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STORY8:魔族見参 後編

感想・評価・メッセージ お待ちしてます!

 1時間と10分が経った。 リュウは、未だに帰って来ていない。

「行こう。皆で」

 シン・・・、とした空間を消すように、ミーナが言う。

 宿屋の真ん中で、ミーナ達は塊ってじっと待っていた。

「行こう。皆で」

 なかなか動こうとしない皆を見て、ミーナはもう1度言った。 最初に動いたのはサミーだった。 次にヒョウ、そしてパオ・・・。

 だが、シュラは動く気配さえ感じさせない。

「シュラ、行くよ」

 それでも、シュラは動こうとしない。

 その瞬間、シュラの顔が横を向いた。

 ペシッ、と軽い音だったが、その頬からはタラリと少量の血が流れている。

 殴られたのだ。

 殴ったとしても、ダメージさえ与えられぬその小さな腕で・・・。

「いいから、来い!!あんたの姉さんでしょ!!」

「・・・・うん」

 シュラは、泣いていた。 涙は流さず、心で泣いていた。

 ようやく動いたシュラの顔は、今にも泣きそうだったのだ。

              

 カラッと晴れて、白い雲が少ない今日の空。

 教会の天井は、ポッカリとその空を見せていた。

 もうすぐ日没。 辺りが赤く染まる中で、リュウは身体を赤く染めて立ち尽くしていた。

 目の前には、笑みのままで動かないサッドとかいう人物。

「こんなものですか・・・。やはり、人間はつまらない」

 夕陽に照らされて、サッドの笑みが恐ろしく思える。

 リュウとサッドには、大きな差がある。 彼は人間ではない。 基礎から、身体の構造が違うのだ。

「強ぇ、強ぇな。やっぱ・・・!!」

 当たれば、相当なダメージだろう。 だが、当たらない・・・。 当てられない・・・。

 スピードが違う。

 しかし、リュウは諦めない。

 目の前には、守るべき女性(ひと)がいるのだから・・・。

「もうすぐ、アイツが来るぜ?この俺様の・・・義弟(おとうと)がな!!」

 リュウは叫んだ。

 そうしないと、声が出なかったからだ。

 笑った。

 何かを確信したように。

『*$%#=ぁ・アロー!!』

 何を言っているか分からない呪文が、教会の外から放たれた。

 巨大な火炎が、閃光が、鋼の羽が。

 それは、リュウのすぐ隣を通過し、サッドに向かう。

 サッドの笑みが消え、素早く避ける。

「はぁぁぁぁっ!!」

 その後に続き、ミーナが劔を振るう。

 音は一瞬。

 そして、サッドの肩から下は床に落ちた。

「なるほど・・・。数で来ますか・・・」

 冷や汗を流し、呟く。

 ですが・・・、とサッドは続ける。

 落ちた腕を拾い、サッドはミーナを傷付けずに止める。

「私はある方から頼まれたのです。ミーナ様に伝えるように、と」

 ミーナは構えていた劔を降ろした。

 初めて見せた、サッドの闇色の瞳に驚いて・・・。

 誰にも聞こえ無いように、ミーナは"やっぱり"と呟いた。

「あんた・・・魔族ね?」

 サッドは再びニッコリと笑う。

「語名答」

 ミーナは、深呼吸で落ち着く。 そして、その用件を質問した。

 サッドは、ゆっくりと明確に答える。

「"我は、ここにいる"」

「!?」

 サッドがそう言うと、ミーナの腕が熱くなる。 本人が"熱い"と感じ、苦しむ程に。

「あああああっ!!!!」

 ミーナは、特に熱く感じる部分を反対の手で抑える。

 そこは、調度『蝶』の痣がある。

「ミーナ!!」

「おい!しっかりしろ!!」

 サミーとリュウが、必死に呼びかける。

「わたしの用件はこれだけです。あぁ、シェラ様には何もしてません。出来ませんしね・・・」

 サッドは、肩をすくめて言う。 あぁ、もう1つ・・・と言い足す。

「魔王は、もうすぐ復活する!・・・では」

 サッドは消えた。

 影も形も無い。

 ミーナも、叫ばなくなっていた。 叫び疲れたのか、気を失っているようだ。

 サッドの言葉通り、シェラには何もされていなかった。

 今までの疲れで、眠っているだけだ。

『なぁんだ。終わっちまったのか・・・』

 聴き憶えのある声が、上から聞こえた。

 皆が一斉に上を見上げる。

 そこには、紅い髪、紅と黒の瞳の軍人が。

「シェラが拐われたって聴いたから来てみたんだがなぁ・・・」

「テメェ、何者だよ・・・?」

 リュウが問う。

 男は、ニヤリと笑いながら"帰ってからだ"と言った。

              

              

 シェラが目を覚ました時、目の前にいたのは紫の瞳と黒の瞳を持った金髪の青年だった。

 あの青年とは別の、ドットアイの青年。

「お前がシェラKa?」

 語尾がなんだか鈍っているが、それ以外は普通の青年だった。

「あ・・・なた・・・は?」

「オレ?オレはゴッド。『雷』の紋章を持つ者Da」

 金髪の青年、ゴッドは言う。

 シェラは、皆の無事を尋ね、安心していいと言われてほっとする。

 ゴッドは、別の部屋にいたリュウやサミー達を呼ぶと、どこかへ行ってしまった。

 呼ばれた皆は、なんだなんだ?、と集まって来る。

「よぅ。ゴッドに聴いたぜ、シェラが起きたんだって?」

 ゴッドが出て行った所から入って来たのは、紅い髪の男だった。

 コイツは未だに名乗っていない。 リュウ達はそれに腹を立てた。

「そろそろ、教えてくれねぇか?あんた、シェラちゃんの何なんだ?」

 と、リュウが聴いた。

 男は、それに答えるように1度、深呼吸をする。

「俺の名は、ルーク・コルベール。そこにいるシェラの兄・・・ってことになるな」

              

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。

              

「はあぁ!?」

 一番びっくりしたのは、リュウだった。

 他の皆は・・・。

 ある者は、読みかけの本を床に落とし、ある者は、食べかけのパンを床に落とす。

 パオに至っては、ショックで言葉さえ無い。

「・・・僕に兄さんがいたのか・・・」

 シュラは、突然現れた兄の存在に戸惑っているようだった。

 そんなシュラを見て、ルークはその小さな子供の頭をポンッと叩いた。

「よく、頑張ったな」

 ルークは微笑んで言う。

 その微笑みとは逆に、リュウやパオには鬼神の表情を見せる。

 さぁて・・・、とルークは指を鳴らす。

「俺がいねぇ間に、な〜んかしなかったろうなぁ(怒)」

「てか、アンタ今まで何してた訳?そんな、小さな弟を残してさ・・・」

 ヒョウは、ルークの鬼神な素振りを見ても平然として言った。

 一瞬、嵐が起きそうになるがすぐに収まった。 ヒョウのお陰だ。 うん・・・。

 ヒョウの質問に、ルークは黙って自分の右目を指差した。

「俺のこの()

「「「()?」」」

 リュウとパオとヒョウが、同時に返した。

 ルークは、更に続けて言う。

「人間にはあり得無いモノだ。魔族の手が掛っている」

              

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。

              

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。

              

 皆、黙った。

 誰も口を開かない。

 リュウとパオは特に、目を点にして呆けていた。

「んで?アンタ、魔族な訳?」

 口を頬張らせて、寝惚けた様子でミーナが言った。

 てか、いつ起きたお前!!

「お?起きたKa。大丈夫かよ、姐さん」

「うぉっ!?ゴ、ゴッド?お前、いつの間に!?」

 ルークの姿は消え、ゴッドの姿がそこにあった。

 ミーナは、驚きもせずにただ目の前の料理に手を出す。

「残念ながら、オレ等は魔族じゃ無ぇYo。変な体質ではあるけどNa」

『オレ"等"?』

 "等"を強調して、皆が口を揃え、首を傾げた。

 ゴッドが、そう!、とにこやかに言うと次第に髪の色が変化していく。

 金髪から紅髪(こうはつ)へ。

 紫色の瞳から紅色の瞳へ。

 少年を思わせる顔から、少し大人びた顔へと姿が微妙に変化する。

 先程、何故ゴッドが現れたのか今分かった。

「ま、こういうことだ」

 変な語尾も無く、男らしいドスの効いた声が皆の耳に入って来る。

 そこには、ゴッドの姿は無くルークの姿だけがあった。

「なるほどね。それが理由か・・・」

 と、ヒョウが呟く。

 続けてミーナが、碧い目をルークに向けて言う。

「で?ベースの人は誰?」

 ルークは驚いた様子で、感心した。

「分かるのか。大したもんだ」

 ミーナは、感心無さそうに、まぁね、と答える。

 突然、ルークは瞳を閉じた。 そして、それを合図にどんどんルークの背丈が小さくなっていく。

 髪も、少し長くオレンジ色に変わる。

 ルーク・・・だった人物は、瞳を開いた。

 綺麗なオレンジ色の左目、黒い右目。

 身長は、シュラと同じくらいだろう。

「は、初めまして!」

 ミーナ達の目の前に現れたのは、小さな少年だった。

ゴッド…本名:ゴッド・ナガル。金髪、紫色の瞳。20歳              ルーク…本名:ルーク・コルベール。紅髪、紅色の瞳。25歳

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