昼食
「真夏も大変だね」
理沙がパンを頬張りながら、そんなことを言う。
「急に何?」
あたしも負けじと、小夏の特製卵焼きを頬張る。
「まー、良かったぢゃん?伊藤みたいなイケメンで」
「だから何が?」
「真夏も早くくっついちゃいなよぉ」
葉月が冷やかしてくる。
確かに、伊藤君カッコイイし・・・。
「ねぇ、海東さんってアナタ?」
あたし達の会話の中に、聞いたことの無い声が紛れ込んできた。
あたしは顔を上げる。
そこには、リカちゃん人形のような、日本人離れしたスタイルと顔の持ち主が立っていた。
橘 水際。
「マナに何か用?」
あたしより先に、理沙が答える。
「伊藤さぁ、アンタより真夏に気があるみたいね」
葉月がせせら笑う。
そんな2人に諸共せず、橘さんは冷ややかに返す。
「お言葉だと思うけど、アンタ彼氏に二股されてるよ」
「はぁ?」
葉月も負けてない。
「そんな嘘見え見えなんですけど」
「てか必死ぢゃん?ウケるー」
理沙も加勢する。
「安田 加奈子」
「は?」
「意味わかんないし」
「アンタの彼氏の浮気相手。
もう、ヤったらしいよ」
その時初めて、葉月の顔に焦りが見られた。
「いつ?」
「4月30日」
「き、昨日ぢゃん・・・」
確かに・・・。
「昨日、連絡取れなかった・・・」
葉月の目に、うっすらと涙が浮かぶ。
「もういい?」
橘さんの視線が、あたしに集中する。
「海東さんと2人で話したいの」
「あ、アンタみたいな奴とマナを2人きりにできるわけないぢゃん!」
理沙が反抗する。
「理沙、あたし話してくる」
「え・・・?」
葉月の背中を擦っていた手が止まる。
「言いたいことあるし」
「本人はそう言っているわよ?」
未だに無表情の橘さん。
「分かった・・・行ってきな」
「だま、されんじゃ、な、いよ」
半泣き状態の葉月がつっかえながら言う。
「こっち来て」
あたしは橘さんに付いて行った。