第3話 アビリティと【竜玉】
若干暇が出来た(現実逃避ともいう)ので投稿します。
アビリティと【竜玉】
「しまった」
俺はレッドベアーやさっきの男が落としたドロップアイテムを拾おうと思ったが、目の前の沼を見て失策に気付いた。
――ドロップアイテムが沈んでしまったのだ。
あの程度の敵なら簡単に倒せるからあきらめてもいいのだが……もったいない。
神様なんだからけちけちするなと言われるかもしれないが、俺は基本的に人として生きてきたから精神的には人に近いので……しかたない。
さて、どうするか――よし!
俺は大きく息を吸い込み――
【デザートブレス】
俺の口から水分を奪い乾燥させる謎な砂っぽいのが吐き出された。
ブレスを受けた沼は瞬く間に干からびていき、同時に蹂躙されていた木々もボロボロと崩れていった。
しばらくして、【デザートブレス】の名の通り今まで沼だった場所が砂漠と化した。
う~ん。
確かに見やすくなったが、埋まっているものを発掘するのは面倒だな~
しかも範囲が半径1kmくらいって……。
とはいえ都合のいいスキルを持っているわけでもなかったので俺は地道に発掘作業に入った。
ちなみにさっきのスキルは口から発音せず――口がいっぱいだったからね――スキル名を思考するだけで勝手に音になった。
どうやら【無詠唱】や【無拍子】のアビリティがなければスキル名を叫んだり、さっきのブレスみたいに大きく息を吸い込んだりする予備動作などを隠すことはできないようだ。
中二臭くて若干恥ずかしいが持ってないものをねだっても仕方ないのであきらめる。
アビリティはスキルと違ってMP消費なしで使える特性みたいなものでON/OFFを自由に切り替えることもできる。
俺の【神竜化】、【人化】などがそうだ。
他にも【火炎完全耐性】、【状態異常絶対耐性】など色々持っているが、一部のアビリティはユニークアビリティと呼ばれ発動させるのに特定の条件が必要になっている――【竜神の試練】や【加護】などがあたる。
「ん? これだな」
俺は砂を適当に掘ったりして、ついにドロップアイテムを見つけた。
運がいいのか結構固まっていたので結構な量である。
俺はアイテムボックスの代わりに使おうと思っていた、前の世界からの異能を使う。
すると俺の前に光る玉が出現した――アビリティ【竜玉】である。
俺は【竜玉】をドロップアイテムに近づけさせ、一気に収納した。
この【竜玉】は自分が所有していると思うものをいくらでも収納でき、さらに竜玉の中では俺が理想と思える状態に維持されるというすばらしい性能を持っている。
ちなみに【竜玉】はさっき俺が【神竜化】するときと【人化】するときにも使用していた――服の着脱に。
1.8mの人間大から20mに身体が膨れ上がれば服は当然のごとく破れる。
だから破れるギリギリで服を収納し、【人化】する時も放送禁止ギリギリで瞬時に服を装着するようにしている――男の変身シーンなんて誰も見たくない。
なお【竜玉】収納量の限界はわかっていないが、すでに一軒家丸ごとくらいの量は入っているので上限は気にしないことにしている。
収納の条件は自分が所有していると思うものというものすごくあいまいな感じになっており――
例えば
店に置いてあるものは収納できないが、買ったものは収納できる。
野生の虫は収納できないが、虫カゴに入れた後は収納できる。
そこいらの生えている木々は収納できないが、切った枝は収納できる。
――など自分でもどこまでできるか知らない。
取りだしは自分が想像しているものを瞬時に【竜玉】周辺に出すことができ、さっき言ったように服の着替えもできる。
【竜玉】の中に収納されたものは俺が思う理想の状態を維持するようになっており、食べ物はいつまでも腐らないし、古びたものでもしばらくすると新品の状態になる。
ただアンティークなど年代の重みが理想と思うものはその状態が維持される。
――ちなみに俺はパンの熟成などもっぱら料理に応用している。
折れた剣なども修復することができるのだが欠点がある。
折れた剣を【竜玉】の中に入れても直るのには数年はかかる――ただし自己修復機能を持つものなら早く直る。
さらに数千年前の剣を新品の状態にしようと思うと500年はかかる。
つまり理想の状態になるには時間がかかるのが欠点だ。
まあ寿命がない神だから生き急がない限り欠点でもないんだけどね。
「はいしょっと!」
俺は砂を掘り起こして、またドロップアイテムを見つけて収納したが――あきた。
めんどうくせ~
【竜玉】で一気に収納できれば楽なんだけど……。
ん?
もしかして出来るかも。
俺は思いつきで砂ごと収納させてみた――できた。
【竜玉】周辺100mくらいがごっそりと消えた。
どうやら【デザートブレス】の届いていない土の層は収納できないので、俺が変質させた砂だけ収納可ということみたいだ。
俺は【竜玉】をそこいらに飛ばし次々と収納していった。
青々と茂っていた森は半日の間で焼かれ、沼に沈み、砂漠になり、そして陥没地と変化した。
「さすがにこれは不味いか……」
俺はドロップアイテムを除いて砂を元に戻そうと思ったが、脳裏に環境破壊の4文字が浮かんだ。
もしこのまま戻したら元に戻るには時間がかかりそうである。
何度も言うが俺はいちよう人間の感性は持っているのだ。
こっちに来てからかなりアバウトになってはいるが……。
俺はせめてもの償いに砂が栄養満点の腐葉土になるまで【竜玉】のなかで熟成させて、それから元に戻すことに決めた。
「う~ん、寝るか!」
【竜玉】から不可視かつ原爆を受けても壊れない一軒家を取りだし、そこで今日はもう寝ることにした。
「おやすみ」
あと2,3話は近日中に投稿すると思いますが続きはリアルが忙しすぎるので何時になるかわかりません。
今の現状は活動報告か別作品の「MP1の転生者」のあとがきで説明しています。