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帝国入りっ!

「着いた!」

「ぁーうー? あははははは!」

「黙れ屑。」

「ひぃうっ! ごめんなしゃぁ…」

「……また漏らす……お前膀胱と尿道どうなってんの?」

「あるじー腹捌いてみるかー?」

「直に見ても分からん。」


 一行が帝国最初の村、山を越えた麓にあるコシュパン村に着くころにはヤマナの精神は退化していた。

 現在は地面に仰向けで下着を脱いで股を開き今村に見せつけている。腹を捌かれたくないのでそうしているのだろうが、認識が女ではなく敵なのでそんなものを見せられても軽い殺意以外湧かない。


「……うーん脅かし過ぎたかね?」


 しかし、少々系統が違う方向に進んで来たので今村は若干反省する。正気のまま恐怖を味わってほしかったのにこうなってしまえば別人のような感覚に陥るのだ。


「怖かったです……アレは……本当に……」

「どれ?」


 アシュリーはこの山越え中に今村がしたこと全てがどれ一つとして正視に堪えないものだと思っている。正直信じていたものが音を立てて崩れるといった心情が最も適切だっただろう。


 今村的には城で受けたことの一部を【玉】と【魔法】によって上映し、自身を切り刻んでいたときのことをねちっこく訊いて逆切れされた時に録音した


「お前が悪い。」


 というヤマナの怒鳴り声の台詞の一部分を【音玉】で回収してヤマナにだけ聞こえるように延々とと再生し続けたのがファインプレーと思っている。


「クルルはなにもできないのにおとりとしてまじゅーのまえにほうりなげるのがこわかったとおもうの。」

「あぁ、アレ?」


 戦闘時にヤマナを軽く蹴っ飛ばして魔獣がヤマナを襲っている間に魔獣を殺すと言う策だ。効率的でとてもよかったと思う。


 何度か繰り返している内にヤマナは自分から飛び込むようになった。今村は鬼ではないと自分では思っているので頭から突っ込んだ時などはきちんと【玉壁展開】で防御してやり、何としてでも一命を取り留めさせた。


「んー……流石のルナもそろそろ悲惨だなぁーって思ってきたよ。」

「捌こうとしてた奴が何を言うか……」


 とはいうものの、ヤマナの酷い目と言ってもトータルでこんな目に遭った回数はあの執事(身代わり)の10分の1程度にも及ばない。


 が、そろそろヤマナ個人に対する罰は良いかもしれない気がしてきた。今村はそう思って【琨瑚】の刀を出した。


「じゃ、殺すか。」

「ひぃぅっ!」


 今村の軽い一言にヤマナは震えて地に伏し、その後、何を思ったのか腹を見せて完全服従の姿勢を取る。今村の口調が軽くても下手をすれば冗談ではないのでその行動を取ったのだが今村は何だこいつと言う視線を向けるだけだ。


「……何やってんだおめぇさんら……」


 そんな怯えるヤマナに救いの手が入る。おそらく村の住人が山で薪拾いをしていたところから帰ってきているのだろう。


 警戒の色を浮かべるその男を背後に確認すると今村はすぐに見られていない刀を消して営業用スマイル(Ver.苦労人)を作り、振り返った。


「いや……こいつは被虐趣味を持ってましてね……今は事後です……」

「ぁぅ……ひゃぁあっ! ぁい!」

「う、あぁ……何か……すまないね。込み入った話に入って……」


 男は顔を逸らした。ヤマナは調教済みなので今村が言ったことにすぐに従い興奮した声を上げた。今村はヤマナに隙を見せないように男の方へと首だけ振り向いたまま続ける。


「いえ……あ、この後村に入る予定なんですけど……何か、その……」


 今村が口を濁した辺りを言い様に解釈してくれたのだろう。男は頷いた。


「あ、あぁ。うん。何とも言わないさ。小さな村だが……ゆっくり……で、そ、その娘さんは大丈夫なのかい……?」

「……最悪、外で一人で遊んでますよ。」


 今村はそう言って仰向けになっているヤマナを踏み躙る。ヤマナは自然と気持ち悪い笑みを浮かべて変な声を上げ始めた。


「おっ……おぉっ……んあぁぁっ!」

「……あ、今引きましたよね?」

「かわええ面しとるのに……残念な子だ……」


 とは言う物のこんなもの、本来のヤマナが好きでやっているわけではないに決まっている。この状態になったのは今村がルナールが山越え中に強くなったからやらせてみて? と言われて試しにやらせてみたルナールの【幻術】の応用が思いの他強くかかったせいだ。


 尤も、今村たちと長期間の山登りの同行により境界性パーソナリティ障害も罹患しているのだが……


 後、自殺衝動とは別に痛みから逃れるためにその痛みを快楽とすり替えることなどもしている。ヤマナが山頂までの道のりで魔獣に飛び込んだのは自殺のつもりだが、山頂からこちらに降りて来る頃には副次的に得られる快楽の為にも自ら魔獣に腕を与えていた。


 因みに冒頭、今村は捌かれたくないんだろうなーと思っていたが、アレはヤマナの一種の歪んだアピールだったりする。彼女はストックホルム症候群にも罹患してしまっているのだ。


 嗅覚が鋭敏な魔獣のルナールや猫人のアシュリー、魔鳥のクルルは尿に混じっている微かな他の匂いを嗅ぎ取ってその事実に気付いているが今村は知らない。


 大体、腹を捌かれる程度の痛みは彼女はもう慣れっこだ。彼女の痛みに対する感覚は壊れており快楽の糧とするレベルに下がっている。


 そんな常軌を逸した話はさておき。


「これがある程度満足するまで動けないので……」

「あ、あぁ! すまないね、じろじろと……」


 男は去って行った。今村は痙攣しているヤマナを睨みつける。


「……きちんと下着を穿け。」

「ひゃ……」

「遅い。後、本当にどうしようもなく気持ち悪い。」


 急いで濡れたままの状態で下着を穿くヤマナを見て今村は険しい目を続ける。


 そんな壊れ気味の彼女を見て今村は少し考えるところがあった。


 呂律が回ってないのはパニック状態の時(それと快楽状態)だけで、一見では普通の人に見える彼女は現在今村が新たに得た称号【奴隷使い】によって軽度の奴隷になっている。


(……これだけ壊したなら……最後の方の罠に使えるか……?)


 今村は当初戦争に投入するまでは国内で自由にしてもらい、戦力が整ったところで戦力(勇者)を結集した状態で重要な場面で局所投入するか、陽動と本命に分けて投入すると話を聞いていたのだが、ヤマナの話を聞くに自由行動の範囲と期間が長くなり、抜け駆け可能になったらしい。


 つまり、抜け駆けなどが出来る状態で、今村からしてみれば弱いのに魔王などに挑んで勝手に死なれてしまうということもあるようになった。


 それを聞いた時に今村は仕方がないので全て終わった際には死んだ勇者の屍に【癒玉】で無理矢理肉を付けてボロボロにした後、獣に食わせること、そして勇者が死ぬとムカつくと言う理由だけで100人まで勇者の所為にして殺していいことにした。


 それはともかく、この自由な状況下において誰かが魔王を倒した時に祝勝会を行うらしい。それは今村的には手っ取り早くて面白い復讐の好機の1つだ。


(強くなった時点でヤマナを傀儡にして魔王と相討ちにしておびき寄せるかな。こいつもこれだけ壊せば憂さは晴れたしもう死んでも生きててもどうでもいいしな。奴隷としての悲惨な人生を味わってもらうのもいいが……有効活用した方がいいか。)


「なの? ごしゅじんさまー。むらからひとがきてるのー!」

「……青年2人……ですね。気配から察すると敵意は特になさそうです。」

「あるじー、殺すかー?」


 今村が色々考えていると村から若者たちが来たようだ。どうやら先程の男は口を滑らせたらしい。真っ直ぐこちらに向かっているとのこと。


 そして戦闘の意識はないとのことから今村は判断する。


「これの痴態を見に来た奴らだろ。オイ、腐れ。相手してきな。」

「あ……あぅ……」

「その汚い手で俺に触れないでくれるか?」


 何故か今村の服の端に手を伸ばしてくるヤマナ。それに対してゴミを見る目で今村はヤマナを見る。ヤマナは更に濡れた。


 また妙な匂いが増したことにアシュリーが何とも言えない顔になり俯き、ルナールの顔は歪む。クルルは落ち着きなく今村に自分の体を擦りよせる。


 アシュリーはヤマナの状況に対して理解が追い付いていない。とりあえず自分に矛先が向かないことに関して安堵することにしてそれ以上は考えないようにした。

 一応、ヤマナのことは気になっているが、前に今村から死なない様に回復しろと言われた時にヤマナから「もう少し……後で。」と言われ、意味の分からないことを語られたのでこれ以上考えるのは止めている。


 ルナールはヤマナを口封じのために殺したいと思っている。ルナールが【幻術】を掛ける時に余計なことをしてしまったのでヤマナの迷走が始まっているのだから。


 クルルに関してはごしゅじんさますごい! で済ませた。酷い目にしか遭わせていないのにメスが喜んでる! 程度の認識だ。それと、変な匂い付けをされているので自分の匂いで消そうとしている。


「は……初めて……な、アレ……いや……」

「……敵に拒否権を認めた覚えがないんだが? 行けよ。俺らの宿代代わりにはなるだろ。」


 今村の拒絶にヤマナは酷く悲しげな顔をするが、それでも要求する。現在の彼女の精神は非常に危うい物になっており、精神障害を罹患してしまっている。


 正確な診断はできないがストックホルム症候群や、自己敗北型パーソナリティ障害、またメサイアコンプレックス、依存性パーソナリティ障害……などの症状がみられるヤマナは今村に対して歪んだ愛情を持つようになってしまっているように思われるのだ。


「ごしゅ、犯しえ……」

「汚いので嫌です。……ちっ。そこそこイケメン……止めだ。喜ばれても気に入らないな。豚とでも初交尾させた方がいい。」


 にべもなく断った今村は近くに来た青年たちを【目玉】で確認し、まだ14歳くらいの少年よりであることと顔と体型がいいのを知ると今の案を取り下げた。


「村の偉い奴がキモけりゃいいなぁ……」


 そんなことを思いながら今村一行は帝国へと歩を進めた。




イマムラ ヒトシ (17) ヒト 男


 命力:1283

 魔力:3004

 攻撃力:1502

 防御力:1531

 素早さ:1201

 魔法技術:3004


 ≪技能一覧≫

 【特級技能】…【玉】

 【上級技能】…【言語翻訳】【大魔導術】

 【中級技能】…【近接戦】【杖術】【槍術】【刀剣術】【気配探知】

 【初級技能】…【操氣術】【奇術】


 ≪称号一覧≫

 【異界の人】【アサシン】【トリックスター】【魔物使い】【奴隷使い】【破壊の奇行子】【大魔導師】【魔人】【双玉遣い】【修行者】【武芸者】


 現在所持金…1300万G


【大魔導師】…魔力と魔法技術値を修正。3000からスタートさせる。

【破壊の奇行子】…ユニーク称号。気分によって能力値がプラス。耐痛性:大

【トリックスター】…素早さに補正。器用さ・発想力・回避率にも中補正。

【奴隷使い】…軽度の奴隷契約の手続きを行える。所有奴隷の能力値に小補正。

【武芸者】…戦闘時の行動に補正。

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