七話 町の中にて
七話 町の中にて
「つまりですね、僕はこう言いたいんです。きみはもう少し我慢を覚えるべきだ、ってね」
歩きながら、青年は熱弁をふるっていた。
もちろん相手は、首元に潜む触手だ。
議題は、ここ二、三日のこと。
「きみが会う人会う人食べちゃうせいで、話が全然聞けないじゃあないですか」
彼は、盗賊たちから聞いたマジックアイテムについて情報を集めようとしていたのだが、それがことごとく失敗に終わっていたのだ。
頬へと伸びてきた触手が、申し訳なさそうに垂れ下がる。
その様子を見て、青年は少し語気を緩めた。
そっと手のひらで触手を撫でさする。
「それが僕たちの本能だってことはわかります。でも、少しでも多くのたべものを手にいれられるかもしれないってときに、情報収集が全くできないってのはいただけない」
ひと息ついて、さらに続ける。
「だから、しばらくの間は人を食べないようにしましょう」
触手はしばらくの間ピクリとも動かなかったが、青年が黙って見つめていると、とうとう小さく縦に震えた。
どうやら理解してくれたようだ。
「ありがとう」
僕も頑張らなきゃね、と青年は呟いた。
「じゃあ行こうか、ルーくん」
青年の姿は町の喧噪へと消えていった。