九話 ギルドにて
九話 ギルドにて
多くの屈強な冒険者が集っている冒険者ギルド。
そのなかに、一人の青年がやってきた。
腕に、大量の何かを抱えている。
「ご用件はなんですか?」
受付嬢が笑顔で対応し、
周りの冒険者がじろりと部外者を見た。
「これ!お願いします!」
カウンターに身を乗り出し、
視線なんて御構い無しといったふうにして、青年は大声でいった。
「は、はい」
受付嬢は、思わず体を引いてしまった。
カウンターにおかれている、鑑定用のトレーの上に両手を広げて腕のなかのものを落とされていく。
トレーの上は瞬く間に埋まっていった。
「……って、なんですか、これ!」
こんもりと積まれたそれを一目みるなり、受付嬢は大きな声をだしてしまった。
「これ、ダークウルフの牙じゃないですか!
……しかもワイバーンの鱗や爪だなんて!
一体どこで手に入れたんですか⁉」
「はい、親の形見とかそんなです。
いいから早く」
騒ぐ受付嬢とは対象的に、
青年は気もそぞろに頓珍漢なことを返している。
話が通じていなかった。
「ぐっ……全部で金貨が五枚です。よろしいですか?」
「はい、よろしいです。
……ところでーー」
「な、なんですか?」
受付嬢から金貨を受け取った青年が、彼女の体のとある一点を見て、悩ましげな声で言った。
「ーーおっぱい、おおきいですね……。ああ……」
苦悩に満ちた青年は、義憤に燃える冒険者たちによって、叩き出された。
***
ーー受付嬢は、のちに
「あんなにストレートに言われたの、初めて……」
といって、冒険者たちを大いに嘆かせた。