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STORY5:連合軍・総指令

感想・評価お待ちしております!

 あれから1週間、まだ例の街は姿を見せない。 食料は無い。 しかも、暑い。

 ずっと歩き回っていたサミー以外の3人は、ぐったりとして歩く。

「あ゛つ゛い゛」 の一言を、全員が口を揃えた。

 そして、ヒョウが倒れた。

 ドサッ という、一般的な音が聞こえる。

 その隣で、同じく ドサッ という音が聞こえた。

「あああぁぁぁあぁぁぁ!!ヒョウ、ミーナ!しっかりして〜〜!!!」

 サミー、絶叫する。

 その後ろから、ポテッ という軽い音がした。 そこには、軽くなった大きな荷物を背負って倒れたリュウの姿があった。

「リュウも倒れた〜〜!!!」

 サミー、再び絶叫。

 それにしても・・・。 リュウ、"ポテッ"て・・・(呆)。

 サミーは、倒れたミーナを起こそうと頑張ってみる。 だが、その小さな身体では多少の無理があった。

 遂に、サミーも暑さに負けその場に倒れてしまった。

 目が霞む。 頭もクラクラしてくる。 意識が遠のいていく・・・そんな感覚に陥った。

 その時、確かに聞こえた。 大きな鳥の、翼の音が・・・。

「あぁ、きっとハゲ鷹ね・・・。これで、終わり・・・かぁ(泣)」

 サミーはそう呟いて、瞳を閉じた。 だんだん、意識が無くなって行くような感覚に・・・・。

              

 ガチャガチャ、ザワザワ。 何だか、やかましい・・・。

 ハゲ鷹が調理の準備でもしてるのかなぁ・・・?

 サミーはそう思いながら、そっと瞳を開けた。

 空・・・は、なかった。

 古ぼけた、木の天井がそこにあった。

「ここ、は・・・?」

 サミーは、呟いた。

 目の前は、少し古い宿屋の個室・・・。

「あ、目が覚めたんですね!?今、温かいミルクをお持ちします!!」

 ひょいっと顔を覗かせた少女が、そう言って階段を降りて行った。

 瞳の紅い、少し大人びた少女だった。

 ハゲ鷹に食べられたのではない、ということを安心していると、再びその少女が目の前に現れた。 少女は、ニッコリと笑ってサミーにミルクを渡す。

「大丈夫ですか?あんなに暑いのに、水も持たずに旅をされるなんて・・・危ない所でしたよ?」

 少女は"シェラ"と名乗り、またニコリと笑った。

「驚かないんだ?アタシ一応、猫なんだけど・・・?」

 サミーが言うと、シェラは元気よく"はい"と答えた。 サミーは、はっとした様子で辺りを見回す。

「ほ、他の皆は!?」

「大丈夫です。皆さん、下で食事をされていますから」

 サミーは、ほっとして息を吐いた。 一安心してお腹が空いたのだろう。 サミーのお腹から"ぐぅぅ〜"という音が聞こえた。

 シェラにクスクスと笑われて、恥ずかしそうに頬を赤く染めたサミーは、温かいミルクを飲み干して階段を駆け降りて行った。

              

 そこで見たのは、皿の山々だった。 その山に、埋まるようにいるのが例の3人だ。

 サミーは、心配していた自分と目の前にいる3人の様子が面白くて、吹き出して笑ってしまった。 その笑い声に気が付いて、ミーナが手を止めた。

「サミー!起きたのね!!」

 頬に付いた食べカスが気になるが・・・。

 サミーは、ミーナに飛び付いた。

「ミーナぁ〜!心配したじゃ〜ん!!(泣)」

「あはは(汗)。ゴメンねサミー。あ、シェラにお礼言った?」

 ミーナに言われて、慌てて礼を言った。 が、シェラは首を横に振った。

「いえいえ、実際に助けたのはピィですから・・・」

 "ピィ?"と、ミーナとサミーが首を傾げる。 すると、その答えをリュウが言った。

 皿の山に顔を埋めながら、右手に持ったフォークでリズムを刻んで。

「"ピィ"はビッグバードだよ。絶滅種の・・・だよな?シェラちゃん(笑)」

「はい。憶えていてくれたんですね!リュウさん!!」

 リュウの発言に、シェラは頬をほんのりと染めて喜んで言った。

 そして、サミーは気が付いた。 リュウとシェラが身に付けるピアスがお揃いだということに・・・。

「ねぇ・・・?そのピア」

              

バダンッ!!!!

              

「テメェ!姉さんに近付くなぁ!!」

 その瞬間、飛んで来たのはシェラと同じ瞳の少年。 そして、真っ青な炎を足に纏っての蹴り・・・。

「「「へ?」」」

 ミーナ、サミー、シェラの3人は、目を点にする。

 少年の顔は、シェラに似ている。 が、とても幼い顔。

 桃色の髪をしたシェラとは違って、水色の、しかも濃い色の髪をしている。

 シェラの"弟"といったところだろうか・・・?

 先程も"姉さん"って言ってたしね。

「げげっ!シュラ!!」

 と、リュウは席を立つ。

 そして、その飛び蹴りをギリギリで避ける。

「ちぃ・・・っ!!」

 リュウは素早い動きで後ろに逃げる。 そして、"シュラ"と呼ばれた少年はそのあとを追いかけた。

 テーブルに積まれた皿の山々が崩れ、落ちる音と割れる音が辺りに響く。

「え?あ、シェラ・・・?あの子、誰!?」

 冷や汗を流して、ミーナが聴く。

「あ、弟・・・です」

 同じく冷や汗を流して、シェラが答えた。

              

 ―さて、場所は変わりまして宿屋の外―

 そこには、睨み合ったままのリュウとシュラの姿があった。

「表に出て闘いやがれ!リュウ!!」

「馬鹿!もうここは表だ!!」

 と、言いながら2人は戦闘を始める。

 シュラはやはり子供だ。 自分が間違ったことを指摘されたのが恥ずかしかったのだろう。 リュウに向かって、

「五月蝿い!」を言い続ける。

 そんなシュラの左手の甲には、リュウと同じ『竜』の紋章があった。

 だが、その紋章は金色に輝いている。 明らかに、リュウの紋章とは違うものだった。

「また、帰ってきやがって!僕は認めて無いからな!!」

 で、ぐーパンチ!

 当たってしまえば、身体は大火傷。 またしても、真っ青な炎を身に纏っていたのだから。

「きたねぇぞ!俺が敵わねぇと知ってるくせに!!」

 またもや、ギリギリで避けるリュウ。 リュウの緑色の紋章より、シュラの金色の紋章の方が強いということだ。

「五月蝿ぇ!テメェの顔なんて見たくも無い!出てけ!!そして死ね!!!」

              

 2人がドンチャンやっている中、ミーナとサミーとヒョウはオロオロするシェラを横に、お茶を煤って眺めていた。

 一方的に攻めるシュラを眺めながら、ミーナはシェラに尋ねた。

「ねぇ?本当にあの子がシェラの弟?」

「はい。根は優しいんですけど、一端キレてしまうと手に負えなくなってしまうんですよ(笑)」

 フォローのつもりだろうか・・・? 全然、フォローになっていないが・・・(汗)。

 ミーナも同じように思ったらしく、目を点にして苦笑した。

 と、ここでミーナは気が付いた。 調度、ミーナの腕にある痣の位置と対象になっているシェラの『蝶』の紋章に・・・。

 綺麗な紫色の『蝶』の型をした紋章。

 ミーナは、自分の痣と見比べる。 その様子に、シェラも気が付いた。

「あ!ミーナさん、私と同じなんですね!」

 シェラが微笑んで言った。

「う、うん。まだ痣・・・だけどね」

 ミーナは愛想笑いで返した。

 その様子に気が付いたサミーが、シェラに質問する。

 それは、シュラの紋章のことだった。 紋章を持つ者の1人でもあるサミーだったが、あの金色の紋章を見たのは初めてだったからだ。

「あぁ、あれは両親が『竜』の紋章同士だったからですよ」

 シェラによると、同じ紋章を持っていたとしても、あの金色の紋章が身体に出るのは稀なことなのだという。

 シェラの紋章が違うのは、シェラの体質には『竜』の力があわないからでは・・・? と、シェラは考えているらしい。

「ふぅん・・・。そぉゆ〜ことか」

 ようやく、食べることを終えたのか・・・? ヒョウは口元に付いた食べカスを袖で拭いながら言った。

「この街には、紋章を持った奴が沢山いたって訳だ・・・。俺のいた街とは逆にな」

 つまりは、こういうことだ。

 シェラとシュラが住むこの街には、昔から紋章を持つ者がいた。

 だが、ヒョウの住んでいた街には紋章を持つ者がいなかった。

 人間とは、簡単な思考の持ち主だ。 それが、人間に害にならないモノだと分かると"慣れ"が生まれてくる・・・。

 分からなければ、ただ"嫌う"だけだ。 その者が、死んでしまったとしても知らん顔をしたりして・・・。

 ま、この場合は前者がシェラ達の街で、後者がヒョウの街ということになる。

「いい加減にしないと、街が壊れるぜ?」

 シケた話を振っておきながら、ヒョウは平然とした様子で未だに闘う2人を指刺して言った。

 が、闘う2人の後ろから土埃が舞い上がって近付いて来るではないか。

 あれは、馬が走る時にでる土埃だ。 それに気が付く2人は、闘いを止めた。

 "ちっ"と、シュラが舌打ちをする。

「またか・・・。なんで今日はこう邪魔者が多いんだ?」

 ミーナ達も、その方向を眺める。 よく見れば、そこにいるのは黒い軍服を身に纏った者達・・・ざっと、10〜20人!

 その集まりが軍だと分かった瞬間、ミーナとサミーとリュウの瞳が険しくなった。

 特に、リュウが。

 ミーナよりも、険しくなる。

 そして、呟く。

「来やがったな。連合の総指令!」

 ギリッ・・・と奥歯を噛み締め、土埃の方向を睨み付ける。

              

 暫くして、数10人の軍人が宿屋の前の地に立った。

 その真ん中から、白いマントに身を包んだ青年が姿を見せた。 その前髪は1つに束ねてあり、クルリンッと巻いてある。

 はっきり言って、変だ。

 碧い瞳の青年は、大声でシェラを"殿"付けで呼んだ。

              

ドゲシッ!!!

              

「ぐえっ」

 リュウが総指令と呼ぶ、碧い瞳の青年が宿屋に足を踏み入れた瞬間、シュラの飛び蹴りが炸裂した。

 情けない声と同時に、青年の白い帽子が地面に落ちた。

 その額には、白い2枚の羽が交差する模様、『鳥』の紋章があった。

「小僧!何をす」

              

バキッ!!!

              

 また、総指令が言い終わる前に殴られる。 今度はリュウだ。

「貴様!リュウ・サンドラゴだな!今日こそ牢にブチ込んでやる!!」

「やかましい!お前だけには言われたく無いぜ!ただ、俺が邪魔だからって指名手配犯なんかにしやがって!!」

 総指令ががなり、リュウががなる。

 暫く・・・いや、ずっと、それは続いた。

 もうそろそろ、シュラがキレそうになって・・・。

 いや、その前にサミーがキレた。

「スターアロー!!」

 キンキンと響く光線の矢の群れが、軍人達とリュウを巻き添えにして襲いかかった。

 その呪文のおかげで、殆どの軍人達がやられてしまった。

 リュウと総指令の2人は、なんとか生き残っている。

「うるさーーーい!!!」

 サミーは、その身体の小ささからは想像出来ないくらい大きな声で叫んだ。

 総指令は声が止むのを待ち、ここに来た目的を話し始めた。

「ワシは、シェラ殿に会いに来たのじゃ!今日こそ、ワシの求婚を受けてもらうためにの!!」

 一瞬、皆がシェラを見た。 そして、もう一度総指令を見る。

「「「・・・は?」」」

 ミーナ達がキョトンとする中、リュウとシュラは不機嫌そうに総指令を睨んでいた。

 と、ここで総指令が名乗り始めた。

「ワシの名は、パオ・パピーラ。勇者『パオ』の名を継ぐ者!軍の者はこう呼ぶ!《鋼の鷹》と!!」

 しゃがれた声で、しかも、爺臭く喋るパオ。 これで20(はたち)だというのが信じられない・・・。

 そして、パオは殴られた・・・(汗)。

 殴ったのは、リュウだ。

「ふざけんな!シェラちゃんは俺の婚約者(フィアンセ)だ!このピアスが証拠だぜ!!」

 リュウは耳のピアスをキラリと輝かせて皆に見せた。

 それらは、ミーナの祖母の墓と同じ石・・・ルリコンで出来たピアスだった。

 ルリコンと言っても、色々ある。

 シェラのピアスのように紅いルリコンをスゥルリコン。

 リュウのように翠のルリコンをソゥルリコンというのだ。

 この、ミーナ達の世界にも、様々な地域で様々なしきたりがある。 その内の1つが、現在リュウとシェラがしているピアスなのだ。 女がスゥルリコンを身に付け、男がソゥルリコンを身に付ける・・・・これが婚礼のしきたりだ。

 勿論、ミーナ達もそんなことは知っている。

 一瞬にして、ミーナ達の目が点になった。

「じゃ、じゃあ・・・リュウが指名手配された理由って・・・?」

 何かに気付いたサミーが、呆れた様子でパオに尋ねた。

 パオは、足を肩幅に開き手を腰に、それはそれは偉そうな格好をする。

「邪魔じゃったから!」

              

 その後、パオに嵐のように呪文の攻撃が降り注いでしまったことは・・・言うまでもない。

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