STORY22:それぞれの空へ
この小説はこれで最終回となります。 短いようで長い間、御覧になった皆様ありがとうございました。 少し短いものに仕上がってしまったことを、今、謝っておきます。スミマセン…
『魔王』との闘いが始まって、遂に、紅い満月が昇り伐った。
17人いたミーナの仲間達は、既に半分の人数・・・いや、それ以下の人数となっていた。
デスティニーは、真っ直ぐミーナ達に向かって歩いて来る。
ズシッズシッ、としっかりしたような足取り。 しかし、時折ふらつく姿も見られる。
ジェイド&ユーリのペアとの闘いのダメージが大きいようだ。
デスティニーはミーナ達の目の前に立ち、『死』の呪文を唱える。
『”サヨナラ”だ・・・・我が子達よ』
デスティニーがそう言って、呪文を放つ。
ミーナ達の身体は、塵のように散っていく。
徐々に消える身体をまじまじと見つめる。 その姿を見て、ミーナ達の表情は絶望―――――――いや、歓喜に満ち溢れていた。
デスティニーの思考に疑問符が浮かび、結論に至った。
その瞬間、デスティニーは青ざめた。
散り崩れていくミーナ達の身体は、前に見たことのあるものだった。
『!?』
デスティニーはその場から後退り、警戒するように低く唸った。
だが、今頃気が付いたところでもう遅い。
ミーナ達の塵は、デスティニーに絡み付いた。
「かかったNa!」
「あんたの負けじゃん!」
消える身体の後方からやって来たのは、闘っていたはずの17人。
傷1つ見当たらず、疲れも無いようだ。
更に、その後方からミーナもやって来る。
デスティニーは負けを悟ったのか、唸るのを止め、ドサッと音をたてて座り込んだ。
『この勝負、我々の負けだ・・・。我が血を受け継ぐ者達よ、早く我々を楽にしてくれ』
デスティニーは疲れきった笑みを見せ、肩を落とした。
その瞬間、デスティニーの姿が元に・・・人の姿に戻った。
デスティニー本人は気付いていない。
もう、閉じた瞼を開く力も残っていないのである。
「・・・『魔王』。貴方の計画は成功ですか?」
『その声は『覇王』か・・・?・・・あぁ、成功だとも。漸く、我が妻達の下へ逝けるのだからな』
ダークの声に反応して、デスティニーは優しい表情で言う。
あの時言っていた『計画』とは、デスティニーの『死』を意味していたのである。
「さぁ、皆、最強呪文を唱えて」
ミーナが言った。
まず最初に唱えたのは、ダークだった。
【汚れなき『魔』を受け継ぎし、我が名はダーク。『闇』の力を唱える者。我が手に宿りし炎よ、邪気なる者に滅びを与えん】
ムム
【我が血、我が肉、我が手足、内なる我が力に呼び掛けろ。『風』よ!轟け!】
ゴッド
【大神ゼアナ!我が血肉を捧げん。鋼をも貫く力を今、我に!】
ルーク
【草花よ、我が声を聞け。我が手足となり、愚かなる者へ審判を下せ!】
サミー
【月、雲、空に浮かぶ星々達。憐れな我を照らし、愚かなる者を討つ力を!】
ジン
【闇をも照らす我が力。不死の神鳥・フェニックス。我が身体に宿り、闇を討ち滅ぼさん】
ヒョウ・シューグ
【大地をも凍らすその力。我等に分け与えたまえ。『闇』を閉じ込め、いざ砕かん】
ヒューゴ・ミレイ・オージェット
【邪気を討ち消し聖なる流水。その如く、我等に力を流したもう】
リュウ・シュラ・ガイ
【偉大なる竜の神・ガイリュトー。我等にその魂を移せ】
シェラ
【花に群がる蝶、我が内なる力に群がりなさい。我が『闇』がその力を強くするでしょう】
ミーナ
【我が内に群がりし蝶。我が『闇』が力を注ぐ。汝の力も我に捧げよ!】
ミーナが最後に言うと、皆の姿が一瞬にして一変した。
それぞれが、それぞれの紋章の力を引き出し、その姿を借りてその場に立っているのだ。
簡単に言えば、ミーナは蝶の姿、リュウは竜の姿、ジンはフェニックスの姿になり、それぞれのオーラを放っている。
「火と水、太陽と月。モノには対なるモノがある。『闇』とて同じ・・・」
ダークは顔を伏せて言った。
ミーナが呪文を叫ぶ。
「我は汝、汝は我。『闇』と対なる者なり。我は請う!悪しき『闇』に、永遠の眠りを!」
『『『『ライトニング・シャイン・バースト』』』』
魔王の身体が、その呪文により、『光』に包まれた。
呪文の威力は、塔の半分を吹っ飛ばし曇った空に光を与えた。
雲1つ見当たらない青空。
ミーナ達の背後には、崩れた塔の跡。
ここで、ミーナはたった1人の父親を”永遠”という『光』の中に閉じ込めた。
もう、2度と、目を醒ますことは無いだろう。
初めは、些細なことから始まった旅だった。
自分の村から出なければ、こんな悲しい気持ちにはならなかっただろう。
こんな虚しい気持ちにはならなかっただろう。
こんなにも、大切に思える戦友には会えなかっただろう。
ミーナは忘れない。
彼等とて、忘れはしない。
さあ、別れが近付いて来たようだ。
「で?これから、どーすんDa?」
1人、荷物をまとめながら、ゴッドが言った。
それぞれが、それぞれの”これから”について語り始めた。
ミレイ、オージェット、ムムは自分の故郷へ帰るらしい。
ゴッドは、自分磨きの旅に。
ルークとシュラは、連合軍の為の道場を拓くようだ。
「俺達、結婚することにしたんだ」
「はい。私、リュウさんに付いて行きます!」
そう、幸せそうに2人は言った。
「あたしはこの2人と一緒に旅するよ」
サミーは、そう言ってシューグとヒューゴの肩に腕を回した。
「ワシは、この名のまま、軍に戻るとするかの」
ご自慢の前髪を、クルリンッと回してジンが言う。
「わたしは、村に帰る。ガイ、あんた行くとこ無いんでしょ?村おこし手伝ってくんない?」
「そりゃ助かる。お邪魔するぜ」
それぞれの道を見据えて、皆は塔を振り返る。
そこには深紅の瞳から涙を流すダークの姿があった。
「あんたは・・・どうするつもり?」
声色1つ変えず、ミーナは普段通りに尋ねた。
「ここにいる。離れる気は無い」
ダークは普段通り、冷静な言葉で返事をする。
ミーナは、少し微笑んで”そぅ”と呟いた。
皆は荷物をまとめ、それぞれの方角へ――――いや、それぞれの空へと足を踏み出した。
皆は口々に言う。
『またな』
―――と。
fin
いやぁ、終わったなぁ。 なんか後ろの方でミーナの罵声が聞こえるが・・・・ 無視しよう まぁ、色々なこともありましたが・・・長い間、暖かい目で見守って下さりありがとうございましたm(__)m ではでは、また、近い内に別のジャンルでお会いしましょう