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人面痣ズ  作者: 石垣 翔
3/4

第3話

放課後、祐介は、体育館の角から半分隠れるように

して、恐る恐る裏庭を覗いてみた。


反対側の端のベンチにマリモが座って携帯電話を

操作している。

マリモの取り巻きは、誰もいないようだ。


祐介は、少し安心した。

口の中で一、二、三と数えてから、足を踏み出した。

体が硬い。足が宙に浮いているようなきがする。


彼が途中まで歩いていくと、マリモが彼に気付いて、

携帯から目を離して、彼を睨んだ。


その時、マリモの後方の体育館の角から、突然、

男が現れると、マリモの後ろを通って、

祐介のほうに歩いてきた。


祐介は、誰だか気がついた。

3年生の空手部の副部長の安藤だ。

マリモが携帯で呼んだに違いない。


(ヤバイ)

祐介は、立ち止まった。足がすこし震えている。


マリモが、祐介のほうに歩いていく安藤に気がつくと、

ベンチから立ち上がって、安藤の腕を掴んで叫んだ。

「やめて!」


しかし、安藤はマリモの手を振り払うと、祐介の真正面に

立った。背丈は祐介と同じくらいだが、筋肉質で目付きが鋭い。


「おまえ、マリモを突き飛ばしたそうだな」

そう言うと、右手で祐介の襟首のネクタイを掴んだ。


すると、祐介の右腕が突然、安藤の腹をおもいきり殴った。

祐介は、あわてて「すいません」と頭を下げてあやまった。


頭を下げた祐介の額が、安藤の鼻に、勢いよく当たった。


安藤の鼻から、血がパッと噴出した。


祐介は、その鼻血が制服にかからないように、思わず

後ろにステップした。

その拍子に、祐介の膝がまともに安藤の股間を激しく打った。

安藤は、両手で股間を押さえると、そのまま前のめりに倒れて、

額をしたたか、コンクリートにぶつけた。


安藤は、コンクリートの上に倒れたまま悶絶した。


マリモが、すっ飛んできた。

安藤は顔中を血だらけにしながら、苦悶の表情で唸っている。


祐介が、呆然として立っていると、マリモが言った。

「はやく行きな。後は私がやるから」


祐介は、脱兎のごとくそこから逃げ出した。



祐介が、体育館の裏から駆け出して、グランドの隅を

走っていると、右腕に硬式野球のボールがまともに

ぶつかった。


ものすごく痛い。(チクショウ)

右腕が怒り狂ってぶるぶる震えている。


向こうから、外野手の誰かが彼に向かって叫んだ。

「オーイ、ボールを投げてくれ」


祐介は、右腕でボールをとると、思いっきり

投げ返した。

ボールは、外野手と内野手をはるかに超えて、

飛ぶと捕手のミットに納まった。

ものすごい大遠投だった。


投げてくれと言った外野手があきれ返ったように

彼を見ていた。


祐介は、また全速力で走り出した。

安藤が追いかけてくるかもしれない。


祐介が下駄箱の上に置いてあったカバンをとって、

駐輪場に向かうと、野球部のユニフォームを着た

生徒が祐介に声をかけてきた。


3年生の主将の小松だ。


息を弾ませている。

グランドから追いかけてきたらしい。


「きみ、すごい肩をしてるな。

今まで野球をやったことは?」


「ありません」

祐介は、緊張して答えた。


小松は、捕手で4番バッターのスター選手だ。

この学校で、知らないものはいない。


「きみ、すこし投げてみないか。

実は、エースが肩を壊して投げられないんだ」


祐介は、中学校の頃に、すこし野球部に所属していた

ことがある。

まるで、下手クソでタマ拾いばかりやらされていたから、

すぐに辞めてしまった。

「すみません。無理だと思います」


その時、救急車がサイレンを響かせて校庭に入ってきた。

白衣を着た二人の男が、救急車から降りると白い担架を

抱えて体育館の裏のほうに走っていった。


「無理かどうか、とにかく少し投げてみてくれよ」

小松がねばる。


祐介は、安藤に仕返しされることを考えた。

野球部に入っていれば、野球部の連中が守ってくれる

かもしれない。


「わかりました。やってみます」

祐介は、小松の後について、グランドに向かって

歩き始めた。


続く





















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