を見せてやる……」


 クルル、ルナール、アシュリーの順番でこの場に来るのを待ち、捕虜と化したキタミの陣営の人々へは今村の能力【悪魔の御業】今村の奴隷として改造した後キタミを解体しにかかる。


 その前に、今村はアシュリー達の視線がやたらと自分に向いていることに気が付いた。


「……何だ?」

「あの……ご主人様……黒髪になってますが……」

「あぁ、忘れてた……でも今は忙しいと言うか疲れてるからと言うか……死喰い烏が頑張ってる間くらい休ませてくれ。」


 緊急時の転送術などで飛ばされそうなものは全て死喰い烏が止めているので気を取り戻しても問題ないと判断した今村はそのまま捨て置き、キタミの腕が生えて来ないようにアシュリーに回復をさせる。

 アシュリーは様々な憶測を立てつつ、今村の命令に従いキタミの最低限の生命維持を行った後。今村の望むように改造していく。


「申し訳ありませんご主人様……まことに申し訳ありませんが、魔力が足りませんのでこれ以上は……」

「じゃあ、逃げられないように目を抉るか。」


 その言葉にキタミは激しく抵抗する。しかし、今村により腕の付け根から斬り直され、氣も殆どなく、魔力も【玉】により奪われた挙句詠唱もできない。

 足も傷つけられたキタミは抵抗しているつもりでもほとんど動くことも出来ずに今村から【目玉】を奪われた。


「うがぁあぁああぁぁぁぁあああぁぁぁっ!」

「アシュリー」

「……はい。」


 ぽっかりと空いた眼窩。その奥にあるグロテスクな風景からアシュリーは目を逸らしつつ止血は済ませる。


「……お、こいつ『鑑定眼』持ってんのか。へー。使えるわ。いい仕事してんなお前……っと、もう意識飛んだか……これじゃ面白くならないし、神経麻痺を軽く起こさせないとな……」


 あまりの激痛に耐えかね、絶叫した後ショックで気絶したキタミ。それに対して今村は新たな力を得たことに喜びつつ取り敢えずこの後は休憩にすることにした。




イマムラ ヒトシ (17) 魔人 男


 命力:3212(前回+712)

 魔力:5324(前回+324)

 攻撃力:5678(前回+678)

 防御力:3691(前回+691)

 素早さ:3722(前回+722)

 魔法技術:5143(前回+143)


 ≪技能一覧≫

 【特級技能】…【玉】

 【上級技能】…【言語翻訳】【大魔導術】【総合戦闘術】【王氣術】

 【中級技能】…【気配察知】【悪魔の御業】【鑑定】

 【初級技能】…【奇術】【水棲】【総耐性】


 ≪称号一覧≫

 【大魔導師】【真玉遣い】【悪食】【美食家】【異界の者】【闇夜の虐殺者】【超理者】【魔物統者】【破壊の奇行師】【魔闘氣武者】【英雄殺し】


 現在所持金…1340万G


【王氣術】…氣や魔素への干渉

【鑑定】…秘匿されていないデータを閲覧可能

【真玉遣い】…15個まで玉を使用可能

【魔闘氣武者】…全ての戦闘行為に大補整

【英雄殺し】…人型の生物に対する攻撃に大補整


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