おかしいよ?
「ごしゅ、イマムラさん。敵対意思のない人の気配が大量にあります。人里に近付いてきました。」
「じゃあ落ち着いた行動にするか……クルル、ルナールあんまり敵を殺すな。向こうから接近して来た奴だけ地味に殺せ。」
「ん。」
「はいなのー……? ごしゅじんさまーみたことないてきなの。」
クルルは前方に人型を取っており、頭部に当たる部分の中身が黄土色、胴体の人間で言うところの肝臓に当たる部分が黒色のスライムを発見して今村を呼んだ。
「生体反応二つ。頭部と胴体は別々のスライムのようです。何かを捕食して消化中ですかね……それにしても、人型のスライムって……」
アシュリーが目の前のヒューマノイドスライムとでも名付けられていそうな共生型スライムを解析している間にルナールは殺せばいいじゃんとばかりに風の刃で目の前の敵を切り裂いた。思いのほか強いスライムは体の一部だけを斬られるだけに留まり、こちらに敵意を示す。
そして仄かに潮の香のする風に乗って内容物の匂いがこちらに漂ってきた瞬間、今村の目の色が変わった。一足飛びに切り裂かれたスライムに向かって飛ぶと有無を言わさずに殺してスライムを解体し始める。
「ご、ご主人様?」
「主ー……流石に【悪食】でもそれは駄目だと思うぞー? そんなの食べたら頼まれたことないけどちゅーしたげないぞー?」
「や、やめたほうがいいとおもうの……」
女性陣の反応をガン無視して今村はヒューマノイドスライムの中に残存している黒いタールのような液体に【毒玉】を用いて毒がないかどうか確認した後舐めた。
そして今村は雄叫びを上げた。
「……キタァアァアァアァァァァッ!」
「ごしゅじんさまのあたまがおかしくなっちゃったの……」
「でだ、こっちは……期待していいよな? やっぱキタァァアァアアッ!」
クルルの悲しげな言葉も無視して今村は頭部に当たるスライムの黄土色のブツに黒い液体と同様の処理を施して一部舐め取ると再び叫んだ。
「……ご主人様は毒物に中てられてしまったようですけど…」
「あるじは仕方ないなーいくら【悪食】持ってるからってそんなの食べて……度を越して変だぞー?」
「なんとかなるまでかんびょーするべきなの。」
嬉々としてスライムの一部やら黒い液体やら何やらかんやらを採取している今村を見て悲しげにこれからのことを相談する一行。そんな女性陣をガン無視して今村は狂喜している。
「ぅえ……へんにくさったモノのにおいなの……」
「だよなー。……でも少なくともあるじってルナたちより大分味覚凄いよなー基本味付け濃いけど細かいのも知ってるし。……何かすっごい嬉しそうだけどどうしたのかなー?」
魔獣組がそんなことを言っている間にも今村はテンションを上げて周囲を睥睨し大声で宣言した。
「使役するぞ! 是が非でも! 魔核が球体だから行けるだろ!」
今村のテンションの向上と共に【破壊の奇行子】のスキルが発動して今村の週が歪むほどの禍々しい魔力が放出される。途端に辺りからもの凄い勢いで全ての生物が逃げようとし始めた。
それを見て今村は狂気染みた笑みを浮かべる。
「? 待てよ。オイ……オイオイ、ぶち殺すぞジャリどもがぁっ! さっさと出て来い腐れがぁぁあぁあっ!」
「怖いな~あるじ怖っ!」
「まおうみたいなの……」
「ど、毒にやられてるのかもしれませんから、止めませんか?」
「「むり(なの)!」」
魔力を乗せて咆哮し、周囲にいた弱い生物たちは昏倒した。そして今村はその中に阻まれて逃げ遅れたヒューマノイドスライム(仮)が居るのを見つけて歪んだ笑みを浮かべて抵抗を無理矢理捻じ伏せて捕まえた。
「『我このモノと共に歩む道を定め、我を主とし、彼の者を従者として共に歩むためにここに誓の文を作らん。』【使役の誓】」
本来は同意が要るそれを今村は魔力に物を言わせて強引に繋ぐと満足気に頷いた。
「フハハハハハ! これでこの世界でも醤油が使える! 味噌も使える! 何て便利な生物なんだ! 畜生! 何で米だけねぇんだよこの腐れがぁっ! 米麹なしでどうやって作ってんだこれ……」
「……躁鬱作用のある毒だったみたいですね。」
「落ち込んでる間なら抑え込めそうだなー?」
「い、いくなら……いまなの。」
クルルとルナが意を決して今村の方へと腰が引けながらも向かう。それを今村は見ながら首を傾げ、そして頷いた。
「食いたいの?」
「ごしゅじんさま……お、おちつくのー」
「無理だぁあぁぁぁああっ!」
今村は急激にテンションを上げて飛び掛かって来たクルルを捕まえて抱え上げて回り出した。ルナールは遠くから注意する。
「変に触発したら駄目だろークルルちゃんー」
「なぁぁああぁのぉぉおぉおっ! あ、でもなんかきもちいいの……ごしゅじんさまのにおいなのー……」
「……ルナも~!」
注意するようにしていたルナールだが楽しそうだったのでその輪の中に混ざりに行きアシュリーはまた置いて行かれた。だが、今度こそはと前に出る。
「あ、あの、私も……」
「……何かこれ変な作用あるな。」
アシュリーがルナとクルルを両手で抱えながら回っているところに近付いてそう言ったのとほぼ同時に今村は素に返った。狙っているのではないかと思うタイミングにアシュリーは落胆する。
「……何だろう? ……あ、何か【悪食】と別に【耐性】が出来て……る?」
今村は体が何だかおかしいことに気付いて自分のステータスを見た。
イマムラ ヒトシ (17) 魔人 男
命力:2500
魔力:5000
攻撃力:5000
防御力:3000
素早さ:3000
魔法技術:5000
≪技能一覧≫
【特級技能】…【玉】
【上級技能】…【言語翻訳】【大魔導術】【総合戦闘術】
【中級技能】…【気配察知】【魔操氣術】【悪魔の御業】
【初級技能】…【奇術】【総耐性】
≪称号一覧≫
【大魔導師】【双玉遣い】【悪食】【異界の者】【闇夜の虐殺者】【超理者】【魔物統者】【破壊の奇行師】【魔闘武者】
現在所持金…1290万G
ちょっと本来変わるべきではないような所が変わっている気がした。だがまぁ気にしないことにする。
「…………え、……え?」
「……あるじ……とうとう人間、辞めちゃったなー……」
「なの……」
だが周囲はそうはいかない。今村が情報開示していないので【称号】は見えないが、まず、種族がおかしい。次に能力値がおかしい。最後に彼女たちに特級は見えていないのだがそれでも、どう見ても【技能】がおかしい。
「【大魔導術】だけでも人外ですのに【総合戦闘術】までついて……もう、魔王並みなんじゃ……というより、ご主人様は何なんですかね? ステータスの伸びが異常ですよ……まさか、【異界の君】……?」
「【魔操氣術】はルナたちの一族の族長がむかーしむかしのとってもむかしに使えたっていってた……もうなくなった術って……」
ひそひそ話すアシュリーとルナール。そんな二人を気にすることなくクルルは今村に尋ねる。
「これってなになのー?」
「【悪魔の御業】か……何か色々できる技の詰め合わせ的な?」
今村には【使役】やら【契約】やら【威圧】やら【詐術】など色々入ったお得なセットみたいなものと言う認識が入っていた。
「まぁ、いいよ。今日は色々嬉しい日だな~」
「ごしゅじんさまがいいならクルルもいいのー♪」
クルルは同意したがアシュリーとルナールは納得せずに今村を見たが諦めて今村の移動に従った。
「……ルナはあるじが異界の民だとしても驚かないぞー?」
「ですけど、どう見ても全ての属性魔法に武術も使ってますし、武器も多種多様使ってますよね……【異界の君】の特徴である何らかの特化と制約が見当たらないですよ? 強いて言うのであれば全般的に特化してますけど……」
「そうだよなー……」
クルルが今村と一緒でご機嫌状態の後ろでアシュリーとルナールは議論を交わす。今村は最悪の想定もしておきながら黙々と、時にクルルと話しつつ歩を進める。
そして、潮の香が強くなったところでアシュリーの猫耳がぴくぴくし、今村も流石にその光景を見て呟いた。
「……お、海だ。……んじゃ漁村か?」
「美味しそうな、匂いですね?」
「……買えと。いいけど。」
クルルではなくアシュリーが一番最初に食べ物について言ってきたのは今村にとって意外だったが今村はアシュリーから路銀を返してもらい市の場へと向かって行った。
イマムラ ヒトシ (17) 魔人 男
命力:2500(前回+1090)
魔力:5000(前回+1800)
攻撃力:5000(前回+3216)
防御力:3000(前回+1415)
素早さ:3000(前回+1688)
魔法技術:5000(前回+1787)
≪技能一覧≫
【特級技能】…【玉】
【上級技能】…【言語翻訳】【大魔導術】【総合戦闘術】
【中級技能】…【気配察知】【魔操氣術】【悪魔の御業】
【初級技能】…【奇術】【総耐性】
≪称号一覧≫
【大魔導師】【双玉遣い】【悪食】【異界の者】【闇夜の虐殺者】【超理者】【魔物統者】【破壊の奇行師】【魔闘武者】
現在所持金…1290万G
【異界の者】……成長に中補正
【闇夜の虐殺者】……存在、気配などに関することへの介入が可能
【超理者】……能力値を最強種のデフォルトの設定に変更
【魔物統者】……対象属性問わず配下に置くことが可能
【破壊の奇行師】……テンションにより能力、及び能力値が変更
【魔闘武者】……戦闘時の行動補正大、武芸習得補正、経験増大




