STORY9:ミーナの旅
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7人の目の前に現れたのは、オレンジ色の髪と瞳のシュラと同じくらいであろうかと思わせる少年だった。
少し、オドオドした様子で上目使いで挨拶をする。
「あ、あの・・・。初めまして・・・って、これは先刻言ったか・・・。えぇ〜と、あの・・・」
はっきりしない子だ。
ミーナは、少々ふらつきながらその少年に近付いて行く。
少年は、びっくりして身体をこわばらせる。
「あ、あの!」
「君の名前は?」
ミーナは、今まで見せたこと無い程に微笑んで聴いた。
少年からして言えば、"優しいお姉さん"に見えるのだろう。 照れ臭そうに、少年の頬がほんのりと赤くなる。
「ボクの名前は・・・ムムです。ムム・アインツ。あの、一応『風』の紋章を持ってます」
ミーナは、そう、と再び微笑んだ。
そして、さりげなくその身体の秘密を問い出す。
ムムは、騙されたように語り始めた。
ムムは歩いていた。
ただ、家からいつもの百貨店に行くために。
それだけだった。
ムムは、ある男に会った。
ユリークと名乗った、白髪のお爺さんだ。
闇色の瞳をしていて、黒いフードを身に纏っていた。
お爺さんは言った。
『強くなりたくはないか?』
勿論、ムムは強くなりたかった。 なんせ、気が弱いことがコンプレックスとなっていたからだ。
ムムは、『なりたい』と言った。
すると、お爺さんは聴いたことのない呪文を唱えた。
その呪文を聴いていると、なんだか眠くなって・・・。
気が付いたらこうだったんです、とムムは下を向いて呟くように言った。
「そしたら、街の皆がボクを殺そうと・・・」
ムムは、とうとう泣き出してしまった。
「ムム。あなたの中にはあと何人いるの?」
ミーナに言われて、ムムは指を折って数え始める。
「えっと・・・。1・2・3・・・4人です!」
「4人!?」
リュウが、その身を乗り出して言った。
あと、4人・・・。 つまり、ムムの身体には合計7つの人格がある、ということなのだ。
「"紋章を持つ者は惹かれ合う"・・・か」
パオが言うと、皆の目が集中する。
以前、捕まった時にリュウに自分が言った言葉だ。
ミーナは、なるほど、と何かを納得した様子であったが、1つだけ分からないことがあった。
魔族の目的だ。
以前に会ったことのある、あのユリークが魔族だったということも驚いたが、今日現れたサッドとかいう魔族も謎だ。
ミーナは、自分の腕を見つめる。
見つめる先には、今まで痣でしかなかった『蝶』の紋章・・・。
サッドから聴いたあの一言で、姿を現した。 あれは、何を意味していたのだろう。
そして、明らかにシェラのとは違い、闇色の紋章の『蝶』をただ見つめる。
この世に、魔族以外で闇色の何かを持つ人間など存在しない。 ムムを殺そうとした街の人達は、彼の闇色の片目を恐れたのだ。
「サミー、リュウ。行きましょう。彼等は、わたし達に用があるみたいだし」
ミーナの突然の決断に、サミーとリュウは驚きもしなかった。
サミーもリュウも、ミーナの行動に慣れてきたようだ。
決断してから、1日が過ぎ、宿屋の前には大きな荷物を背負ったミーナ、サミー、リュウの3人の姿があった。
「じゃ、後のことは頼んだわよ。ヒョウ、1週間くらいしたらパオを迎えに軍の奴等が来るけど・・・」
「へぇへぇ、暴れんなってんだろ?分かってる。それは、最終手段にしておくから」
ミーナは、念を押して"頼むわよ"と言う。
ヒョウは、手をヒラヒラと振って返事をする。
「あのっ!!」
3人の後ろから、幼い声が聴こえた。
「ボクも連れて行って下さい」
オレンジ色の髪とオレンジ色の瞳の少年、ムムだ。
緊張しているのだろうか? 膝が笑っている。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
3人は答えない。
驚いたのだ。 ムムの以外な行動に・・・。
「・・・・好きにしなさい」
ムムも、何も知らない訳ではない。 魔族という強敵を相手にするという覚悟はあるはずだ。
ミーナは、サミーは、リュウは、そう信じてミーナに言ってもらった。
ミーナの旅だ。 決定権はミーナにある。
「は・・・はい!ボク、付いて行きます!!」
そして、ミーナ一行はムムという新たな仲間を連れて、旅に出たのだ。
ムム…本名:ムム・アインツ。オレンジ色の髪、オレンジ色の瞳。14歳。