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4、1週間の終わりの日

冴輝柚希さんから衝撃的な告白を受けてから1週間。

俺は冴輝さんに呼ばれて屋上に来ていた。本日が最終日。判断を下してもらう日だ。

あの告白から1週間。俺達はずっと昼ごはんを一緒に食べていた。

もちろん姉ちゃんには内緒にして屋上で。


一週間通してわかったことは冴輝さんはホントに良い子だということ。

曖昧な表現かもしれないがこれ以上の評価が思いつかない。

気が利くし、とても話しやすい。まるで男友達と話しているみたいな感覚すら覚える。

彼女のことが好きかと聞かれたら間違いなくYESと答えるだろう。

だがしかし異性として好きなのかと聞かれたら、俺は分からないと答えるだろう。


でも可愛い娘だなぁ…ホントに。

「どうしたんスか?」

「っ…いや…なんでもないよ。今日はいい天気だなぁと思って。」

「そうっスねー…気持ちいいっス…」

そう、なんでもない。むしろ入学して1週間で女の子と仲良くなれたのだ。

これで嬉しくないわけがない。うん。きっとそれが普通だ。


ジーッ…

そこの扉から覗いてる姉ちゃん達がいなけりゃな!

屋上へと入る扉から2人の姉が覗いている。

何やらしゃべっているようだが声は聞こえない。


「兄貴ー」

「あ…あぁどうしたの?」

「質問してもイイっスか?」

「うん。もちろんいいよ。俺もいろいろ君のこと知りたいから。」

「うわー…そういうこと女の子に言わないほうがイイっスよ…」

「あれ!?引かれてる!?」

「いや、勘違いされちゃうっスよ。ナンパしてるって」

「姉ちゃんに教えられたんだけどなぁ女の子にはこう言えって」

「兄貴ってお姉さんがいるんスね」

「この学校の副会長と書記が姉ちゃんだよ」

「へぇー美人な人っスねー」

「そんなことねぇよ!!」

「嬉しそうっスね兄貴…」

「それはそうと質問ってなに?」

「あー、兄貴って好きな女の子とかいるんスかー?」

「…ちょっ…ええええ!!??」



_________________________________

禁止されてる屋上へ優希が行ってるのを見つけたから付いてきたら、まさかこいび……女の子と一緒に居るなんて…驚いちゃったわね。一週間も昼休みはここで過ごしてたのかしら。

一緒にいるルリはさっさと泣いてるし。これもしかして彼女とかじゃないわよね?

仲良く話してるみたい…あぁ今すぐに問い詰めて吐かせたい…でも今出て行ったら優希に嫌われちゃうだろうなぁ…

「えぐっ…ずるっ…ゆうちゃーーーん…」

後ろを振り向くと涙でぐしゃぐしゃのルリがいた。汚い顔だけど感情をこんなにも表に出せるのは羨ましい。

「うるさいわねルリ。泣かないでよ」

私まで泣きそうじゃない。

「だってぇーいつも私たちについてきてたゆうちゃんがぁー…うわぁー!!」

「大人になったのよ。いいじゃない女友達ぐらい。家に帰れば会えるんだから」

「うー…」「ほらほら教室行くわよー」

教室へと戻ろうとした時、あの女の子の声が聞こえた。

『兄貴って好きな女の子とかいるんスかー?』

「「!?」」

私たちの心にとんでもない爆弾が投げこまれた。



______________________________

「ほらほらーいるんスかー?」

「う、うーん」

「いるんスか?」

「(姉ちゃん達のことが好きだなんて言ったらホントに引かれちゃうかもしれない…)」

「兄貴?」

「いないよ。好きな人もいない…」

「そうっスか!じゃあ自分が彼女になってもいいんスね!!」

「は!?」

「いいじゃないっスかー別にーぼっち同士仲良くしましょうよー」

「大体、君は俺の舎弟になるとかなんとか言ってただろ」

「話をずらしても無駄っスよ!!付き合ってくださいっス!好きな人いないんでしょー!」

「う、うん。まぁそうだけど」

言えない!自分の姉が好きなんて言えない!!どうしよう!

自分から泥沼に入っていってる気がする…

まさにっ…!泥沼っ……!!圧倒的…不利っ!!


「いいっスよー別に。返事をちゃんとくれるまでは恋人としてふるまいますから!」

腕に抱きつく冴輝さん。女の子特有の柔らかさと暖かさが腕を包む。

俺はそれに対して戸惑うことしか出来なかった。


_______________________________

「何あの子!?ゆうちゃんの腕を抱きしめてる!」

「うるさい!それよりも優希好きな人いるって言った?それともいないって言った?」

「え?ゆうちゃんそんなこと言ってたの?」

「聞いてなかったの!?」

「全く…」

「でもあの女が抱きついてるのを見る限り、多分「君のことをアイラヴユー♡」とか言ってそうね」

「うわぁーん!ゆうちゃん私たちを捨てないでー!」

「その言い方やめなさいよ。寂しくなるでしょう…」

「……もどろっか」「そうね…」

「いいもんいいもん。家に帰れば会えるんだから!」

「そうよルリ。私たちにはひとつ屋根の下にいるという強すぎるアドバンテージがあるわ」

「うん。頑張るぞーおー!」「お、おー…」

「それじゃ教室もどろっかー…」「ハァ……そうね…」

「落ち込まない落ち込まない!もしかしてマリちゃんって私よりゆうちゃんのこと好きなの?」

「そんなわけないじゃない!もー!早く戻るわよ!」

「待ってよマリちゃーん!」

そして私たちは教室へと戻った。その後に告げられたとんでもない重大発表を一切聞くこともなく。


______________________________

俺は小さな時から圧倒的なカリスマを持つ姉ちゃん達に連れられていろんなことを体験した。

姉ちゃん達に告白する男も色々いたし、女の子から告白されたのを見たこともある。

俺もその中で恋もしたし告白もした。もちろんフラレたけど。

でもやっぱり心の底で俺は姉ちゃん達が好きだったと思う。ずっと。

間違いなく言えるのは姉ちゃんたちといる時が一番楽しい。そして安心する。

フラれて泣いていれば、慰めてくれた。元気づけてくれた。

いろんないたずらもされるけど、それも含めて毎日が楽しい。

それを含めて異性として姉ちゃん達が好きだ。でもあくまで2人ともが好き。

選ぶなんてことは出来ない。2人とも大好きだ。

だから姉ちゃん達には言えないし、無論他の人になんて言えるわけがない。

姉ちゃんが好きというのを恥ずかしがってる自分がいる。自分でも情けないと思うさ。

それでもはっきりと好きと言えないんだよ…わかるだろ?

外面を一切気にするなってのは無理な話だ。キスなんてしちゃってるけどな。


でも、ここで。姉ちゃん達が見てるここで言わなきゃいけないんだ。言いたいんだ。大好きだって。

嫌われるかもしれない。学校中から変な目で見られるかもしれない。

姉ちゃんに迷惑もかかるかもしれない。でも俺は言う。姉ちゃんたちに正面切って言うのは無理だけどこの声が聞こえてるなら…そう思って言わせてもらう。

「………っごめん。やっぱり俺、好きな人がいるんだ」

「えっ…」

「さっきは……嘘を吐いていたんだ。俺は自分の気持ちを偽ってた。」

「一体誰が好きなの…自分よりも美人で性格も良くて素晴らしい人…じゃなきゃ許さない…」

「俺は、俺は姉ちゃん達が好きだ。」

「………ホントなんスか」

「あぁホントだ。俺は小さい時から姉ちゃん達が好きだった。」

「……アッハハハハハ!!!」

「え?」

彼女は急に笑い出した。大爆笑だ。


「ちょっと…冴輝さん?」

「いや、大丈夫っス大丈夫っス…くっくくく…」

「ごめん、ショックで頭がおかしくなっちゃって…」

「なってないっスよー!!自分はホントにいい人を好きになったなぁと思って…」

「あれ?驚いてないの?」

「ある程度知ってましたっスから」

「知ってた?」

「ええそりゃあもう。朝からお手てつないで登校してるさまを見せつけられたらそりゃあ怪しいなと思うっスよ。」

「あちゃー…見られてたのか」

「ばっちりと。でも兄貴のことが好きってのは本当ですよ?一目惚れです。これ以上も以下もありませんっス。愛してます。」

「…急にそんなこと言うなよ。」

「あっ照れてるーこりゃ自分にも筋ありますなー」

「…うぅ…」

「わー兄貴かーわいー」

「馬鹿にしてんじゃねぇ!」

「すいませんっス。だからある程度フラれるって思ってたんスよ。むしろここで男らしく言えないような人だったら諦めてましたけどね」

「そっか…じゃあ俺踊らされていたのかお前に!!」

「まぁまぁ。イイじゃないっスか結果論ですけど。それじゃあ一緒に戻りましょっか」

「あれ?姉ちゃんは?」

「あぁお姉さんならさっさと戻られてましたよ。兄貴の告白シーンの時に」

「うぉおおおおおおおおお……」

「残念っスねー…まぁこの告白はちゃんと自分で言うべきっスよ」

「…それもそうだな。」



入学して1週間。一世一代の告白が泡と消えました。

でもその日の帰り道は妙にスッキリしていました。いつか姉ちゃん達に告白できる勇気が欲しい。

思いをこめた告白は姉たちには聞き届けられませんでした。帰り道こそスッキリしていたものの、家で告白したことを伝えるわけにもいかず悶々としていたそうです。

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