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料理

「あがってこないの……」

「10分近くも……ご主人様……」

「魚だったのかなー?」


 今村は延々と潜っていた。その時間に陸では心配そうに海辺に近付く女の子たち。


「私は弱いので入ってもすぐに殺されそうですが……お二人は……?」

「……クルルのLvじゃみずのなかのてきにはかてないの……」

「ルナも無理。風が使えないし……」

「あ。」


 ようやくしばらく離れた所に今村の頭らしき黒点が出てきた。そしてそれはこちら側にどんどん近づいてくる。


「てゆーか、あるじあんな沖の方まで行ってたのかー……」

「なの……なんか、もってるの……」


 近付いて来ると今村が笑顔であることが分かる。その肩には昆布がたくさん掛かっており、ついでに何か大きなものが浮かんでいる。


「にゃっ!」

「……あしゅりーちゃん、どうかしたなの?」

「みゃ、みゃぐろ……!」


 瞳孔を細め、尻尾をピンと伸ばし、興奮しているらしいアシュリー。落ち着きなく浜辺をそわそわ動き始めた。


「ハッハッハ。いや~……近海の浅瀬なのにマグロいたよ。びっくり。まぁもう少し先の海底の方にプテリゴトゥスがいたことの方が驚きだがな。気候おかしいだろ。つーかやつら強過ぎ。固いしハサミが無駄に切れ味良いし。何なの?」


 地球だと切れ味あんまり良くないしそんなに早く動けなかったはずと思いつつ今村はその死骸の大部分を【玉】に吸わせつつハサミと足は多分蟹みたいなもんだろと適当に考え、食べるために持って帰って来ていた。


 それを見てルナールが固まる。


「あるじ……ウミサソリと戦ったの……?」

「あぁ、強かった。」

「つ、強かったって……そりゃ、そうだけど……あぁ、何て言ったらいいー?」

「にゃう?」


 アシュリーはマグロを目の前にして猫化している。マグロの周囲をうろうろして落ち着きがないアシュリーを見て今村は【瑫】でマグロの皮を切り裂き、背側の赤身を取り出すとその身を一刺しアシュリーに気前よく渡した。


「食っていいよ。」

「にゃうっ!」

「……いや、人語を喋れよ……」

「ありがとうございます……一生、付いて行きます……」

「大袈裟な……」


 適当に流したが、この世界の海は危険生物まみれで海産物は本当に近海のものを投網や釣りで適当に捕えるしかなく、マグロなどの比較的大きめの魚は海の国からの友好の印などで貰うしか入手できない。

 アシュリーは実家があったころにもほんの一切れ、しかも鮮度がよくないので煮屑のようになったもの。そんな物しか食べたことはなくても非常に印象に残っているマグロをアシュリーは自分の腕よりも大きく、太いものをほいっと渡されて夢中で飛びついた。


「神経締めしたんだが……まぁ、その手間も要らない位鮮度は良いんだよね。本来は寝かせて熟成した方が美味しいんだが……まぁ食べ比べだ。片面くらい全部食いなよ。そんなことより、クルル。お湯。」

「なの。」

「いいか? 重要な任務を与える。」

「なの!」


 クルルは張り切って今村を見上げた。


「今から俺が魔術で強制的に天日干しする昆布たちを煮ろ。」

「……なの。」


 若干テンションが下がった。だが、今村は真剣だ。


「いいか? 煮てる時に沸騰させたらお前を海に投げて釣りをする。沸騰しないように出来ればいい湯加減レベルで昆布を煮続けろ。」

「は、はいなの。」

「煮る時間はこっちでやる。温度はお前に任せた。」


 そう言いつつ今村は色々なことをしつつ、ルナールの風魔術などを駆使して自らの理想の状態に昆布を持って行く作業に自らの能力を惜しみなく費やす。


「あーアシュリー……塩味が足りないからって海水に浸すのは何か……醤油とかなんとか使っていいから……」

「にゃっ! は、はい!」


 見てて悲しくなることをするアシュリーに今村は突っ込みつつ、剥がした皮を焦がさず焼いてそれも料理にする。


「美味い……いい味だ。目玉もくり抜いて煮るかな。」

「……あるじは目玉本当に好きだなー……」

「誰が眼球愛好者オキュロフィリアだ……これは食うんだよ……」

「い! と、とうとう食べちゃうのかー? あ、あのねー? る、ルナのおめめは美味しくないぞー?」

「お前のは食わんよ……」


 頭を叩き切って頬肉や頭の肉、などの顔周りの肉を剥ぎ取った今村は取り敢えず下茹でに掛かる。


「うわ。油まみれだわ……いいねぇ……しかもその滋養のある水はスライムが飲んでそれを醤油にするという……素晴らしいねぇ……」


 そう言って茹で上がるまでに煮上がってしまった鯛を食べてマグロの切った部分が煮えるとそれをざっと流して【水球】を入れ替わりにぶつけ、ある程度熱を取って【水玉】の中に茹で上がった目玉部分などを放り込む。

 そして今村は目玉のど真ん中にある白い球体の骨を水で洗いつつ取り出して、自分が食べようとは思わない部分をスライムに投げる。


「水を作りつつ、塩を作り、その一部とミネラルやら動物の死骸で味噌と醤油を作りつつ料理を作る……完璧かよ……鯛は煮上がってしまったからもう昆布は間に合わんが……まぁ、いつでも使えるしいいや。」


 クルルに今の昆布をスライムの中に捨てさせて新たな昆布を入れて今村は成分の濃い物を作り、結晶化させる。


「……やっぱ魔術って便利だな……だが、足りんな。もっと取らねば……」

「いっぱいあるのですが……」


 【玉】になっていないのを見ておそらくこれは運搬しなければならないと思ったアシュリーがそう告げるが、今村の目を見てすぐに撤回した。


「あ、いえ……足りませんよね……」

「そうだな。1月分にもならん。」

「ごめんなさい……」


 取り敢えず謝っておくアシュリー。今村は何に謝っているのか分からないと無視して再び海に潜って行った。それを見送ってからしばらくしてクルルとルナールがアシュリーに声をかける。


「ごしゅじんさまにへんにさからわないほうがいいの。おこられると、すてられるの。アシュリーちゃんはそれでいいの?」

「嫌ですよっ! はー……はー……嫌に、決まってるじゃないですか……」

「じゃー何で文句言ったんだー? しょーじきアシュリーちゃんであるじの釣りが始まるかと思ったぞー?」


 身を抱いて震えるアシュリーにルナールが首を傾げつつそう尋ねると、アシュリーは正直に答えた。


「気配が、いつもは普通……いえ、むしろ優しい位なので……つい……豹変されるまで甘えたくなる雰囲気なんですよ……」

「……クルルはごしゅじんさまがいつもふつうとおもってるけどー……るなちゃんなんかちがうの?」

「……流石にあるじは人間の普通ではないと思うけどなー……ルナ基準じゃ、普通と思うかな? ルナ、人間嫌いだからよくわかんないのかな?」


 自分の感覚がおかしいのだろうかと思い始めるアシュリー。なまじ過酷な奴隷の前が家族に愛されていた貴族だったこと。その上、幼さゆえに教育も受けていなかったいたため、普通が分からなくなっているのだ。


「私が、おかしい……」

「誰だって縄張りを荒らされたら怒るぞー? ルナ、あるじは頭の中に歪な縄張り持ってんだと思うよー?」


 ルナールの説明が入る前に近くで水柱が上がる。そしてこちらに変な緑や赤の球体がもの凄い勢いで投げつけられてきた。


「……これ、さっきの……?」

「変なのだなー……乾かした方が良いのかな……」


 一応風の能力でキャッチしたらそれは先ほど乾燥させた昆布と思われる海草たちだった。続いて今村の声が【音玉】で届く。


「乾燥、よろしく。」


 一行は話を止めて仕事に取り掛かった。




イマムラ ヒトシ (17) 魔人 男


 命力:2500

 魔力:5000

 攻撃力:5000

 防御力:3000

 素早さ:3000

 魔法技術:5000


 ≪技能一覧≫

 【特級技能】…【玉】

 【上級技能】…【言語翻訳】【大魔導術】【総合戦闘術】

 【中級技能】…【気配察知】【魔操氣術】【悪魔の御業】

 【初級技能】…【奇術】【水棲】【総耐性】


 ≪称号一覧≫

 【大魔導師】【双玉遣い】【悪食】【美食家】【異界の者】【闇夜の虐殺者】【超理者】【魔物統者】【破壊の奇行師】【魔闘武者】


 現在所持金…1280万G


【美食家】…食材の見極めに小補整

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