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アレクとクリス 前編

「……まぁ。一応想定内……」

「ん……あ、ごしゅじんさま……おきたなの……?」


 昨日、ひたすら怯えていたクルルにようやく落ち着いたので何で怯えているのか訊いて、屑の巣窟王国に独りで残されること・・・・・・・・・が怖かったと聞いてじゃあそれはしないと安堵させてからのクルルの引っ付きようが凄かった。


 なので、今日同じベッドに入っているのもまぁ……うん。仕方ない。


 クルルからしてみれば独りで残されることに対しての恐怖だったのだが、今村は嫌悪感から逃れる術を知らないことから来るものだと理解している。


 これは今村のセンサーが少しずれていることから生じたものだ。


「……んぁあっ! ……ふぅ。」


 クルルが元気になって今村にじゃれついている音でルナールも伸びをしながら若干変な声を出して起きた。ついでにクルルが寝る予定だったベッドで寝ていたアシュリーも起きる。


「……アレはいっか。」


 もう一つの部屋に捨て置いているヤマナのことは知らないことにして今村たちは起きたことを知らせると同時に朝食を食べるために下に降りた。











「お! 兄ちゃん起きましたですか!」

「……もうちょっと言葉をさぁ……お早うございますお客様。昨晩は良く眠られましたか? まで言えとは言わないからさ……」


 赤毛の少年アレクことアレックスと銀髪の少年クリスフォードことクリスは朝から元気に漫才をしていた。


「ごしゅじんさま! ごはんなの!」

「はいはい。」

「ごはんなーのー!」


 クルルは今まで寂しかった分を埋めるかのように今村にべったりだ。今村は歩き辛いのでクルルを軽く膝で蹴りながら進む。


「……超テンション高い……あー死にたい……力を盗られる気分……」

「え、何で?」

「気にしない……年取るとね、若者を見るとこうなるんよ……」


 まだ20歳にもなっていない今村はそう言いながら席に着いた。その膝にクルルは何のためらいもなく座る。


「……どけ。」

「う……はいなの……」


 今村は【操氣術】である程度殺気を操作できるようになっているのでクルルに殺気を捻じ込み退けた。

 だが、クルルは捨てられないと言われているので暗くなる事はない。そんな中アシュリーは一応昨晩の話し合いでヤマナなどは特殊例で自分は酷い事をされないと理解していても置いて行かれている感に苛まれた。


「……何かすげぇ……俺も冒険者になれば……」

「アレは……何か別要素じゃ……」


 一気に華やかになっているいつもの食卓でアレクはそう呟きクリスは突っ込みを入れるが羨ましそうに見ている。


「……冒険者なんて夢見てないでちゃんと仕事覚えて欲しいんだけどね! すみませんお客さん。ご迷惑をおかけしているようで……もう一人のお客さんは……」

「いえいえ……もう一人は寝てるんで放っておいていいですよ。」

「お! おばさん何か今日は豪華だね!」


 アレクは女将が持って来た今村たちの食事を見て歓声を上げる。その残りが自分たちの食事になるので豪華であれば嬉しいのだ。

 そんなアレクに対して女将は困り2割、呆れ2割、怒り6割の顔をしてアレクを見て言った。


「あんたらが迷惑かけてるからだよ! 全く……今日の分の水汲みは?」

「済んだ! 薪割りも、庭の掃除も畑の整理もやった! 勿論、自分家の分もやったし、母ちゃんにももう行って来ていいって言われてる!」


 アレクは元気よく答え、クリスが大人しめに女将に発言する。


「本当に終わらせてるから。今日は4時に起きて頑張ったんだ。」

「……はぁ。お客さん。本当にすみませんねぇ……」

「まぁそこまで気にしないでいいですよ。」


 軽く流しながら少しは気にして食事のランクを頼みながら一応心中でいただきますと唱え手を付ける。それに続いてルナール。クルルも食べ始め、アシュリーも食べる。


「じゃあ、とりあえず食休み入れて20分後にそれぞれ見るよ。」


 今村は一応武芸らしきものはしたことがあるが、おそらく今から見せる動きはチートで塗り固められており褒められたものではないけどな……と思いながらアレク達にそう言った。














「さて、準備はいいか?」

「いいぜ!」

「んじゃ、来い。」


 一応、年長者として今村はアレックスの攻撃を待つ。すると、一瞬のうちにアレックスは木剣に炎を灯した。


「【炎刃剣】!「タスラム」うわっ!」


 今村は木剣を掲げているアレックスの眼前に【タスラム】を飛ばして注意した。


「止まって詠唱は駄目。やるなら動きながらとか……準備はいいか訊いたときに済ませとかないと。それじゃ的だ。」

「お、おぉ……兄ちゃん凄いな……」

「後、驚きを顔に出すのもあんまりよくない。君は詭道に向いてなさそうだし、それで驚いたら相手が弱くてもイケると勘違いして通常以上の力を発揮するから。」


 今村の言葉によくわかっていないアレックスときちんと分かって頷いているクリスフィード。今村は続行を宣言する。


「じゃ。今度は剣を見よっか。おいで。」


 今村は【玉】の縛りでそれ以外の武器を持てない。【玉剣】を【玉帯】を付けたままで鞘に入れた状態にして、【偽玉】を使う事で木剣に見せている。


 木剣より遥かに重いが、ステータス的には特に問題ないので気にならない。アレックスに合わせて片手で持つ。


「いっくぜぇっ!」


 今村はアレックスの攻撃を受けながら掛り稽古を思い出していた。10歳位の時に高位の段持ちのおっさんに突きを貰って、それが防具の隙間を縫ってのどに減り込み吐いた嫌な思い出だ。


「……そんな酷い事はしないけどね。」


 小学生は突きは禁止なのだが、おっさんは力こそ加減はしていた物の基本的に容赦なかった。今村はあのおっさんには殺意を覚えたモノだが目の前の子どもに自分はそんなことはしない。


「っと。」

「うわっ!」

「持ち方が甘いよ。多分筋力的に片手でも問題ないんだろうけど技量が伴ってない。木剣しか持ってないんだし両手持ちにすれば……」


 今村はそう言いながらアレックスに合わせていた片手持ちからいつもの戦闘時にしている両手持ちに戻す。


「……とっとっと。危ない。スイッチ入る所だった……しっかり持ってろよ?」


 戦いを続けていたアレックスが目を輝かせながらその動きを見逃さない様に剣先を見て力を込める。


「ぇんっ!」

「すっげぇ……あっぐ! いってぇっ!」


 アレックスが気付いたときには剣が弾かれ、真正面ががら空きになったのを自覚した。それと同時に腕から衝撃が走る。


「ふぅ。これは下げ切ったら相手にチャンスをあげるようなものだから返すのも覚える必要があるけどね。」


 アシュリーに彼の腕を回復するように言いながら今村はアレックスにそう言った。一応、今の今村の剣のベースは剣道……片刃をベースとした物なのであまり合わないかもしれないが一応気付いたことを言っていく。


 それが終わると銀髪の少年クリストファーの方だ。


「つ、次、僕ですよね。お願いします!」

「えーと、得物は?」

「槍です! あ、でも……」

「槍も出来るよ。」


 杖術と素槍、それと形意拳の槍法なら扱ったことがあるので子どもに教える触りくらいなら教えることが出来る。


 ただ、諸事情あって正当な物じゃないものを習う事で色々混ざったのでどれがどうなのかは忘れたが……


「じゃ、じゃあ! お願いします!」

「……こっちはあんまり大したことないが……」


 そう言えば【武芸者】の称号の効果が出て来ていなかったなぁ……と思いながら【玉鉾】に【偽玉】をかけて構える。


 その様子を見てこの人の本職って魔導師だよな……とクリスフィードは目をキラキラさせながら今村を見た。


 今村の思考はまた若干昔にトリップする。


「……あ、やっぱこれは実戦じゃ駄目だ。やるから見てて。」


 槍術の師範に槍と言われてまず何をする? と言われて突きと答えたら違う! と槍で薙ぎ払われた記憶が蘇った。これは今の今村じゃ下手をすれば彼が死ぬ。


「とりあえず突いてみて。」

「わかりました!」


 クリスフィードは今村の言う通りに木の棒を鋭く打ち込んだ。


「……え、捻りは?」

「ひ、捻るんですか?」

「うん。刺さらないじゃん。こう、捻じ込む感じで……」


 今村はそう言いながら右足を軽く下げ打ち込むと同時に右足を踏み込んで右手を押し込みながら捻じ込んだ。


「っとっとっと。こんな感じ? んで、槍は薙いで柄の部分で殴り殺すのが主流だから。で、杖術なんだが……俺ん所は打突メインじゃないんだよな……それでいいなら教えるが……」

「はい!」


 この後今村は基礎の型を教えて、自分のいつも行っている比較的楽な基礎筋トレメニューの10分の1をさせて二人に地獄を見せた。





イマムラ ヒトシ (17) ヒト 男


 命力:1283

 魔力:3010(前回+6)

 攻撃力:1504(前回+2)

 防御力:1531

 素早さ:1205(前回+4)

 魔法技術:3004


 ≪技能一覧≫

 【特級技能】…【玉】

 【上級技能】…【言語翻訳】【大魔導術】

 【中級技能】…【近接戦】【杖術】【槍術】【刀剣術】【気配探知】

 【初級技能】…【操氣術】【奇術】


 ≪称号一覧≫

 【異界の人】【アサシン】【トリックスター】【魔物使い】【奴隷使い】【破壊の奇行子】【大魔導師】【魔人】【双玉遣い】【修行者】【武芸者】


 現在所持金…1297万5000G


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