視聴覚室
「と・・・。
何か急にごめんな」
伊藤君に謝られた!!!
「俺のこと、知ってる?覚えてる?」
あたしは激しく頷く。
もちのろん!
「海東ちゃん、俺は1組の小林 光ってんだけど知ってる?」
伊藤君の右辺りから顔を出したのは、カワイイ系で有名な小林君。
「知ってるよ!」
「ぢゃあ、俺は?」
伊藤君の左辺りから顔を出したのは、俺様系の・・・。
「・・・金森 洋介君!」
「ピンポーン!!」
「ぢゃ、俺、」
「そろそろ止めてあげな」
橘さんが一括して、質問の嵐は静まる。
「ていうか、海東さんの友達意味わかんない」
「橘ぁ、お前また誤解されたのかよ!」
「別に」
「いざとなったら、俺がヒーローになってやるから安心しろ」
「そうね、阿蘇山を片手で持てるようになったら、助けに来てね」
「おい!」
橘さんには、氷の女王というあだ名がある。
いつも無表情だから。
ここでも笑わない・・・。
あれ?
少しだけ、頬が赤い・・・・。
はっ!
まさか・・・。
「橘さん、何であたしここに来てるの?」
そう言うと、橘さんは平静を装って答えた。
「ああ、ちょっとね・・・アンタ達!」
サッカー部の皆に向かって言う橘さん。
「こっから出てって。
海東さんと2人だけで話したいの」
「ナニナニ?百合?」
「ばかじゃないの?死ねば?」
きつい・・・。
「ぢゃあ、何するんだよ」
抗議する・・・えーと・・・柿沼君。
「ガールズトーク」
「ぷはっ」
余程おかしいのか、ジュースを飲んでいた間宮君が上向きに吹き出す。
他の皆も爆笑している。
「うあっはははっは!!!」
「ひーひっひっひ」
「がははっは!橘がガールズトーク?!」
「ヤバい!つぼった!!」
「いーからさっさと出て行きな!」
相変わらず無表情の橘さんが、怒鳴る。
「はいはい!分かりましたよお姫様」
金森君が言うと、山本君を先頭にぞろぞろと11人が視聴覚室から出て行く。
最後に出て行った伊藤君・・・とは目が合わなかった。
ラブコメなら、目が合うっていう展開だったのになぁ。