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冷酷で無感情な視線

 さて、休み始めて2日目。各地で手当たり次第近付く魔物を殺しまくっていた弊害が来ました。


 そう、多分生態系が狂ってしまったらしいので、獲物が減少した魔物たちや狩られることがなくなった魔物たちは人里に下りて来るようになっちゃいました。


 人里に来ても大丈夫そうな戦闘力が低そうな奴とか、後は逃げる奴とかは殺さなかったし、俺を見て襲ってくる奴だけ皆殺しにしてきたんだが……ダメだったかな?


「……まぁ、仕方ない。この世界にこんなん呼んだ奴が悪い。」

「なんのはなしなのー?」

「今、村が襲われていることについてのコメント。」


 目立ちたくないのでクルルには村の人たちが逃げれる間の時間稼ぎの為にそこそこ働くように言っておいています。


「あ……あの……差し出がましいかもしれませんが……ご主人様であれば……」

「何か言った?」


 アシュリーが何か言ってるが俺が予想している言葉が村人に聞こえるといけないので一睨みして黙らせておく。

 そして睨んだ先でアシュリーが怯えるように謝って、更にその先で村人が角が生えたウサギ的な魔物に襲われていた。


「ご、ごめんなさい……」

「あ、あっちで人がやられてる。」


 知り合い曰く感性が常人から逸しているらしいが、俺だって一応人並みの感性はあるつもりだ。南無南無くらい思っておく。


 そうしていると俺の視線を辿り、俺が見ていた人物と同じ……宿屋の女将さんに視線が到達するとクルルが何故か元気を出した。


「あのひとのごはんおいしいの! いまからほんきだすの!」

「あ、そう。」


 本気出す……か。今のクルルなら本気出せば魔物を全滅させることができるだろうな……


 よし、じゃあこいつは俺の護衛のために一緒に居ただけってことにしようか。さよなら元気でな。村を救った英雄として祭り上げられてろ。俺のことは死んでも話すなよ?


「ご……ごしゅじんさまー……?」

「何か? 行ってきなよ。」

「な……なんでそんなめでクルルをみるの…?」

「……? どんな目? ってか助けたいなら早く行けよ。あの人死ぬよ?」


 クルルは何かに怯えるようにこちらを見てそして顔をこちらに向けながら控えめに走って宿の女将を助けると本気で急いでこちらに戻って来た。


「な、なにか……だめ……だった……なの……?」

「……いや、何が? 別に俺何も言ってないんだが……あ、ついでにこの辺の人たち助けて来れば? クルル一人でも斃せるレベルだと思うし。」


 さすがに見殺しは多少後味が悪いのでクルルが残って頑張ってくれるのであれば丸く収まる。そう思っているとクルルが心配そうに俺を見上げていた。


「ごしゅじんさまはどうするなの……?」

「帝国に行く。」


 当然だ。下手に残って目立つと復讐時に困る。完全なる実力差が欲しいのだ。その前にどこかしらに目を付けられると非常に困る。元の世界に比べて情報は流れるのは遅いが、それでも流動する。

 この村にも小さいながらギルドがあるのだから村を救ったことは噂で流れるだろう。


 その時に、『一緒に居た人? あぁ命惜しさに私を残して逃げたよ(笑)死ねばいいのにね(苦笑)』的に村を救った英雄クルルに語られれば俺にまで追及は行かないだろうし目立っても大丈夫だろう。


「く……クルルは……?」

「村の守護者として頑張ればいいと思うよ? 温泉気に入ってたじゃん。」

「や……やなの!」

「あ、また襲われてる。ほら助けに行きなよ。大変だ。」

「やー!」


 クルルが俺の足に引っ付いて離れなくなった。邪魔い。


「え、人でなしめ死ぬがいい! 文字通り足を引っ張ろうって?」


 【玉】の力を以てセミオートで近付く魔物を打ち抜いてるからそんなことじゃ死にはしないが……


「し、しんじゃだめなの! でもおいていかないでなの!」

「別にどっちでもいいけど……あーあ、死んだ……」

「ほんとなの? はなしてもだいじょうぶなの?」

「何が? 少なくともあの人は死んだが。」


 クルルはじっと俺を見て恐る恐る身を離した。


「しんぞーがとまるかとおもったの……」

「あるのな心臓。」


 その言葉を受けて一瞬レバーの煮つけとレバニラを思い出した。……ちっ。この世界には俺が知る限り醤油がないんだよ……畜生め……


「イライラして来た。」


 八つ当たりで悪いが帝国への山越え中にいる魔物は大量虐殺の刑だな。生態系? 知らんな。聞いたことない。学を付けようとする途中で拉致られたせいで学がないんだ。


「元々生態系が崩れたってのは俺の見立てだし……元々来る予定の奴らだったのかもしれないしな~」


 専門家じゃないので知らない。まぁ生態系云々とか言ってるけど、自然界は常に生存競争してるんだしこの世も適者生存。死ぬ奴は何してても死ぬし生きれるなら生きるさ。魔物が来ても生きる奴は生きる。


 大体今死ぬか後で死ぬかの違いなだけだし。


「魔物だって家族はいるし、飢えた子どもの為に頑張ってるんだからなぁ……まぁ俺は問答無用で襲い掛かって来る奴は殺すけど。」

「ギャァウウッ!」


 ごめんね? 俺じゃなくてあっちの奴に襲い掛かれば良かったのにね。そんなことを考えながら何かマヌケなネズミの化物みたいな魔獣を殺す。これはあんまり美味しくないので死骸はこっそり【玉】に吸わせる。


「……お、あっちの人間は結構死んでる。」

「お、おいあんたら! 手が空いてるなら助けてくれよ!」


 何か言ってる。こっちもこっちで忙しいんです。今襲い掛かって来てる奴らと違う何か狐っぽいやつらから包囲されてるの見えないの?


「このままじゃ全滅だ! 早くこっちに!」

「俺も動けん! 迂闊に動くとこの群れがどうなるか分からんしな! そっちに全部連れて行くことになっちまうかもしれんぞ!」


 嘘です。皆殺しにしようと思えばできるのです。でも、この子たちは賢いので俺が戦闘しようと決めたら逃げます。

 森の中で会ったし、その時は大型の草食獣が群れで追って来てたから虐殺して囲まれてたからこいつらもか……? と思って臨戦態勢に入ったら逃げ、放っておいたら来て、とされてたから試しに草食獣の一頭を投げたら持っていった。


 因みに現在、その狐さんたちはいっぱいいる群の方で俺の様子を窺って、別働隊で村から餌を狩っている様なので俺は包囲している奴らに手を出せない。餌が欲しいけど俺に近付きたくないから牽制中だよね。分かる分かる。


「それもそうだな……」


 納得してくれたらしい。


「ルールルル……」


 手懐けれんものか……あのモフモフした獣欲しいな……見た目キュートな狐さんだからなぁ……目つきは悪いけど人間より可愛いよ。うん。可愛いは正義だし、人間食っても俺が許す。俺は喰わせんが……


「流石に幼体とはいえストームフォックスに睨まれてりゃ動けんか……そりゃそうだよな……強いとはいえ勇者じゃあるまいし……」


 この村の最高実力者の何とかさん(B級)が俺をちら見しながら呟く。嵐狐さんか……飼うならルナールって名前にしよう。


「ちっ! ダメだ! 逃げるぞ!」


 頼みの綱の冒険者たちは逃げ出した。村の人々が絶望にくれる顔をし、ルナール率いる魔物の群れがこの機を逃すな! とばかりに俺の包囲を止めて人間へ襲い掛かる。



 その時だった。息せき切って走って来た少女が到着と共に今まさに食事にありつこうとした魔物を蹴り飛ばした。蹴られた狐の魔物は頭を吹き飛ばされ目玉や脳漿を辺りにまき散らし、息絶えた。

 それを全く気にも留めずに少女は顔を上げて息を弾ませながら言った。


「間に……合った!」

「ちっ……ありゃぁ……【偽玉】【闇玉】」


 俺は狐たちに負けて喰い殺された俺の図(身バレ防止のために顔の損傷を酷目にしておく)を【玉】の力で少し離れた所に生み出して俺は身を隠した。あいつは間違いない……


「皆さん! 遅れて申し訳ありません……! ですが! 王国特務課【風王】のミキ=ヤマナが来たからにはご安心ください!」


 勇者候補生だ。


 【目玉】の情報じゃ直近の勇者も別ルートに進むはずだったんだが……それはそうと、間に合ったということは情報の伝達スピードを考えるに俺らがどうこうって問題じゃなかったってことだな。よかった。


 さて、数値じゃない実力がどうなったか知りたいところだよな……ちょっと測るか……そう思ったと同時に少女を中心に膨大な魔力が練られ―――


「ぃやばっ……【玉壁展開】!」


 力の流れが止まると同時に巨大なハリケーンが魔物と俺らを襲った。俺は手近にいるクルルとアシュリーを引き寄せて【玉】を5個使って地面から上に半球を作って身を守る。その規格外さに俺は苦い顔を作った。


(耐え切れているが……これは……)


 予想より、強い。


 このレベルの魔術を使うのであってもおそらく戦えば勝てるだろう。騙し討ちから始まるコンボで単に殺す事は可能だ。しかし、終始圧倒的で、相手に絶望を与えながら殺すことは出来なさそうだ。


(……それじゃ駄目だよなぁ……)


 仮に暗殺祭りを実施するのであれば一同が会する密室を作ってそこで一人一人殺していく恐怖を煽るやり方でなければいけないと思っている。


 因みにその場合、脱出協力者の小野には【偽玉】を使って安全のために仮死してもらう。犯人と疑われて害されるようなことがあればいけないからだ。


(……そんなこと考えてたら嵐は弱まったな……)


 クルルとアシュリーは今村の足元で怯えている。【玉壁展開】は透明な壁なので外の悲惨な状態がありありと見えるのだ。


「……逃げるぞ。あいつは俺らごと殺そうとした。つまり、それが表に出ると不味いから殺しに来る。アシュリーは俺に乗れ。クルルは頑張れ。」

「あ……アレは……な……なんなの……?」

「屑。」


 クルルは人化して初めての絶対的な脅威にさらされ、怯えながら今村に尋ね、今村は走るのが(人外主観で)そんなに早くないアシュリーを背負いながら端的に答える。


「【癒玉】……ルナール……すまない。悪いが頑張ってくれ……」


 今村は手近にいたストームフォックスの幼生を勇者候補生の足止め代わりに癒すと謝った。ストームフォックスは敵意を漲らせた目で癒えた体に魔力を通し、勇者を見据えると咆哮した。


「ギャオオォオッ!」

「勇者様! あれはストームフォックスで……」

「今の内だ。」


 乱戦が始まる前に今村は魔力を練って包囲して来ていた分だけ回復させておく。要するに足止めと逃げる音のカモフラージュだ。


 そして嵐狐ルナールの咆哮と共に魔獣と勇者の戦闘が開始されると同時に今村一行は全力でこの場を後にして逃げ出した。




イマムラ ヒトシ (17) ヒト 男


 命力:1099(前回+1)

 魔力:1828(前回+2)

 攻撃力:991(前回+5)

 防御力:1003(前回+1)

 素早さ:830(前回+3)

 魔法技術:1919(前回+1)


 ≪技能一覧≫

 【特級技能】…【玉】

 【上級技能】…【言語翻訳】

 【中級技能】…【近接戦】【杖術】【槍術】【刀術】【魔導術】【気配探知】

 【初級技能】…【剣術】


 ≪称号一覧≫

 【異界の人】【アサシン】【軽業師】【魔物使い】【狂戦士】【魔導師】【魔人】【双玉遣い】


 現在所持金…1305万G

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