勧誘
「さて・・・と。
海東さん」
「何?」
「アナタ、帰宅部だったわよね?」
「そう・・・だけど・・・」
暇人!とか罵倒されるのかな?
「サッカー部のマネージャーをやってみない?」
「・・・えー!!!」
さ、さささサッカー部のマネージャー?!
可愛くてスタイルが良くて、明るい子ぢゃないと許されない、あの?
「あ、あたしなんか、」
「アナタ、伊藤のこと好きでしょ」
断定的な言い方。
「な、何でそう思うの?」
「顔見ればわかる」
あたしはハッとして自分の顔を触る。
橘さんは、無言で手鏡をあたしに差し出す。
「ありがと」
あたしは手鏡に映る自分の顔を見る。
えぇ?!
こんなにニヤニヤ・デレデレしてんの?!
「でしょ?」
あたしから手鏡を受け取りながら、橘さんは言う。
勝ち誇ったような態度は見せない。
「もう1度聞くわ。
伊藤のこと好きなんでしょ」
「はい・・・」
ぅわ!!
「そう・・・それなら、マネージャー程伊藤に近づけるものはないわ」
どう?
と言うようにあたしを見下す橘さん。
悪い意味ではないんだけど、身長160cmのあたしに対して、170cm弱の橘さんだから・・・。
そういう表現しかない。
それに、マネージャーなら・・・。
「あたしなんかでいいの?」
最終確認。
「ええ」
無表情で即答する橘さん。
「それぢゃ・・・」
あたしは90度を意識して、頭を下げる。
「よろしくお願いします!!」
伊藤君に近づける・・・。
あたしの中では、喜びという文字が書かれた旗を振り回す天使が走り回ってる。