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ん~?あ、これがそうなんだ。

※「主人公は人でなし。」予め、ご了承をお願いします。



 気が付いたらおそらく召喚陣と思える物の真っ只中でした。それで、何か不思議なことになっています。


「今村は? あぁいた……」


 ……誰? こいつ。かなりの美少女だが……あ、何となく思い出した。俺の友人もどきの好きだった女。え~と名前は……小野だな。


 とりあえず近くに知り合いがいることは分かった。情報の共有をして状況把握をしないと。


「よぉ。これどういう状況?」

「こっちが聞きたいわよ……ところで何ともないの? 大丈夫? 怪我とか痛い所はない?」

「……お前は俺の親か?」


 何か知らんけどもの凄い構ってくる小野。その所為で周りの目が痛い。……が、これはどういった集団だ? 見て来るのは同じ高校の服で……あ、これ俺が受かった高校の制服じゃね?


 よし、多分記憶喪失と言うやつだな。全く良しじゃないがとりあえず高校生になった後の記憶がないってことか。エピソード記憶の欠落ってことだ。


 そんなことを考えていると召喚陣らしき文様の外にいた薄い黄緑色のドレスを着てティアラを着けた女がこちらを見上げて来た。

 ……うん。記憶はないけど何か読んだ本の記憶はあるぞ。このパターンで行けばこいつ王女か巫女だろうな。


「勇者様……」


 本筋だけ聞いて後は聞き流そう。


















 何やかんやあって説明終了。美辞麗句で飾り立て大義がどうのこうの、正義がどうのこうの言っていたが要するに魔族と全面戦争中で負けそうだから勇者として戦争しろという事だ。


 知るか。


 それはともかく俺らが態々勇者として呼ばれた理由は


 「異世界から来ると身体能力が向上する。」

 「異世界人がこの世界に来ると必ず【特級技能】に目覚める。」


 その辺が挙がるらしい。


 身体技能の向上はステータスで何となくわかるとのこで【特級技能】はステータスに漢字一文字で表されるという事。


 試しにやってみた。


「ステータス・クオ」


 イマムラ ヒトシ (17) 人間 男


 命力:50

 魔力:40

 攻撃力:32

 防御力:55

 素早さ:33

 魔法技術:68


 ≪技能一覧≫

 【特級技能】…【玉】

 【上級技能】…【言語翻訳】

 【中級技能】…【近接戦】【槍術】【槍術】【刀術】

 【初級技能】…【剣術】


 ≪称号一覧≫

 【異界の人】



 俺の記憶じゃまだ15だったはずだが……とりあえず元の世界じゃ高2の春が過ぎてたことが確定したな。


 ……さて、周りの反応は……ん? なんか静かだな。お、王女から説明入った。……へぇ、俺らは色んな世界からランダムに呼んだから、統一の言語じゃない。


 それで、言葉が通じないと困るという事で転移時に全員に等しくかけられる【初級言語翻訳】という【付与魔法】がかけられていると。

 しかし、その【付与魔法】でもあまりにも言語が違うと聞き取りと話程度は出来るても読みは出来ない。ステータスなどが読めない人もいることだろう。


 それでこの後、日常で使う。軽く覚えておくべき内容を教えるとのこと。それに加えて【特級技能】の方は【神聖文字】の為、専門家に聞くらしい。


 ……そのまんまの日本語だったから俺の翻訳スキルは【上級技能】なんだろうかね? まぁ読めるならどうでもいいけど。


 そんなことを考えつつ周囲の様子を窺っていたら何か鑑定士の人が来て説明会が開かれ始める。周囲の方々の喜びの声によると能力は【火】や【水】、【風】や【土】とか【雷】。また【武】や【魔】等の凄いやつで強いらしい。


 その流れで俺の所に来た鑑定士の顔は期待に溢れていた。しかし、彼は何らかの能力を使って俺の【特級技能】を見るなり、顔を強張らせて落胆の表情を作った。


「【玉】……ですか。宝玉などを出したりする能力ですね……同時に生み出せる上限が五つまでですし、その宝玉も術を解くと戻ります……後は……そうですね、それなりに【ステータス】は高いです。」


 この言葉を聞いて周りがひそひそと囁き合う。特に王族貴族の顔が一瞬ながら盛大に顰められているのが印象的だな。

 それにつられてか異世界から呼ばれた勇者候補生的な奴らも否定的な視線を向けやがるし。


「玉だってよ……」

「それじゃ戦えないでしょ……」

「いや、【ステータス】は高いんだから剣とかで……」


 そんな勇者候補生たちの最後の会話が聞えたのか王女が口を挟んだ。


「いえ、この後説明しようと思っていたことなのですが、【特級技能】というものは一部の能力特化なので……示されたもの以外の武器、または防具は装備できません……イマムラさん……でしたね?」

「はぁ。」


 何とも気の抜けた返事が出た。王女は憐みと、それに決していい感情ではない複雑な感情の籠った目で俺を見据えると言った。


「あなたは一室与えますので、戦争が終わるまでそこに避難していてください。衛兵!」


 これって戦わないことを選びそうな奴への見せしめか人質だよな。捻くれてるか? まぁ、いいけどね。周りもクスクス笑ってるしムカつくからさっさと衛兵に連れられて部屋に行こう。


 ということで湧いて来た衛兵に連れられて……いやもうこれは連行されてるな。そんな状態で移動させられた。




「ここだ。大人しくしていろ。」


 そして俺は何か微妙に薄暗く、燭台の炎が灯っているだけの部屋(俺の部屋より大きいが何か物がかなり少ない部屋、ベッドだけやたら大きい)に案内されると押されて外から施錠された。


 ここまでぞんざいな扱いで高圧的に言われるとぶちのめしたくなる。キレやすい十代舐めんなよ? 世界をまたにかけてる誘拐犯。


 そんなことを思いながら俺は早速気になっていたことを実験。


「……宝玉が出るなら火の玉も出るはずだよな……?」


 何の根拠もないがそう思って何となくこうかな? と思うようにイメージしてやってみると燭台の炎が急に揺らめいてもの凄い勢いで蝋を溶かし、最後に消える代わりに火球が出た。大体人の頭くらいの大きさだ。


「……ならば……」


 うん。同じ感じで備え付けの桶の水を消す代わりに水球も出た。その後に氷玉も出た。エトセトラめっちゃ出た。もう最後の方はお前【玉】って付けば何でもいいの? って思えるくらい色々出せた。


「……じゃあ、これも出来たら最早これその辺の奴らのチートより強いんだが……【りょう】」


 俺がそう言うと机の上の装飾品が消える代わりに俺の手の中に銀色に光るインゴットが現れた。それを見て俺は爆笑する。


「やっぱ玉偏・・も入るのかよ! もう完全にチートじゃん!」


 璙は字義で「しろがね」のこと。それでイメージしたのはインゴット。出て来たのもインゴット。球状態じゃない。


 ……能力の制限が適当にも程があるし、もう面白すぎる。


「じゃ、【とう】も……やっぱ出た。」


 そう念じると俺の手元には玉で飾られた立派な剣が握られていた。やはりもう何でもアリだ。

 もう笑うしかない。……が、笑っていると何故か眩暈がしてきた。


「は……は? アレ……急に眠くなってきた……マズ……」


 俺は洗濯はされているのであろうが、薄汚れているベッドに倒れ込むとそのまま意図せずに眠りについた。



















「……ま村……るわよ……?」


 何か聞こえたと同時に部屋のドアが開く気配がして俺は起きる。そしてそこに居たのは小野。制服姿から着替え、紺色のチャイナドレスに似た豪華な衣装に身を包み、その他にも色々と髪や化粧を……と着飾っている小野だった。


「……よう。」

「……起きてるんじゃない! ……なら早くパーティーに行くわよ? 勇者歓迎パーティーらしいのに主役を欠かせるわけにはいかないでしょ?」


 ……入って来るなり何故か知りもしないことを言ってくる彼女に俺はとりあえず言っておきたいことがあった。


「……ところで、俺、今記憶喪失なんだが、小野と俺、何か卒業時より仲いいみたいだけど何で?」


 小野がびしりと固まった。はは。何その顔。面白い。


「……え?」

「……聞いちゃまずかったか? 弱みを握ってたとか? フム……それ位ならありそうだな……」

「そ……んなことはないけど……え? 覚えてないの? 高校に入ってから【魔神大帝】とか言って……」

「オーケー。思い出さなくてもよさそうだ。」


 聞きたくないよ。そんなこと。とっくに中学二年生は終えているのに黒歴史にまだ新たなページを作っていたのか……中三までは猶予期間だと楽しんでいたが……ハマり過ぎて高校まで……? そのせいで魔術関連もイメージが……? いや深く考えると何かに負けそうだ……話題を変えよう。


「あ、今俺幾つ?」

「……えっと、精神年齢は3兆って言ってたかな……?」

「その辺はもうやめてほしいな。実年齢。俺、今、高校何年生?」


 その辺マジで要らない! いいから! 過去は振り返らない! で、それはそれとして転移中に長い時間が経ってたとか言う話じゃないと確認の意味を込めて小野さん。答えをどうぞ。


「高校2年生の冬だよ。」

「……フム。勉強の方は問題ないな……複素数平面辺りまできちんと理解してるし。だが……俺は文理選択どっちにしようと思ってたんかねぇ……」

「あ、それ私も知りたい。」


 ……何で全教科出来てる覚えがあるんだ……俺はどっちかな? まぁこっちに永住するかもしれんから後で考えるか。それはともかく記憶がない間のことを聞いた感じじゃ俺は間違いなくこのクラスじゃ浮いてたな?


 ……じゃあ、俺が記憶喪失ってのも黙っておこう。また新しい中二のネタとか思われたら癪だし。


「【雷女王】様。イマムラ様が就寝なのはお分かりになられたと思います。早くパーティーの方へ……っと……起きておられたのですか……」


 お、イケメン紳士(執事服着てる)じゃん。……成程、小野はここから、こいつから逆ハーを作っていくのか。

 ……いや、でも俺の友人モドキはかなりのイケメンだったが振られたな……何でもまだそんなことを考えてないとか……


 とりあえず、応援しとくわ。ガンバ! 執事! あ、今こいつ俺のことゴミを見る目で見たな。死ね。


「……そうね。着替えとかあるでしょうし……今村。私は先に行っておくわね。後でね!」


 まだ話足りない風な小野はあまり納得いかない状態のまま消えていった。そして足音なども完全に聞こえなくなると執事が小野に向けていた表情を一転させて俺を睨んだ。


「……役立たずの分際で……馴れ馴れしくしてんじゃねぇ!」

「おっと。そい。」


 そして大きく後ろに振りかぶって俺目掛けて蹴り上げて来た。大人しく蹴られる意味はないので避けてみた。


「なっ!」


 何か驚いているところ悪いが、序でにベッドから降りると男にお試しの術を掛ける。


「【黙玉】、【偽玉】、【目玉】」


 そして出来上がったのは俺……に見える執事さんとその上に気持ち悪い桑の実のような形をした球。


 【玉】の能力を解放するには近くから同じような物質を取らなければならないみたいだった。


 色々試行錯誤をしている内にその事実に気付いた俺は遠隔操作できる第2の【目玉】を作った時に俺の目がなくなると嫌だったから近くにいた虫に目を合わせてやったらこんなデザインになった。

 ついでにどっかから変なのが来た気もするが……この複眼が集まった目がキモいからあんまり覚えてない。


「さて、俺は仮病使うから。行ってらっしゃい。」


 俺は執事を蹴り出した。さて、何だか様子がおかしい気がするこの城で俺モドキの彼はどんな扱いを受けるかな?




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