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…あぁ、あるんだそういうの

「ごしゅじんさま~おきた?」

「……何だテメェ。」

「クルルなの!」


 朝起きて気付くとブロンド色の緩いウェーブがかかった長髪で碧眼の元気そうな推定年齢10歳前後の女児が俺のベッドの中に潜り込んでいた。

 その幼女は俺が上体を起こすと一糸まとわぬ姿で俺の横から膝の上に乗ってそして俺を見上げるとにぱっと笑った。


 可愛い。何か動くときに後ろに純白の羽が見えた気もするけどまぁいいや。


 何を言っているかって? 俺にもよく分からん。……そう言えば【玉体】の後遺症の筋肉痛もないし、もしかして夢かね?


「……うん。じゃあもっかい寝るか。」


 ならもう一度寝よう。そうすれば起きるだろ。そう思って寝ようとすると幼女が元気に声をかけて来た。


「ゴハンなの! ごしゅじんさまはおきたほうがいいとおもうの! ……それと、とりあえず、ギュっとしたいの!」

「……何が何なのかよく分からんが却下。お前誰?」


 俺は五月蠅い彼女に睡眼を向けてもう一度その正体について尋ねる。彼女は元気いっぱいに答えを返してくれた。


「クルルなの!!」

「……クルルはうちの鶏モドキの名前だが……」


 ……そういえばいないな……後ついでにアシュリーもいない。やっぱり夢か。……明晰夢は結構分かりやすく見てたんだがなぁ……これは結構現実感がある。


 今、俺の体にもの凄く押し付けられた上、擦りつけられている顔の感触とか本物としか思えないし。


「……まぁ、現実逃避は置いといて。流石ファンタジー……擬人化か。」

「なぁ~のぉ~……クルルこれからがんばるのぉ~」


 何かあればいいな位の感覚だったことが現実に起きたと冷静に受け止めるとクルル(自称)は顔をぐりぐりさせながら答えてくれた。


 それはそれとして俺の疑問がある。


「……何で人間? ドラゴンとか、魔鳥を恰好よくした感じじゃ駄目なのか? 何かこう……猛禽類的な……」


 クルルは顔をぴたりと止めた。そしてしばらくそのままだったが何かを思いついたらしく顔を離して目を泳がせながら答えてくれた。


「え~と……? きのう、ほねたべたの。それで……いっぱいレベルアップだったの。えいきょー? らしいの!」

「……どうでもいいや。」


 訊いておいてなんだが答えを聞いて割とどうでもいいことだと思った。それより卵は……? 流石に目の前のこいつから生まれた卵は喰いたくねぇな……

 ……ってか、これ、卵産むの? もう産まねぇの?


「クルル。お前って、卵産む?」


 訊いてみよう。手っ取り早い。どっちにしろ喰えないし、別に安かったしデリカシーがない! とかで嫌われて居なくなられてもいいや。


「まだなの! でも……」

「あ、もういいや。」


 まだってことは産むのか……じゃあ次の質問だな。


「お前、鳥? 人間?」

「……………………? たぶん…………とりにんげん……? なの……?」


 可愛らしくまだ丸みを帯びてあまり尖っていない顎に手を当てて首を90度近くに曲げて答えてくれた。


 自信はないが多分鳥……と。じゃあ人間形態じゃない元の状態ならば卵はいけるだろうか……? ん~……どうだろ……喰えなさそう……まぁその時になったらわかるか。


「ごしゅじんさまー! クルル、とってもがんばるの! クルルいらないこじゃないの!」


 何やら意気込むクルル(自称)。俺はキラキラした目から目を背けた。


「………………まぁその辺は追い追い考えるとして……」


 さて、ここで問題。クルルは超可愛い。見てて楽しい。……が、その辺のモノを食べさせてるからこの形態でそれさせると何かヤバい。


 道で文字通り草を食う美幼女とか洒落にもならん。俺が捕まる気がする。


 金は……まぁそれなりにあるんだが、何があるのか分からないし、クルルの餌代に使い過ぎたくはない。


 正直捕まらないなら人間の飯よりその辺の草食ってもらってる方がありがたいんだが……


「……さて、どっちにするか……あ、自分で考えるの面倒だし決めてもらお。クルル。君さ、人間形態と鳥形態どっちでいたい?」

「ごしゅじんさまはどっちがいいの?」


 ……ふむ。そう来るか……じゃ、食費の問題だが……仮に人間の子供と同じ量の食欲なら問題ない……が、あの鳥状態と同じ食欲だと問題しかない。


 そんなことを考えつつ最悪の場合置いて行くかと思っていたらクルルはしまった! と言う顔をして言い直した。


「……まちがえたの。どっちがすき? なの。」

「じゃ、ちょっと色々質問がある。食欲は?」

「おなかすいたの。でも、まえほどじゃないの。」


 ……前より少ないのか……とりあえず飯食わせてみよう……っとその前に、


「えーと、誰だっけ……アシュリーか。あいつどこ行った?」

「ことりもってかいものにでかけたの。ゴハンもってくるみたいなの。でもやきとりじゃないみたいなの。」


 あ、そう言えば昨日俺軽くのた打ち回ってるかもって言っといたな。気を利かせて買いに行ってくれたのか。

 おぉ……奴隷が命令以上のことを自分から進んで動くとは……のた打ち回ってるのを表面上には出さずに嘲笑いつつ奴隷ではこれが限界ですとか言いながら手を抜くのかと思ってた。


「まぁいいや。アシュリーを待っとくか。」

「なの!」


 それで待つことしばらく。クルルに服を買うまでのつなぎで【玉衣】を着てもらっていた所にアシュリーが何か怪我して帰って来た。服も結構破られてる。


 衣服問題が深刻だな……俺のも少ないし……正直今来てる服はもう嫌だし……そんなことを考えていると部屋の扉がゆっくり開いた。

 武装して待ち受けるとそこにいたのは何故かかすり傷のような物をたくさんつけているアシュリーがいた。


「あ、ご主人様! 大丈夫ですか……?」

「……え? こっちの台詞じゃね? 大丈夫?」


 俺が心配して声をかけると何かアシュリーは嬉しそうに頷く。


「はい! ……それで、ご主人様は……その……一応【回復魔法】をかけておいたのですが……」

「うん。特に問題ないな。」

「そうですか! あの……ご飯ですけど……その……あんまり良いのが……」

「いいよ別に。何買って来たの?」


 アシュリー俺に特に問題がないと言った時の喜び顔を一転させ、もの凄く申し訳なさそうに葉っぱに包まれた何かを出した。


「……ご、ごめんなさい……」

「魚か。まぁいいや。」


 俺の言葉にアシュリーは何か……ほにゃ? 的な……緊張が解ける感じになった。


「え……えへへ。ありがとうございます。私、愚図で役立たずですが、精いっぱい頑張りますね。」

「あんまし自分を卑下しない方がいいよ~で、何で2尾?」


 昨日食べたみたいな手足が生えた魚のちっさいバージョンだった。まぁ美味しいし、いいよ。若干焦げてるけど。2尾の理由を訊くとアシュリーは入ってくる時と同じ感じに固まった。


「ご、ご主人様の分だけで……その……足りませんですか……?」

「ん~……」


 まぁ普通に足りないが……それよりクルルの検証が出来んな。


「まぁ……昨日もアレだけ酷い目に遭ってたし……多分今日もろくな目に遭ってないんだろ? 無理して外出なくてよかったのに。じゃ、外出しようか。」


 俺は魚を食って立ち上がった。多分アレだろ。周りの人間の反応からするに何もしてなかったのに迫害されたんだろ。

 良く頑張ってくれたようん。おじさん(もうすぐ17歳)泣けて来たね。


「うん。ご馳走様。アシュリー何か食いたいのがあったら言いな。」


 そんなに高額にはならないだろうし適当に買ってやろう。頑張った分、アシュリーの方には豪華な何かをあげなければ。


「あ……ありがとうございます……!」

「く……クルルもがんばるの!」


 ……何を張り合ってんのか……まぁ頑張ってくれる分は良いけどね。



















「ということで、好きなの選べ。」

「わーい! これとこれとこれなの!」

「え……いいんですか……?」


 床に正座中のアシュリーと俺の横に座っているクルル。因みにクルルは何度か俺が座っている上に座って来たので強制的に降ろした。しつこいので睨むと渋々この位置に着いた。


 で、拗ねてたがメニューを見てご機嫌だ。このガキちょろい。


「……こ、これを……」

「あぁそう。……遠慮はいらないって一回しか言わないからな?」

「…………スペシャル・チキンセット……」


 ……それは……どうだろうか……自信はなくとも一応鳥らしいクルルを見たが、クルルはチキンステーキを頼んでいたので考えるのも馬鹿らしいと望みどおりにしてやる。


「……お客様。あまり混じり物を甘やかすのは……お得意様ですからご忠告しておきますが、お金をこんなモノに使うくらいであれば教会に寄付なされてはどうですか? それであれば角も立たないかと……」

「昨日も済ませたよ……今日の分は考えておく。それにしてもこの店はサービスがいいな? いつも静かでチップも弾むよ。」


 また大金貨を1枚渡す。うん。黙ってすぐに行ってくれた。分かりやすくていいね……散財が酷いけど……


「まず、前菜とスープになります。」


 で、すぐに料理が出て来た。何だかんだでマナーは叩き込まれてるから俺は問題ない。


「やさいはいらないの……あげる……なの。」


 そう言って鳥の癖に野菜嫌いらしいクルルは野菜をアシュリーが持ったままにしていた烏の雛にあげた。


 そしてクルルはスープを見て楽しそうに魔力を練って……魔力?


「【あくあ・ばれっと】! これはおいしーの!」


 ……は? 今こいつ魔法……え? 今スープを弾丸にして口の中に……え?


「続いて、パンになります。」

「……まぁいっか。」


 細かいことは気にしない方向で。


「これもおいしーの! ごしゅじんさまー! ありがとうなの!」

「わ、私もありがとうございます!」

「何だ急に。」


 意味の分からないことで急に泣き始めたアシュリー。何があったのか知らないが、飯食う時はちゃんと食事のことを考えろ。


「カラフォル鳥のソテーとクオルフェ獣のステーキ。それにチキンステーキになります。」


 その後の食事でクルルは自分が思っていたより食事ができないことに気付いた。大人一人前が限界みたいだ。


 クルルの手が付いた食べ物の残りは大抵がアシュリー行き。俺は何気にボリュームのあったステーキと後から来たチキンステーキを一枚でギブアップだ。


 その残りは烏行きになった。




イマムラ ヒトシ (17) 人間 男


 命力:62

 魔力:67

 攻撃力:55

 防御力:58

 素早さ:51

 魔法技術:88


 ≪技能一覧≫

 【特級技能】…【玉】

 【上級技能】…【言語翻訳】

 【中級技能】…【近接戦】【杖術】【槍術】【刀術】

 【初級技能】…【剣術】


 ≪称号一覧≫

 【異界の人】【ハンター】【軽業師】【魔物使い】【狂戦士】

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